ラーメン&つけ麺食べ歩き
支那そばや ラーメン博物館 店
(神奈川県 横浜市)

店名 支那そばや 新横浜ラーメン博物館店(しなそばや)
住所等 神奈川県横浜市港北区新横浜2-14-21 ラーメン博物館内 【地図表示】
禁煙 タバコ完全禁煙
訪問日 2005年5月上旬 醤油らぁ麺850円 + エキスマロー300円
2006年8月上旬 金華豚特上チャーシューメン1500円 + 名古屋コーチン味付たまご150円 
           夏麺 900円 



〜支那そばや ラー博店 その1〜



TBSガチンコラーメン道で一世風靡した「支那そばや」。
2004年秋に藤沢本店が閉店した今、
こちらのラーメン博物館店が実質的な「本店」でしょう。






列に並んでいるとメニューが回覧されて来ます。
醤油ラーメンが基本のメニューで、
塩ラーメンは100食だけの限定メニュー。






ほう・・・普通のチャーシューメン以外に、
日替わりで「桃園」「幻豚」「金華豚」という3種類の
限定チャーシューメンがあるようですな。






券売機です。
「醤油ラーメン」と烏骨鶏の骨髄エキス「マロー」を購入。






窓から店内がちょっとだけ見えます。






店内は入って左にカウンター席、右側にテーブル席。
奥の一帯が厨房です。






無化調宣言。
店主の佐野氏は「食材の鬼」の異名も。










2005年5月上旬 醤油らぁ麺850円
(この写真はクリックで拡大します)



2004年9月から看板メニューを務めている醤油ラーメンです。
うむむ・・・従前の「支那そばや」の醤油ラーメンとは
スープも麺も微妙に変化していますな。

従来の味を鮮烈な香気と若々しい躍動感にあふれた「青年の味」とすれば・・・
こちらは、いぶし銀のような渋い煌き(きらめき)を帯びた「大人の味」・・・かな。

華やかで浮ついた美味しさなのではなく、
「侘び寂び」(わびさび)の世界に通じるような・・・
虚飾や驕り(おごり)を捨てた何とも「枯淡」な味わい。

佐野氏が切り拓く新しい味の世界を感じます。









上質ながらも微細な苦味があり・・・まるでビターチョコのような、
どこかしらちょっと翳り(かげり)のある味。
むしろその翳りの中にこそ、今まで誰も知らなかった
新しい「美味」の世界が潜んでいるイメージ。

谷崎潤一郎の「陰翳礼賛」(いんえいらいさん)を
思い出しました。







エキスマロー300円
(この写真はクリックで拡大します)



黄金色に輝く、烏骨鶏の骨髄エキス「マロー」です。
スープに入れる前に、少しそのまま舐めてみると・・・
上品でクセのない脂肪の味と微細な苦味・・・。

「アーモンド」「マカダミア」などの高級ナッツ類の味を想起しますね。
そして、非常にデリケートな骨髄感が最後の方にサラリと顔を出す感じ・・・。






マローを溶かし入れるとこんな感じに・・・。
中央の大きな油の層がマローの溶けた跡です。
微細なレベルですが、鶏の甘味、複雑な旨味や風味が増加する感じに・・・。






「支那そばや御用達粉」をベースに、うどん用の新品種小麦粉「きぬの波」、
そして国産小麦「春よ恋」を石臼挽きしてブレンドしたと言う細麺。
日本そば風に「香り」と「旨み」を楽しめる麺を目指しているそうです。






ポツポツと粒子が見えますね。
従来の究極的な滑らかさオンリーの舌触りではなく、
微妙にザラッとした舌触りが加わって、どことなくノスタルジーテイスト。
コシはふくよかですが、かなーり柔らかめでデリケートな食味。




2005年5月上旬 醤油らぁ麺850円 + エキスマロー300円

久しぶりに支那そばやラ博店を訪問、実に1年半ぶりである。
以前メインメニューであった「絹腰和伊麺」がなくなり、2004年9月から「醤油らぁ麺」がメインメニューになっている。気になっていた烏骨鶏(うこっけい)の骨髄エキス「マロー」と合わせて食券を購入した。
店内カウンターにはビールのサンプルが置かれていて、「ラーメンビール」と言う名が冠されている。どういうビールかと説明を読むと、どうやらハーブを使用したスパイシーな風味のビールで「ラーメンに良く合うビール」・・・と言うことらしい。

