ラーメン&つけ麺食べ歩き
支那そばや 鶴ヶ峰店
(神奈川県 横浜市)

店名 支那そばや 鶴ヶ峰店(しなそばや つるがみねてん)
住所等 神奈川県横浜市旭区鶴ヶ峰本町1-29-8 【地図表示】
禁煙 タバコ完全禁煙
訪問日 2006年8月上旬 ラーメン 700円 
           塩ラーメン 700円 



〜支那そばや鶴ケ峰店 その1〜



お店は「八王子街道」(旧国道16号)沿いです。
白い「らーめん」の看板が目印。






店頭が駐車場になっています。
相鉄線の鶴ヶ峰駅から徒歩12分ほど。






茶色のノレンがかかります。
入口すぐ左に券売機があります。






営業時間と休日の案内。






店内はJ型カウンターとテーブル席が二卓。
心地良い清潔感にあふれています。






メニューは「正油」と「塩」の二本立て。
「ワンタンめん」があるのも「支那そばや」の特徴。






頭上にもメニュー札。
こちらの文字は「正油」ではなく、「醤油」になっています。










2006年8月上旬 ラーメン 700円
(この写真はクリックで拡大します)



数多くの素材達から「少しずつ・・・」「少しずつ・・・」
様々な旨味を分けてもらって完成したスープ。

舌先をゆっくりと「たゆたう」かの如く、
実に奥ゆかしく・・・・柔和な口当たりの自家製麺。

「巨匠」の往年の美味を正確無比に受け継ぐ、
今では非常に貴重なる一杯でしょう。

何とも・・・幽玄で、物静かで、
余情の残るしみじみとした味わいです。









すべての素材は・・・・あまりにも完璧に「調和&融和」していて、
何かが目だって鼻や舌に触ると言うことが一切ない事に・・・・畏れ入る。

醤油ダレは極めて控えめ、旨味もコクも「スラリ」として、どこにも「おうとつ」のない、
まろやか&柔らかな、極めて「アッサリ」とした味わいのスープ。






スープの「柔らかさ&円さ」同様に・・・・麺も限りなく輪郭が「柔らかく&円い」イメージ。
すすれば、どこまでもビロードのように舌に優しく、ユルユルとする柔和な歯応えで、
「方円」に従うかのように、しなやかに舌や歯に触れて来る・・・・。
相当に麺帯の「圧延」が緩められている印象ですな。






うーむ・・・・「ホワワワ・・・・」と言う、実に「ふくよかな」すすり心地が、何とも絶妙。
かなりの長さを持った「柳腰」のストレート麺が「ユルン、ユルーン・・・・」と、
唇や歯をゆっくりと撫で回し、「穏やか&優しく」舌に絡んで来る。




2006年8月上旬 ラーメン 700円 

ご存知、「支那そばや」の鶴ヶ峰店を訪問。1998年に佐野氏からノレン分けを受けたらしいので、系列店の中でも「老舗格」と言うことになる。
お店は「八王子街道」(旧国道16号)沿いで、とても判りやすい場所にある。相鉄線の鶴ガ峰駅から徒歩12分ほどの場所だが、店頭には数台分の駐車場も完備されている。

入店すると左側にすぐ券売機があり、店内は厨房を囲む形でJの字型にカウンター席が広がり、窓際にテーブル席がある。
席に座ってすぐに気付くのは、店内の「完璧」な清潔感である。隅々まで清掃し尽くされ、テーブル上の調味料や箸入れも整然と並んでいる。

まずは登場した醤油ラーメン・・・・大き目の器に並々と注がれたスープが美しく「キラキラ」と光輝き、まるで芸術品のような・・・・「息を飲むほど」に素晴らしい気品に満ちた華やかさを持つフォルムだ。
中央に盛られた九条ネギの精緻な切り方など、ほれぼれしてしまうほどの見事さ。スープも、麺も、具も・・・・すべてがタップリと盛られていて、ケチケチした感じが全くないのも嬉しい。

スープを一口飲んでみると・・・・見た目の醤油色も薄いが、実際、あまり素ダレの量感が感じられず、醤油の醸造風味やコクがかなり控えめである。そのため、醤油ラーメンであることをあまり意識させない感じで、その分、スープに浮く油の存在が大きく感じられる。
最初の一口はミリンの甘味が感じられたが、なかなかの薄味で、口当たりが極めて奥ゆかしい、どうやら「タレ」の味で食べさせるのではなく、「ダシ」の力で食べさせるタイプのスープになっているようだ。

