ラーメン&つけ麺食べ歩き
大勝軒 中野店
(東京都 中野区)

店名 大勝軒 中野店(たいしょうけん なかのてん)
住所等 東京都中野区中野3-33-13 【地図表示】
禁煙 タバコ可否不明
訪問日 2005年11月中旬 つけそば 480円 
2006年3月上旬 らーめん 480円



〜中野大勝軒 その1〜




お店に到着しました。
JR中野駅の南口から徒歩3分ほど。
丸井本店を通り越した辺りです。






歴史を感じさせる店構え。
今や、一大ブームの「つけそば」発祥のお店ですぞ。






白いノレンが誇らしそうですな。
店頭の価格表はあくまで「オミヤゲ」用の価格。
店内価格はもっと安いので注意。






10時30分の開店なので空いているかと思ったら・・・
直後からほぼ満席とは・・・すごい人気ですね。






客席は逆L字型のカウンター形式。
注文と同時に手会計するシステム。






価格はかなり安めで、昔のままのお値段と言う感じ・・・。
「つけそば」を注文しました。






「つけそば」を看板メニューとして紹介。
なんと、「無化調」なんですね。










2005年11月中旬 つけそば 480円
(この写真はクリックで拡大します)



いやー、本当に素晴らしいですね。
まさに、つけ麺の「ルーツ」にして、究極の「リファレンス」。
まさしく「元祖」であり、「お手本」ですな。

今後、何十年の時を経ても・・・
一切、「揺るがない味」と言う印象です。

本当に良いものは、時代を超えて愛される。
昭和の文壇を支えた文豪達を思わせるような・・・「いぶし銀の煌き」。
きっと、このままの姿で・・・あと100年は現役でしょう。









柔らかな口当たりのつけ汁は、節系の「旨味」とともに
「エグ味」が絶妙に効いた・・・まさに「大人のビターテイスト」。
透明感のある出汁を酸味と辛味が見事にサポートする辺りに
いわゆる「丸長」の系譜を感じます。






太麺は「モソモソ・・・」「クタッ・・・」として無愛想な感じ、
ほんのりと微かに苦味を感じるような、グレーっぽい、ややしけったような風味は
昔ながらのグレードの小麦粉を使っている印象。
しかし、この食味こそが、いわゆる「古典文学」のような渋い魅力。






噛めばしっかりと芯が太く、グルテンがきちんと練り込まれたような・・・
意外と重いコシがしっかりとあり、控えめながらもモチモチ感がある。
しかし、玉子の風味が香ることはなく、甘味も一切なく・・・
これぞ「小麦粉」と言う真摯なテイストが貫かれている。






つけ汁に浸け、引き上げたところ。
この麺とこのつけ汁の相性は、長い長い歳月によって磨き抜かれた
独自のベスト・バランスを築いているイメージ。






「たっぷり」と注いでくれる熱々のナチュラルスープ。
完飲が前提の塩加減は「見事」の一言です・・・。
ぜひ他店も見習ってほしいですな。




2005年11月中旬 つけそば 480円 

ご存知、「つけ麺」発祥の聖地。
現在の東池袋大勝軒店主の山岸氏が、若い頃、こちらのお店で働いていた時に「まかない」としてつけ麺を考案し、人気メニューとなったと言うのは有名な話だ。
お店は、中野駅から徒歩3分ほどの好立地にあるものの、開店が午前10時30分と結構早めである。せっかくなら一番乗りしようと、開店直後の10時35分頃に訪問したところ、何と既に先客が多数居り、席の8割ほどが埋まっていたのには驚いてしまった。注文と同時に手会計を済ませるシステム。
待っている間、店内を見回していると、壁面に「自然食指向なので、化学調味料はいっさい使用していません。」と書かれているのに気付いた。大勝軒系列で無化調は珍しいのではないだろうか。
店内の雰囲気は、いかにも「老舗」と言う感じで、知己同士と言うのか・・・まったりと落ち着いた空気が流れ、この時間から訪れている客はほぼ全員が近所の常連さんと言う雰囲気だ。

いよいよ登場した「つけそば」、平皿に盛られた太麺と透明感のあるつけ汁が目を引く。
太い麺は、箸で持ち上げてみると「クタッ・・・」としてあまりハツラツとした感じではない。口に入れてもモソモソと無愛想な動き方である。小麦粉の風味も華やかで白い無垢な感じではなく、ほんのりと微かに苦味を感じるような・・・グレーっぽい、ややしけったような風味である。この辺は、昔ながらのグレードの小麦粉を使っている印象を受ける。
しかし、この「不変の味」こそが、良い意味で、本当に昔のままの匂いを感じさせ、いわゆる「古典」の良さ、味わい深さ、のような魅力になっていると思う。
すすった感じは、クタッとした感じだが、噛めば決してふやけたようなフニャフニャなのではなく、むしろしっかりと芯が太いような、グルテンがきちんと練り込まれたような・・・意外と重いコシがしっかりとあって、控えめながらもモチモチ感もある。
しかし、東池袋大勝軒のような「プリプリ」と生き生き弾む感じがなく、玉子の風味が香ることもない。また、甘味も一切なく、これぞ「小麦粉」と言う真摯なテイストが貫かれている。