まず先に「マロー」が提供された。ガラスの容器に入れられたその黄金色のクリーム状の物体は、烏骨鶏の骨髄エキスで、一部ルートでは健康食品として売られたりもしているようだ。
見た目は流動性のある脂肪分と言う感じで、ちょうどバターを湯煎したような状態に近いかと思うが、バターのような強い風味はなく、どちらかと言えば無臭に近いと思う。

ラーメンが登場する前に、スプーンを使って少しそのまま舐めてみると・・・・・とろけるように優しいながらも濃密な脂肪中心の味わいである。
しかし、香りがあまり感じられず、上品でクセがないため、動物性というよりもむしろ植物性の・・・「アーモンド」「マカダミア」などの高級ナッツ類の淡白な脂肪の風味を想起させられた。ほんのりと微細な苦味が混じる点も良く似ている。
そして次第に舌の上から油感が去ってゆくと、非常にデリケートな鶏の骨髄感が、最後の方で僅かに感じられて来る。
烏骨鶏の肉自体は濃厚で割とクセのある味だそうだが、骨髄ということでなのか、それともある程度精製しているのかは不明だが、複雑玄妙な味ながらも、やはり重さのない鳥類特有のサラリとした淡白な味わいだ。

いよいよ登場したラーメンを見ると、従来の支那そばやの醤油ラーメンの「定番」であったはずの九条ネギではなく、白ネギが載っているのが目を引いた。
どうやらラ博のHPを拝見すると、全体の風味のバランスを見直して、香りの強い九条ネギではなく、鳥取産の砂丘ネギと言うものに変えたようだ。
また、以前は支那そばやのラーメンが目の前に置かれると、厳選素材群からのとんでもなくふくよかで芳醇な「香り」が、あたり一面に鮮烈に匂い立ったものだが、今回はたまたまなのか、それほど香りが立っていると感じないのは・・・ちょっと気になった。

まずはマローを入れずに、レンゲでスープを一口飲んでみると・・・・従来の記憶では、鶏と醤油の味がお互いを高め合いながら深く調和し、ただただクリアでピュアな旨味が抽出され、一切の雑味がないとんでもなく高貴な味・・・であったはずだが、今回のスープは微妙な変化が感じ取れた。
その変化が、たまたまのブレなのか、それとも明確な方向転換なのかは不明だが、以前のような明るくて華やかな素材感に満ち、ちょっと浮ついたような「陽」の部分だけを強く感じさせる美味しさなのではなく、何と言うか・・・もう少し陰影のある「侘び寂び」(わびさび)の世界に通じるような・・・虚飾や驕り(おごり)を捨て去ったような、何とも「枯淡」な味わいに感じられたのだ。

言うなれば以前のような、鮮烈な香気と若々しい躍動感にあふれた「青年の味」から、いぶし銀のような渋い煌き(きらめき)を帯びた「大人の味」・・・に変化したようなイメージである。
別な言い方をすれば、明るく元気いっぱいでありながらも世間知らずの若者の顔ではなく、酸いも甘いも含めて、幾多の人生経験を積んで来た大人の男の横顔のような・・・どこかしらに翳り(かげり)のある味なのだ。

スープは上質な旨味ながらも、全体のトーンが控えめに感じられ、さらにおそらくは魚節系の苦味かと思うが、微細ながらも割とはっきりと感じられる苦味が横たわっていて・・・・まるでちょっと、ビターチョコレートを思わせるような・・・・甘さ一辺倒ではない、ほろ苦さのある大人向けの味のチューニングを感じさせられる。
むしろその微細な苦味や翳りの中にこそ、今まで誰も知らなかった新しい「美味」の世界が潜んでいるイメージであり、まだ「完成形」には至っていない部分も多少は感じるものの、ひょっとして佐野氏が新たに切り拓こうとしている「新境地」がこの先にあるのかも知れない・・・・と感じる。
「翳り」の中に潜む美学を説いた谷崎潤一郎の著書「陰翳礼賛」(いんえいらいさん)を思い出した。