その「ダシ」だが、素材は「すべて」が、限りなく調和していて、何かが目だって鼻や舌に触ると言うことが一切ない。
旨味もコクも、「スラリ」とした、「おうとつ」のない、極めて「アッサリ」とした味だ。鶏の旨味さえもが他の素材と調和&融和して完璧に一体化している。
よく、スープの例えとして「何か一つが突出せず、すべての素材が見事に調和している」と言う表現が使われるが、こちらのスープほど、その表現が見事に当てはまるスープも少ないと思う。
ただ、僅かに日向っぽい微細な風味が見え隠れするが・・・・この漢方のような風味は、どうやら極少量だが八角の風味が効かされているようだ。

麺は看板に出ている通りの自家製麺で、入口右脇の勝手口から「支那そばや御用達」と書かれた小麦粉の袋が積まれていたのが見えた。
すすってみると、「ホワワワ・・・・」と言う・・・・何とも「ふくよかな」すすり心地。麺が全体的に柔らかく・・・・・いや、柔らかいと言うよりも「穏やか」「優しい」感じで、かなりの長さを持った「柳腰」のストレート麺が「ユルン、ユルゥ〜・・・・」と、唇や歯をゆっくりと撫で回し、舌に絡んで来る。

いやはや・・・・スープの「柔らかさ&円さ」にも驚いたが、麺も同様に限りなく輪郭が「柔らかく&円い」感じ・・・・である。
すすると、まるで舌先を「たゆたう」かの如き、奥ゆかしいゆっくりとした動き、噛んでも、ワサワサと押し返して来るような弾力がなく、ユルユルとする柔和な歯応えで、どこまでもビロードのように舌に優しく、「方円」に従うかのように、しなやかに舌や歯に触れて来る・・・・。

硬い麺が好きな人にとっては、この食感を「クッタリ・・・・」とし過ぎていて、もう少し「シャキッ」と背筋が伸びた感じが欲しい・・・・と言うかも知れない気はする。
あくまで私的な好みとしても、もう少し麺の輪郭が「シャキッ」としていて、噛んで「カツカツカツ・・・・」とする感じの歯応えがあると最高なのだが、スープとのバランスで考えれば、この麺の食感こそが、ズバリお店の狙い通りなのだろう。

実際、完璧にベストな状態に茹で上げている感じで、決して「茹で過ぎ」と言う印象は受けない。この柔らかさは、茹で加減の問題なのではなく、製麺時における圧延が控えめな事による小麦密度によるものだと思う。おそらく相当に麺帯の「圧延」が緩められている印象であり、つまり、お店のポリシー通りの仕上がりなのだろうと思われる。

巻きバラチャーシューはウェットでジューシー、かなりの厚みがありながら口に入ると柔らかくトロける感じで、肉の旨味も十分、ドッサリとした存在感がある。
この量感のあるチャーシューが、動物性の旨味を強く意識させ、全体のバランスを「ラーメン」らしい方向へ大きく引き寄せ、このあっさりとした一杯に、ラーメンならではのほど良い「肉感」を演出する極めて重要な役割を担っている。

メンマは、繊維感がギュギュッと密で、太さがあり、長さもあるため、かなりの食べ応え「ありあり」で、「モギュモギュ、モギュモギュ」と10回以上よく噛まないと飲み込めず、食べやすさの観点からはもう少し短めに切っても良いような気がする。
九条ネギは良い品で鮮度も抜群だ。九条独特の強い香りと適度な苦味が、このスープには良くマッチし、目鼻立ちを美しく整えている。

食べていると、ラーメンから、とても優しく「労わられる」(いたわられる)かのような気持ちになって来る。味の届き方に荒っぽさが一つもなく、ともかく「優しさ」と「まろやかさ」が支配する独自の味覚ワールドなのだ。
決して、「ガツン」と来るインパクト路線や、「グイグイ」と引き込む強引路線ではない、むしろ「対極」である。素材からの旨味を少しずつ、少しずつ・・・・引き出し、優しく、優しく・・・・味を「紡いだ」ような味わい。
多めの「化学調味料」や「濃縮エキス」などでゴテゴテとしてしまった「色モノ」系スープとは正反対の、旨味が「スッキリ」として、「まろやか」な、「柔らかい」味わいに満ちている。