次に、いよいよ「つけ汁」に麺を浸して食べてみる。
太麺で動きも鈍い感じなので、あまりスープをからめる方ではないように思え、この透明感のあるつけ汁では味が薄く感じないかと相性を心配したが・・・・確かにアッサリとした「薄着」の味わいではあるものの、数口食べたところで、その「真意」はさらに奥深い位置にある事に気付いた。
どうやら主人公はあくまで「麺」なのであり、「汁」は麺の味を隠してしまってはならない・・・と言うような哲学を感じるのだ。「寿司」でも醤油を付け過ぎてはネタの味を損ねてしまうように・・・・つけ汁は麺の味を引き立ててこそナンボ・・・と言うイメージである。

濁りや油や動物系の強いつけ汁に比較すれば、舌触りは確かにうっすらとはしているが、かといって物足りなさ等は全くなく、節系のナチュラルな「旨味」とともに「エグ味」が絶妙に生かされていて・・・チョコレートで言えば単純に甘いだけのミルクチョコではなく、ビタースウィートの妙味を味わえるブラックチョコのような・・・まさに「大人の味」と言う印象だ。さらに辛味が左フック、酸味が右フックのように・・・明瞭なパンチが効いている。
どうやら強い塩分や化学調味料の代わりに、このきれいな酸味とデリケートな辛味の二者がエッジを立てていて明瞭な味の輪郭を描く役を担っているようだ。この辺のサジ加減は、やたらな新店では一朝一夕では到底成し得ないと思う。長い長い歳月によって磨き抜かれた独自のベスト・バランスを築いているイメージを受ける。

チャーシューは、短冊状なのだが、おそらくは手裂きしたようなササクレ立ったもので、つけ汁をたっぷり吸っている感じ。
老舗店だとミシミシと硬いモモ肉が出ることが多いが、こちらのお店はふっくら感があり、モグモグと良く噛んで食べると豚肉の旨味がたっぷりと内包されていて、かなり美味しい。だいぶ上等な豚肉を使っているようだ。
メンマはザキザキと食感がやや硬め、粗めと言う感じで、昔ながらのレトロな味わい。

麺を食べ終わって、スープ割をお願いすると、大きな「柄杓」(ひしゃく)でスープをた〜っぷりと注いでくれる。
一瞬、飲みきれるかな・・・と、たじろぐほどだ。飲み干したら塩分でノドが渇かないかとか、胸焼けしないか・・・・などと、やや戸惑いながら、飲み始めるとゴクゴクと止まらず・・・気が付けばすっかり完飲してしまっていた。
しかもこれだけ大量のスープを飲み干しても、その後の体調変化などは微塵も現れず・・・・この後口の良さは「さすが」と思わされる。

醤油や塩分が舌に残る感じが全くないのは素晴らしいが、飲み終えて数分立つと、どこにこれほどの辛味があったのかと思わされるほど、唇回りが結構ヒリヒリしている事に気付いた。
そして、この時点で、麺も、つけ汁も、スープも、その味の組み立てが・・・いわゆる「丸長」系列の味を彷彿とさせるものである事に気付いた。
もともとこちらの大勝軒は丸長の系譜であるので不思議ではないのだが、「つけ麺」自体はこちらのお店から始まった訳なので、丸長系に似ていると言うのも妙な気はするが・・・。

スープで割った後は、つけ汁の節系のエグミが消え、一層「旨味」と「酸味」が際立つスープへと変貌した。
この実にきれいな酸味の奥に、うっすらと煮干やサバ節、カツオ節類が心地よく香っている。動物系はとても丁寧に煮出されているようで、スープの舌触りが柔らかくクリアである。
そして軽くなり過ぎないように表層に油が一枚敷かれている印象だ。そのツルッと滑る油感が中華スープっぽさを演出している。

食べ終わっての印象としては・・・・まさに目からウロコが数枚は落ちた・・・・と言う印象だ。
この味、決して「レトロ」と言うのではなく、言うなれば渋い煌き(きらめき)を帯びた「大人の味」・・・・と言う印象だ。

例えるならば、流行やウケ狙いで描かれる安易な漫画本や、軽薄な週刊誌の記事の世界なのではなく・・・・昭和の文壇を支えた川端康成、谷崎潤一郎、永井荷風らの文学作品を想わせるかの如き、「長い歳月を経て、なお愛され続ける」、志しの高い純文学のような・・・・いぶし銀の魅力を感じてしまう。