一方の麺も、デュラム小麦粉をブレンドしていた従来の「絹腰和伊麺」と異なるのはもちろん、従前の醤油ラーメンに使用していた麺とも微妙に異なって感じられた。
以前の麺は、「究極的しなやかさ&なめらかさ」「絶賛のすすり心地&ノド越し」を一切の迷いなく追求していた印象を受けていたが、今回の麺は、石臼挽きの粉を混ぜたせいなのか、微細ではあるものの「ザラッ」とする舌触りの粗さが混じってしまっていて、以前のような究極的な滑らかさオンリーの舌触りや、都会風の真っ白い無垢な風味から比べると、どことなく田舎っぽさのあるノスタルジーテイスト、ややグレーがかった食味の麺に感じられた。

佐野氏によれば、石臼挽きした小麦粉は、製粉時の「発熱」が少ないので、小麦の風味が飛ばずに良く香りが残るという。
ラ博HPによれば、今回、日本そば風に「香り」と「旨み」を楽しめる麺を目指しているとの事で、石臼挽きの小麦粉をブレンドしているのかと思うのだが、麺の風味が良く判る「つけ麺」でなら私にもその違いが感じられたのかも知れないが、スープに浸り切ってしまうラーメンで食したせいか、正直に言えば、それほど際立った風味の違いは私には感じ取れなかった。
また、たまたまの茹で加減のブレなのか、ふくよかなコシはしっかりあるものの、かなーり柔らかめでデリケートな食味に感じられた。

途中で、いよいよ「マロー」を溶かし入れてみた。スープに溶け込むと、ほとんど無色透明な「鶏油」のような溶け込み方である。
その溶け込んだ部分をレンゲにとって、ゆっくりと味わってみた・・・・・・うーん、正直に言えば、パンチがグーンと増すとか、ピントがよりシャープに収束するとか、旨味が倍増するとか・・・・そのようにスープの味が劇的に変化すると言うことはないと思える。

と言うより、常に「素材バランスの妙味」をテーマとしている佐野氏にとって、何かの追加で「味が激変してしまう」と言う事自体がタブーなはずだ。
マローを入れた後は、確かに微細なレベルではあるが、鶏の甘味を中心とした複雑な旨味と風味が増加し、一層ふくよかでまろやかな口当たり感が増す感じにはなる。

また、一枚載るチャーシューは実に特筆ものの美味しさだった。山形県にある有名な「平田牧場」の豚肉で、3つの品種の豚を掛け合わせた「三元豚」という銘柄の豚肉らしいのだが、薄く切られているバラ肉ということもあるかとは思うが、口の中に入れたとたん、脂身も、赤身も、一瞬にして淡雪のように溶けて行き、まるで「幻影」か、「残像」のように、ただただ豚肉のピュアな「旨味とコク」だけが舌の上に広がって残っている。
これは、「噛む」と言う行為を無用のものとしてしまった無類の口溶け感とともに、豚肉の旨味のエキスだけをその内側に閉じ込めたような実に非凡なチャーシューである。

メンマは以前から変わらない短めで太めの切り方、竹の子の煮物を連想する上質な繊維感が心地よく、その食感、サイズや形も含めて、箸休めと言う意味では実にベストな仕上がりだと思う。「砂丘ネギ」という白ネギはシャクシャク新鮮で風味も上品なものであり、有明海産という海苔も色、風味ともに濃く、スーパーで売っているものとは明らかにレベルが違う。

今回の醤油ラーメンでは、スープ素材に名古屋コーチン、薩摩軍鶏、プリマスロックという三種の鶏をかけ合わせた「山水地鶏」という支那そばやオリジナルの鶏を使っていると言う事だが、そのせいか鶏の風味が「落ち着いたバランスの良さ」とともに感じられる。しかし、あくまで私的な好みだが、やはり以前使われていた純系名古屋コーチン鶏の、あのちょっと西洋風の甘く芳醇な「油」の旨さが、はちきれんばかりに満ちたスープの味も捨て難い・・・・と思えてしまう。支那そばやに限らず、名古屋コーチン鶏を使っているお店のスープは、一味も二味も違うし、明らかに美味しいと感じるのだ。

食べ終えてみれば、全体として塩分も控えめで、それでいて無化調による味の弱さなどもなく、円熟の領域を感じさせるじんわりとした美味しさに満ちている。
しかし、それでも3〜5年前の支那そばやの超絶美味、その無類の良質素材感、独走の完成度とバランス・・・・などなどを知っている人にとっては、「新境地への模索」(?)とも受け取れる今回のラーメンは、今後の展開、その行く末が気になるところだろう。
また、今回初めて支那そばやを食べる人が、もしマスコミ等の影響による過大な期待を持って食べたとした場合、決して「絢爛豪華」な味なのではなく、むしろ人によっては、想像していたよりも「地味な味」「大人しい味」と受け取られかねない気もする。