食べ終わってみれば・・・・全体的にスープの量も、麺の量も、チャーシューのボリュームも多いのに・・・・・「ドスンッ」と腹に溜まる感じが少なく、どこかしら「軽量級」の腹心地にすら感じられるほどだ。
スープは醤油の存在感が希薄で、口当たりがともかく「優しく」「上品」、後口は限りなく「あっさり」である。麺は素晴らしく消化が良さそうなタイプで、胃腸への負担がなく、まるで新雪が降り積もるかのように胃にゆっくりと堆積するイメージ。「胃もたれ」と言う言葉などとは金輪際「無縁」なラーメンだろう。

こちらのラーメンを食べていて・・・・・改めて、なぜ、「支那そばや」と言う名前にしたのか、判ったような気がした。
おそらくは、当初、「ラーメン」と言うよりも、「支那そば」を目指していたのだろう。
どこかしら、年配客向けの「懐かしの支那そば」にこだわっているような配慮が見え隠れする気がする。



(麺は完食。スープは7割飲んだ。)




↓続きあり






〜支那そばや鶴が峰店 その2〜










同上日 塩ラーメン 700円
(この写真はクリックで拡大します)



単に繊細と言うよりも・・・何とも「枯淡な旨味」にあふれる一杯。

「俗気や欲気がなく、あっさりとしている中に深い趣きのある味・・・」

「煩悩(ぼんのう)の束縛から解き放たれた味・・・」

「ゴテゴテとした世俗を超越している味・・・」


画聖と謳われた「雪舟」の水墨画・・・
その山水図の世界を連想させる
「淡いトーン」ですべてを表現した・・・・芸術的一杯。









原色のような強い色がどこにも使われておらず・・・極めてデリケートな味の階調。
醤油同様に、「タレ」ではなく、「ダシ」の力で食べさせるタイプのスープ。

低めの山々が遠くでゆったりと連なる丘陵風景のような・・・・
どこまでも柔らかな稜線を描く穏やかな味わい。






醤油同様に限りなく輪郭が「柔らかく&円い」ふくよか路線の麺。
硬麺好きな人は、そのあまりの「柳腰」ぶりに、ちょっと面食らってしまうかも・・・。
茹で加減自体は、麺本来のポテンシャルを100%引き出した完璧なもの。






優しい口当たりの細麺は、まるで新雪が降り積もるかのように・・・・
柔らかく、ゆっくりと、音もなく・・・・胃に堆積してゆくイメージ。
年長者にも喜ばれそうな・・・胃腸への負担がなく、素晴らしく消化が良さそうなタイプ。




同上日 塩ラーメン 700円 

続いて塩ラーメンを頂いた。器が目の前に置かれると、鼻を近づけるまでもなく、周囲には芳醇でふくよかな素材群の良い香りが匂い立っている。
スープを一口飲んでみると・・・・・キラキラとした油が散らされ、やはり奥ゆかしい口当たり。
これまた、先の「醤油スープ」同様に、なかなかに薄味で、口当たりが極めて奥ゆかしく、やはり「タレ」で食べさせるのではなく、「ダシ」の力で食べさせるタイプのスープになっている。

芳醇な匂いに比較すれば、味がやや大人しめに感じられるが・・・・「支那そばや」は、前日に何分の一かのスープを残して、翌日のスープへ混ぜる「呼び戻し」と言う方式でスープを作っているらしいのだが、こちらのお店はスープの色が「淡く」「白っぽく」、あまり長時間火に掛かっていた感じが少ない。いかにも「塩」らしいきれいな色をしている。
つまり、おそらく前日スープからのブレンドが少なめなのだろう。そのためスープの色が焦げた感じにならず、その分、深みのある味にはならないが、アッサリとした実に「舌触りの柔らかな」スープに仕上がっている。

醤油スープ同様に、素材は「すべて」があまりにもパーフェクトに調和していて・・・・何かが目立つとか舌に触ると言うことが一切ない。
しかも、決して単純な一本調子の風味ではなく、いかにも多種類の素材のうっすらとした旨味が並列的に「ジワジワ・・・・」と並んでやって来る複雑玄妙な味わいなのだ。
とてもマイルドで柔らかいダシに感じられ、原色のような強い色がどこにも使われておらず・・・・全体を淡いトーンで見事に統一している。
この極めてデリケートな味の階調は、例えるとしたら、まるで画聖と謳われた・・・・「雪舟」の水墨画の世界である。
まさしく、雪舟の描いた「山水図」の世界を連想させる「淡いトーン」ですべてを表現しようとしているかの如き・・・・芸術的なスープである。