(麺は完食。スープ割も完飲。)




↓続きあり






〜中野大勝軒 その2〜




今回は「らーめん」を目当てに、再び訪問してみました。
ビルはちょっとした傾斜地に建っています。






こちらのお店で日本で初めて「つけそば」が生誕して「50周年」だそうです。
その50周年記念メニューが登場していました。
さらなる麺益力・・・特製「かけ」そば。










2006年3月上旬 らーめん 480円
(この写真はクリックで拡大します)



うーむ・・・なるほど。
これぞ、まさに「真味只是淡」・・・の味でしょう。

ただただ、どこまでも本当に「出汁」の旨味が主役なんですね。
食べ進むうち、無化調なのはもちろん、塩分感もほとんど感じられない事に・・・
次第に驚きを隠せなくなって来ます。

その味の真髄は・・・まるで、F分の1の「心地良い揺らぎ」を
持つかのような・・・非常に「心安らぐ」テイスト。

そして、「甘」「辛」「酸」のいずれもが全く感じられず、
何とも徹底して「中庸」な味わいです。









優しい動物系のゆったりとした旨味とふっくらと角が丸い油の味が、
いかにも大勝軒の系譜を感じさせるスープ。
きれいな節系の風味が「舌」を遠くから取り巻くようにうっすらと姿を現し、
キラキラとまたたくように水平方向に広がり、そしてゆっくりと消えてゆく・・・・。
うーん・・・・まるで美しい「味の波紋」ですね。






見た目よりも、「ぶっとく」感じる麺。
小麦粉がぎっしりと「詰まっている」感じで、いかにも高圧延をかけられた麺の造り。
愛嬌のある「動き」ではなく、どこまでも「のっそり・・・」としてストロングな「野太い」食感です。
「すいとん」をもっと滑らかで高密度に練ったような感じにも近い。






噛み締めたときに「ズーン・・・・」と音がコダマするような、
何とも言えない「重み」のあるズッシリとした歯応え。
スープとのバランスと言う点では・・・若干「慣れ」が必要かも・・・。




2006年3月上旬 らーめん 480円

前回訪問して以来、こちらのお店の「ラーメン」が気になっていて仕方なかった。
ちなみに、あるテレビ番組でこちらのお店が登場した際に「うちのお店では、常連さんの9割がつけそばをオーダーします。ラーメンを頼む方は初めてのお客さんが多いですね・・・」と言うような旨の事を店主さんは述べていた。
しかし、あの「麺」で、あの「スープ」で、「ラーメン」を作ったらどういうラーメンが出来るのだろうと、考え始めると妄想ばかりが次々に湧き上がって来てしまって、確認しないと気が済まなくなっていたのだ。
訪問してみると、「つけそば」生誕50周年記念メニューなるものが登場していた。「つけそば」とも「らーめん」とも異なる、特製「かけそば」として紹介されている。詳細は判らないが、写真を見る限りでは讃岐うどんで言う「ぶっかけ」のようなメニューと思える。

登場した「らーめん」・・・・器の中を「茶色」が支配するシックなビジュアルである。
まずはスープを飲んでみると・・・・ふっくらと角が丸い油の味が、いかにも大勝軒の系譜を感じさせる。優しい動物系のゆったりとした旨味をベースとして、適度な節系の風味が「舌」を遠くから取り巻くように、うっすらと姿を現し、キラキラとまたたくように水平方向に広がり、そしてきれいに消えてゆく・・・・。うーん・・・・まるで美しい「味の波紋」だ。
この味・・・・何とも、深い森の奥で鳥の声や川のせせらぎの音を聞きながら散策しているかのような・・・・非常に「心安らぐ」気分にさせてくれる味わいである。
川のせせらぎのような1/F(F分の1)の「揺らぎ」を持つ音は人の心に安らぎを与えると言われているが、味の世界でその「心地よい揺らぎ」を実現しているかのような・・・・本当に「心が落ち着く味」だと思う。

麺は「つけそば」と同じストレートの太麺を使っているようだ。
一つかみ、すすってみると・・・・最初に口に当たった瞬間は、「モニャ、モニャ・・・・」と、やや表面付近が溶けたような、多少、曖昧な感じがある。
おそらく「つけそば」とは異なり、冷水締めがないまま熱いスープに浸っているため、麺の表面が溶けかかっているのだろう。
それでも、非常に「滑らか」な口当たりで、真っ直ぐな太麺ゆえ、あまりスープをからめないうえ、小麦粉の密度が高いのでスープを吸うことも少ない。
そのため、一口目は舌が麺の「上っ面を滑ってしまう・・・」ような印象を受けた・・・・。まるで、感じるべきはずの味を、こちらの不注意で「後逸」してしまったようなイメージだ。
このスープとこの麺の相性と言う点では、ちょっと「慣れ」が必要な気もするが、お店のきちんとしたポリシーの元、敢えてこのバランスを選択しているのだろう。