(麺は完食。スープは9割飲んだ。)




↓続きあり






〜支那そばや ラー博店 その2〜



久しぶりの「新横浜ラーメン博物館」、一年三ヶ月ぶりですな。
平日の夜8時過ぎにミュージアム入館。

館内駐車場は30分毎250円ですが、ラ博利用者は最初の30分は無料。
さらに、91分以上利用でラ博入場券2枚、151分以上で4枚プレゼントとお得。






今日は「金華豚チャーシュー」を食べに「支那そばや」へ直行。
平日夜のせいか、どのお店も行列なしでした。






店頭のメニューに書かれた「金華豚」の解説。
曜日により、「金華豚」と「梅山豚」(めいしゃんとん)のどちらか一品が、
日替わりで50食限定で提供されています。






券売機で「金華豚特上チャーシューメン」と「名古屋コーチン味付たまご」を購入。
たまたまラーメン博物館の夏季イベントで登場していた「夏麺」も買ってみました。






店内は右側にテーブル席、左側にカウンター席が並びます。
奥の明るい一帯が厨房スペース。






参考までに、こちらは藤沢市鵠沼海岸にある
以前、「支那そばや本店」(2004年秋閉店)があった建物です。
現在、湘南「ねぎ家」になっています。この日は定休日のようでした。
(2006年8月撮影)










2006年8月上旬 金華豚特上チャーシューメン 1500円 + 名古屋コーチン味付たまご 150円
(この写真はクリックで拡大します)



そ、総額1650円のラーメンは過去最高額・・・・だったかな?
しかし・・・・その価格がむしろ「安過ぎる」と感心させられる内容の凄さと、
完璧なクオリティ・コントロール・アビリティに感服です。

食べ始めれば高価な「金華豚チャーシュー」がドッサリ・・・・。
「いよいよ完成形?」の自家製麺も絶品・・・・。
前回感じたスープの謎も氷解・・・・。

シンプルな無地の器は深さがたっぷりとあり、かなりの容量が入ります。
ひょっとして、「陶山社中」の有田焼きの器かな?









「出したい味を100%正確に出す」、「365日100%常に同じ味を出す」、
「昼も夜も100%常に同じ味に保つ」・・・・。
これほどに、完璧な「TQC」ラーメンは見た事がないっス。
「ブレ」があって当然・・・・と考えていたスープの意識革命ですな。






自家製麺は、改良に次ぐ改良・・・・まさに「日進月歩」ですね。
独特の「しなやか感」「なめらか感」「のびやか感」が、一層際立ってグレードアップ。
常に「たゆまぬ研鑽」を続けて確実にバージョンアップしています。
計り知れない「研究時間」を費やしている「味」。






コシが「硬い」と言うのではなく、コシが「立派」&「豊か」と言う印象。
滑らかさと歯応えが非常に高い次元で両立した「高級感にあふれる麺」。

麺の姿形が「スラリと長く」&「完璧に均一」で、
全ての麺のすすり心地がパーフェクトに「揃い切っている」ことに感動。






これが「金華豚の肩ロース肉」です。
脂身部分はトロンととろけ、赤身部分は「ワシワシ」とビーフジャーキーのような立派な歯応え。
噛めば噛むほど・・・・口中で二倍にも、三倍にも、グングン味が膨らんで来る。
味付けは濃すぎず、薄すぎず、金華豚の本来の味をリスペクトしたもの。






脂肪タップリの「金華豚の巻きバラ肉」です。
高級豚と言うよりも、むしろ「猪肉」に近いよーな・・・・「獣っぽさムンムン」の豚肉。
味が緩くて薄い「家畜」っぽい豚肉ではなく、
凝縮した濃い味の「原種的で野性的」イメージの豚肉です。






最後は、「金華豚のモモ肉」です。
歯応えが「密」で「がっしり」としていて、いかにも「肉です」と言う肉肉しさがある感じ。
普通のモモ肉の3〜4倍は良く噛まないと、
なかなか味わい尽くした感じにならない濃密な肉質。