食べていて後半、次第にスープの温度が下って来ると、甲殻類や魚介系の風味がほんのりと感じられて来る。
しかし、その出方は、全くイヤミがなく、これみよがしの「押し付けがましさ」や「あざとさ」は微塵も感じられない。ほんのりと言うか、うっすらと言うか・・・・まるで雲の合間から「薄日」が差すような絶妙な効かせ方である。

味の構成に決して急峻な箇所がなく、言うなれば、低めの山々がゆったりと連なった丘陵風景のような・・・・どこまでも、遠く広がる「柔らかな稜線」を描く穏やかな味わいだ。
地平線が見えるほどの広大な大草原に立って、「サワサワサワ・・・・サワサワサワ・・・・」と、無数の短い草が風にそよぐ音を聴いているかのような気分になって来る。
ただ、旨味の伝わり方が極めてゆっくりなので、性急な強いパンチのある味が好きな人にとっては、旨味が思うように舌に乗ってこないと言うか・・・・・食べていて、ある種の「もどかしさ」や「もの足りなさ」を感じるかも知れないとは思う。

一方の麺は、これもまた醤油ラーメン同様の、「ユルン、ユルゥーリ・・・・」と唇や歯をゆっくりと撫で回し、舌に絡んで来る「穏やか」で「優しい」感じの口当たりの麺だ。
食べ手側が、妙に「力んだり」「身構えて」、肩に力が入った状態で食べてしまうと、そのあまりの「柳腰」ぶりに、やや面食らってしまうかも知れない。
支那そばやの「塩」としては、麺がやや太く感じられる気がして、先の醤油の麺とさほど差がないように感じられたが、私的には、塩はもう少し極細に近い方がこのスープとは合う気がする。
また、もう少し圧延が強くても良いような気がするのは・・・・おそらく私の人生修行が足りないせいだろう。

チャーシューやメンマは醤油ラーメンと同じものが入り、微塵切りのネギはシャキシャキ新鮮だ。
ただ、青菜は小松菜ではなく、なぜかホウレン草が入っていた。ホウレン草は柔らかく煮こぼされていて、それ単体では美味しいのだが、かなり量が多いこともあり、ほうれん草の独特の土臭さが、デリケートな塩スープとはあまり風味が合っていない気がした。ほうれん草の強い香りが、塩スープを邪魔してしまうと言うか、「ホウレン草」が多めに入ると、どこかしら味噌汁のようなイメージにも感じられてしまうのだ。

食べ終わってみれば、先の「醤油ラーメン」同様に、なんとも食べ手に緊張感を強いない「ゆったり」とした美味しさを持つ、極めて精緻な造り込みのラーメンである。そして本当に毎日でも食べられるほどに、胃腸への負担も少ない。
実際、店内には年配客の姿が目立ったが、確かにこのラーメンなら、50代以上の客層にも大いにウケそうだ。若者でも、上質な「あっさり」系ラーメンが好きな人には救世主だと思う。
ただ、これだけ「あっさり」としたスープだと、後味が爽快だろうと思ったのだが、二杯食べたせいもあるかとは思うが、お店を出てからも味が一斉に姿を消すと言うことはなく、舌の上には多少の味が残って感じられた。

食べ終わっての感想としては・・・・・・
今まで、「佐野氏」の元で修行した人のラーメンを、「支那そばや」の名前ではないお店も含めれば、10店舗ほどは食べて来たが、こちらのお店が最も、今はなき「支那そばや鵠沼本店」の味を一番忠実に踏襲し、高いレベルで守り通している印象を受けた。
ただ、2000年に佐野氏ご本人がラーメン博物館へ本拠地を移してから、ラ博の「支那そばや」でも10回ほど食べているが、この6年で佐野氏のラーメンは随分と変化している。

実際、既に今回食べた二種類のラーメンは、新横浜ラーメン博物館の「支那そばや」では出していないので、今や佐野氏自身はこの二種のラーメンを作っていないことになる。
「一条流がんこ」などもそうだが、研究熱心な師匠が次々に新作メニューを開発して商品をモデルチェンジしてしまうと、かってそのお店の名が知られるきっかけとなった元祖的「定番メニュー」は、以前にノレン分けを受けたお店のみでしか食べられなくなるという・・・・逆転現象が発生することがある。

そう言う意味では、かって鵠沼本店で広く人気を博したこの「醤油ラーメン」と「塩ラーメン」、その巨匠の「元祖の味」を、おそらくは最も正確に受け継ぐこちらのラーメン・・・・昔からの「支那そばや」ファンにとっては、まさしく「垂涎」の的であり、非常に貴重な存在と言えるだろう。


(麺は完食。スープは8割飲んだ。)










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