また、麺が舌に乗ると「ズッシリ」・・・・とする意外なまでの重みがあり、噛んでみると、「太くて」、「硬くて」、「重くて」・・・・「ズーン・・・」とお寺の重い釣り鐘が地響きを伴って鳴り響くような・・・・なかなかのヘヴィなテイスト&歯応えである。小麦粉がぎっしりと「詰まっている」感じで、いかにも高圧延をかけられた麺の造りだ。
プリプリとか、モチモチとか、サクサクとか、チュルチュルとか・・・などの愛嬌のある「動き」はない。どこまでも「のっそり・・・」としてストロングな「野太い」武骨ささえ感じられる食感であり、「モニモニ・・・」とする動きの遅さがある。「すいとん」をもっと滑らかで均質、かつ、高密度に硬く練ったような食感でもある。

チャーシューは「つけそば」のようにほぐした物ではなく、一枚もの。ミシミシといかにもモモ肉らしい噛み応えだが、一旦ほぐれると繊維が柔らかくて美味しい。醤油でやや強めに味付けがしてある。メンマは繊維同士の結合がしっかりしている感じで、ザクザクした歯触りが心地良く、噛み砕いてゆくと味がグングンと立ち上がって来て、素朴ながらもこれまた美味しい。

食べ進んでいると、無化調なのはもちろん、塩分感もほとんど感じられない事実に気付き・・・・次第に驚きを隠せなくなって来た。
この味を「究極のナチュラルテイスト」と賞賛する人もいるだろうし、ビリビリ来る強い味が好きな人にとっては「のっぺり」している単調な味と感じられるかも知れない。心地よい穏やかな味わいであるが、できればもう少し味に「キレ」や「リズム」が欲しい気はする。
そこで、後半になって卓上の黒コショウを少し入れてみたところ、「目鼻立ち」がクッキリする感じで、一口一口にキレやパンチが出た。しかし、一方で、別の大切な「何か」が失われてしまったかのような・・・そんな気もしてしまう。

こちらの「らーめん」のスープ・・・・化学調味料による明瞭なエッジや、塩分による強いパンチもなく・・・・ただただ、どこまでも本当に「出汁」の旨味が主役になっている。
そこへ、本当に「補助」的に、大人しめの控えめな醤油ダレが味を添えているイメージ・・・・。そして、「甘」「辛」「酸」のいずれもが全く感じられず、何とも徹底して「中庸」な味わいである。
以前食べた「つけそば」のつけ汁は、透明感のある出汁を、もっと「酸味」や「辛味」で見事に盛り上げる味の明瞭さがあった。
つけそばの方が「酸味」や「辛味」と言う味の輪郭のガイド役がいる分、確かに箸が進みやすいと思う。おそらくは、その辺りの違いが、両者の「人気の分かれ目」になっているような気がする。

食べ終わって5分もすると、胃の中は「小麦粉」の風味がギッシリと堆積している感じで、大量の「小麦粉」を堪能したと言う独特な満腹感に満たされる。
そして驚いた事に黒コショウの刺激がいつまでも強く舌に残ってなかなか消えようとしない・・・。ほんの半振り程度、極少量しか入れていないのに・・・・である。やはり整った「淡味」の中、舌の感度がMAXまで上がっていた中で、少量とはいえ黒コショウの刺激は「異端」であり、「野暮」だったのであろう。

「真味只是淡」・・・・・と言う言葉がある。
「明」の時代の中国、儒教、道教、仏教に深く通じていた学者「洪自誠」が記した「菜根譚」(さいこんたん)と言う有名な書物の中に登場する言葉だ。
その意味するところは、「濃厚な味、脂っこいもの、辛い、甘い・・・は真の味ではない。むしろあっさりした淡い味付けで、美味しいと感じさせる料理こそが本当の美味。」と言うような意味である。

こちらのお店は1951年の開業であるので、この味で既に55年間、連綿とお店を営まれていることになる。この日も午後3時近くの訪問であったにもかかわらず、お店は終始7割程の客入りをキープしていた。
実際、テレビや雑誌のラーメンランキングに取り上げられて一時的に行列化しても、わずか2〜3年で閉めてしまうラーメン店も少なくない中で、実に大した偉業だと思う。
この日も、一切の迷いなく、スープまで見事に完飲させられてしまった。まさに・・・・「真味只是淡」である。


(麺は完食。スープも完飲。)










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