名古屋コーチンの味付き玉子。
名古屋コーチンの玉子はやや小振りで、黄身が大きいのが特徴。
濃厚な黄身を麺に絡めて食べると最高の美味が現出。




2006年8月上旬 金華豚特上チャーシューメン 1500円 + 名古屋コーチン味付たまご 150円 

最近、「豚肉」について調べていたところ、今現在、最も食べてみたい豚肉として「金華豚」(きんかとん)に行き着いた。
この金華豚は非常に希少価値が高く、中華料理の高級食材「金華ハム」の原料になる豚としても知られている。中国浙江省の金華地方が原産で、日本では浙江省の「友好姉妹都市」である静岡県がこの金華豚の寄贈を受けて飼育を始め、現在は御殿場で年間数百頭程度が生産されていると言う。その肉は銘柄和牛のような霜降りなうえ、甘味があり、脂肪の融点が低いので舌の上で身肉がトロける非凡な美味しさを持つらしい。

と言うことで・・・・以前から気になっていた、「支那そばやラ博店」の「金華豚特上チャーシューメン」にトライしてみることに・・・・。
また、前回訪問した際に感じられた「新境地への模索」(?)とも思えるようなスープの味の方向転換は、その後一年以上を経て、最終的にどのように変化し、落ち着いたのか・・・・にも大変興味があった。
お店に掲げられたメニューを見ると、前回訪問時は限定チャーシューメンとして、「桃園特上」、「幻豚特上」などのメニューが用意されていたが、いつからか「金華豚特上」と「梅山豚特上」の二種類のみに変更されたようだ。
さらに、ラ博の支那そばやでは「卵」を食べた事がなかったので、「名古屋コーチンの味玉」も追加した。

席に着くなり出された「冷水」を、「ゴクリ・・・・」と一口、これが何とも・・・・・異様に美味しい。
私は「支那そばや・ラ博店」は過去10回ほど訪問しているが、この「水」の異様なほどに卓越した美味しさには、毎回必ず感心させられる。「お水が美味い店は料理も美味い」と言うが・・・・ここまで美味しい冷水で感動させてくれるお店も珍しい。
こちらの店では、スープに使う水はRO逆浸透膜浄水器で一度完璧に浄水し、改めてセラミノールと言うピュアセラミックでミネラル分を加えて使っているらしいが、「お冷」にもその水を使っているのだろうか?

しかも、提供される「冷たさ」(温度)もあまりにも完璧、味はミネラルバランスの整った旨味とほのかな甘味があり、舌の上の雑味のすべてを洗い流し、ノドの奥にまで一瞬にして沁み入って来る・・・・・深山幽谷の湧き水の如き、超絶品の「冷水」だ。
今回も、食べている間、あまりにも水が美味しいので5杯もお替りを頼んで、すべて飲んでしまった。ラーメン以外のジャンルも含め、他の飲食店ではこう言う経験はほとんど記憶がない。
過去、どの店のラーメンが一番美味しかったか・・・・と問われると、答えに窮してしまうが、こと「お冷」に関してなら、ここ「支那そばや・ラ博店」が間違いなく一番美味しいと即答するだろう。

さて、チャーシューメンは、初めて見るシンプルな無地の「磁器」で登場した。
この器・・・・口幅は狭めだが、深さがたっぷりとあり、かなりの容量が入るようになっている。もしかしたら、この器こそが、400年余の伝統を受け継ぐ佐賀県有田の四つの窯元(陶悦窯、田清窯、李荘窯、伝平窯)が集った「陶山社中」と佐野氏のコラボレーションで新たに誕生したと言う・・・・オリジナルの有田焼きの器なのだろうか?
1500円のラーメンと言うと、ゴテゴテと彩り鮮やかな具を載せた「満艦飾」なラーメンを想像してしまい勝ちだが、さすが「食材の鬼」の異名を持つ佐野氏が作るラーメンだけあって、そのような安っぽいギミックは絶無だ。

まずはスープを一口飲んでみた・・・・。
そうして・・・・数秒後、「驚愕の事実」を目の当たりにすることになる。

この醤油スープ・・・・・何とも驚いた事に・・・・・「一年三ヶ月前」に私が飲んだ時の醤油スープと、「100%」「寸分違わず」「隅から隅まで」・・・・完璧に「全く同じ味」なのである。
まるで「デジャヴ?」と思える予想外の展開・・・・・これには、心底驚かされた。

そのまま数口飲んだが・・・・・飲めば飲むほど、ズバリ、100%完璧に「同じ味」が提供されると言う事実・・・・・。
実際、業務用の濃縮スープを薄めるだけとか、化学調味料やエキス類を大量に使ったスープなら・・・・毎日同じ味を出すのは比較的容易だろうが、これだけの多種多様な天然素材を大量に駆使しながら、ピンポイントで「同じ味」を常に出すのは、どのような名店にとっても決して容易ではない。しかも、前回は開店直後の「昼前」だったが、今回は終了近くの「夜」なのであり、自分が出したい味を毎回ズバリと出し、かつ、一日中「その味」を維持すると言う事実に至っては・・・・・ほとんど「神業」に近いと言う印象だ。
これが何を意味しているかと言えば、「TQC」(トータル・クオリティ・コントロール)の正確性、その技量が卓越していると言うことに他ならない。

また、一年三ヶ月を経て、前回と全く同じ味のスープが提供されると言うことは、つまり間違いなく、「この味」こそが、今現在の「佐野氏の目指している味」そのものと言うことにもなるだろう。
つまり、前回感じたとおり、私が思うところの、鮮烈な香気と若々しい躍動感にあふれた「青年の味」ではなく・・・・いぶし銀のような渋い煌きを帯びた「大人の味」へシフトしたようなスープなのだが、その変化の理由を私なりに考察してみた。

まず、スープから「華やかさ」が減ったのは、どうやら以前の「絹腰和伊麺」のスープに比べ、スープから「鶏」のウェイトが減らされているようだ。
正確な言い方をすれば、鶏が減ったのではなく・・・・・他の様々な「新素材」が増えたため、相対的に、「鶏」の比率が下がった・・・・と言う印象だ。
想像するに・・・・素材に対する探究心が人一倍旺盛な佐野氏のこと・・・・その素材探しへの飽くなき「渇望」が探し当てた様々な素材を、少しずつスープ造りに投入して行くうちに、結果として次第に「鶏」の比率が下がったのだろう。
そのため、以前よりも「鶏」の「華やかさ」や「キレ」が減り、その代わりに様々な新素材の「玄妙さ」や「コク」のウェイトが増えた・・・・ように変化したのだと思われる。

実際、以前はもっと「鶏」の芳香と旨味がストレートに生かされた、判りやすいパンチのあるスープだった。
この微細な苦味がほのかに中央に横たわる「いぶし銀」のような・・・・浮かれていない味・・・・「陰翳礼賛」のイメージ・・・・は、ある意味、「玄人志向」と言う印象を受ける。
途中、試しに極少量だけコショウを入れてみたが・・・・ほんの僅かでも、味が激変してしまう。想像以上に繊細なバランスの上に成り立っているスープのようだ。


さて、スープは前回と「寸分違わない」イメージだったが、自家製の「麺」は前回よりも明らかに「大きく成長している」印象を受けた。
前回は、ふくよかなコシがやや柔らかめでデリケートな食味にも感じられたのだが、今回は、そういったデリケート過ぎる部分がなくなり、一方で「しなやか感」「なめらか感」「のびやか感」は、一層際立ってグレードアップしている。つまり、従来の「長所」はさらに伸ばし、「短所」はすべて完璧に改善して消し去って来たと言う印象を受ける。

まず、究極的に「しなやか」なすすり心地でありながら、いったん麺が口の中に入ると、一回り大きく「ボワンッ」と膨らむ感覚がある。すする際に、口先で一度麺が軽く圧縮され、その反動で、口内で再び解き放たれて膨れ上がるイメージなのだが、外部入力に対する麺の「反発力」が豊かになっている。つまり、以前は時折、「そうめん」のようだと揶揄されることもあったコシのデリケートさが改善されている。しかも、コシを「硬くした」と言うのではなく、コシが「立派」&「高級」になったと言う印象を受ける。
そして、麺の姿形が非常に「長く」、かつ、完璧に「均一」で、すべての麺のすすり心地がパーフェクトに「揃い切っている」のには、感動を通り越して「畏敬」の念を覚えてしまう。

まるで、茹でた後に、クシですくって丁寧に並べ揃えたようなすすり心地の正確さと心地良さである。そのため、一回すする毎に、麺が舌に触れる面積がとても広くて大きく、まるで「高潮」のような計り知れない量感と素晴らしい滑らかさで、舌の上いっぱいに縦にも横にも広がりながら押し寄せて来る。舌を広く覆い、しなやかに曲がって常に舌にピッタリと寄り添って密着し、馴染む感じなのである。
いざ、噛んでみれば豊かな量感があり、旨味のある麺の美味しさを実感し、ノド越しもいわずもがなの究極的な滑らかさ・・・・・。滑らかさと歯応えが非常に高い次元で両立している「高級感にあふれる麺」であり、量もたっぷりと入っていて、大満足である。
いよいよ佐野氏の自家製麺も「完成形」が近いことを予感させられる。


そして、いよいよ本日の「主役」、「金華豚のチャーシュー」に箸を進める。
最初に丼が置かれた際、目に見えたチャーシューは二枚ほどで、高価な豚ゆえ、1500円なら二枚くらいが妥当なのだろうと思ったのだが、実際に食べ始めると・・・・・次々に、出て来る出て来る・・・・・大判チャーシューが5〜6枚もドッサリと埋蔵されていて、まさかこれほど量が入っているとは思わず、そのひとかたならぬボリュームに圧倒されてしまった。しかも、ご丁寧に「肩ロース」「巻きバラ」「モモ肉」と・・・・三大部位がすべて選りすぐって入っている。

まずは肩ロースから食べてみると・・・・・味付けは濃すぎず、薄すぎず、金華豚の本来の味をリスペクトした感じのものになっている。
脂身部分は確かにトロンととろけるが、赤身部分はいかにも緻密な「筋肉」と言う感じで、繊維感が立派で、「ワシワシ」とするビーフジャーキーのような歯応えがあり、まったくトロけない。そのため、食べていると赤身と脂身が分離しやすく、脂肪分だけが先に口の中でトロけて消えてしまう。
そうして残った赤身部分は、噛んでも噛んでも、なかなか肉の味が終わらない。普通の豚肉なら4〜5回噛んでしまうと、味がしなくなって自然と飲み込んでしまうものだが、こちらの豚は数十回噛んでも、味が次々に湧き出て来る。
というよりも、その位良く噛まないと、このプレミアム豚の「真価」「全容」は判らないようだ。なぜなら噛み続けるに従い、まるで三段ロケットのように、「グン・・・」、「グググン・・・・」、「グググググググーンッ・・・・」と、時間の経過と共に、口中で二倍にも、三倍にも、段階的に味が膨らんで来るのである。

何と言うか・・・・食べて、「すぐ美味い」のではなく、噛み始めてから10秒後、30秒後、60秒後と分けると、60秒後位が最も美味しいと感じる。
旨味が一過性ではなく、驚く事に舌の上でメキメキと草木が生い茂り育つように、グングンと増幅するように加速度的に「味が成長して来る」感じなのだ。
食べる前は舌の上で「淡雪」のようにトロけて消えてゆく、柔らかな豚肉を想像していたのだが、決してホロホロ、ハラハラとほぐれることはなく、「がっしり」していて、特に肉の「フチ」がワラワラと唇や舌に当たって来て、どこか「荒っぽさ」がある。
高級豚とは言え、過保護でヌクヌクと育った感じではなく、むしろ野生の「猪」(いのしし)の肉に近い食味だと感じる。

バラ肉などは、体積の6割ほどが脂身であった。
ちなみに私はもともとあまり豚肉の脂身が好きではなく、時折、特に脂の美味しくないチャーシューに出くわすと、赤身だけをきれいに選別して食べ、脂身部分をそっくりその形のまま残すことがある。そのため、網目状に残されたチャーシューの脂身を見た知人からは「型抜き」の名人などと言われることがあるが、こちらの脂身は化学的な臭みやブヨブヨ感が一切なく、すべてきれいに食べ尽くしてしまった。

モモ肉は筋繊維が密度高く、いかにも「肉です」と言う肉肉しさがある感じ。
決してパサパサではなく、しっかりとジューシーなのだが、歯応えが「がっしり」としていて、普通のモモ肉の3〜4倍は良く噛まないと、なかなか味わい尽くした感じにならず、飲み込む気になれなかった。
また、これだけ大量の脂身のある豚肉がスープに浸っているにもかかわらず、最後までスープがギトギトと脂っこくならないのにも驚いた。一体どういうマジックなのだろうか。

味玉は、やや小振りなのだが黄身の比率が大きい。ただし、白色レグホンの卵と違い、コーチンの卵はもともとやや小振りなのである。味付けは、たまたまなのか少ししょっぱめに感じられたが、黄身は新鮮で濃厚な旨味があって美味しく、麺に絡めて食べるとコクが出て最高の美味が味わえる。
メンマは支那そばや独特の「カリコリ」するリズミカルな心地良い食味。風味にはややクセを感じるが、太めで短めなサイコロ感覚が箸休めとしても楽しい。


さて、「金華豚チャーシューメン」を食べ終えての感想としては・・・・・
最近の銘柄豚と言うと、「獣っぽさ」が希薄で、ともかく柔らかい臭みのない豚肉が喜ばれ、どんどんマイルドな味わいの方向へ傾倒し、「柔らかい肉=高級」と言う偏った風潮が強い気がするが、それらの「アンチテーゼ」とでも言えるほどに、「獣っぽさムンムン」の豚肉であった。豚と言うよりも、むしろ「猪」に近い味わいに思え・・・・つまり、人間の手にまみれて養豚された「家畜っぽさ」のある「味が緩くて薄い」豚肉とは異なり、原種的で野性的な「凝縮した濃い味わい」に満ちている。
そのため、食べている時は随分と大型で獰猛な豚の容姿を想像していたのだが、後日、ネットで検索して「金華豚」の写真を見ると、かなり小型の豚で、その大人しそうな可愛い感じの容姿に少々びっくりした。

ちなみに「金華豚」、とても美味しい豚なのに、なぜ生産量が増えないかと言うと、非常にデリケートで、飼育に手間と時間が掛かりすぎ、どうやら養豚のプロでも育て上げるのが相当に難しい豚らしい。
最初はチャーシューメンとは言え、1500円と言う値段は高いなと思っていたが、食べ進むうちに、むしろ「これはかなり割安だな・・・・」と感じ始めて来た。実際、この金華豚をこれだけの量、もしトンカツなどで食べれば、「ロース」や「ヒレ」など部位は異なるとしても、1500円と言う価格では到底収まらないだろう。
この原種的で野性的な豚肉の味が、一般ウケするかどうかはともかく、私は次回来たら、ぜひまた食べたいと思う。


(麺は完食。スープも完飲。)




↓続きあり






〜支那そばや ラー博店 その3〜









同上日 夏麺 900円
(この写真はクリックで拡大します)



ラーメン博物館のラーメンジャパネスク「旬麺」企画で登場した
2006年夏季限定、支那そばやの「夏麺」です。

山形県のプレミアム枝豆「だだちゃ豆」を贅沢に使った冷たいつけ麺。
「クール&リフレッシュ」「ナチュラル&ヘルシー」な美味しさが堪能できます。

ヒンヤリとした口当たりと、非常にサッパリとした旨味が、
いかにも「夏向け」ですな。









枝豆のナチュラルな緑色が新鮮なインパクトを放つつけ汁。
「冷製ビシソワーズ・スープ」を連想させる・・・サラサラとして落ち着いた美味しさ。
気分は、すっかり「ベジタリアン」でつ。






冷たいにもかかわらず、刻みチャーシューもトロける美味しさ。
軽く炒ったような枝豆と、風味がフレッシュなスイートコーンをトッピング。
左上の「枝豆の豆腐」が、恐ろしく美味い。






「支那そばや」の自家製麺を「つけ麺」で食べるのは初めてです。
適度にウェットな食感で、全体に「ホワン」とする優しい滑らかな口当たり。
上質な国産小麦のふくよかな「旨味」、「香り」、「素材感」が、
そっくりそのまま「生きて」感じられる非常に美味しい麺。






野菜ペースト調の「モッタリ」としたつけ汁が、麺に非常に良く絡みます。
うーん・・・・中華でも、イタリアンでも、和食でもない・・・・
何とも「新感覚」の冷たい不思議な美味しさ。
つけ汁は無料でお替り可能。




同上日 夏麺 900円 

ラーメン博物館では、2005年から定期的にラーメンジャパネスク「旬麺」(しゅんめん)と題して、全店舗で横断的に季節限定商品の企画を行っている。
その一環として今年の6月から始まった「夏麺」は、テーマ食材として「枝豆」を使った夏季限定メニューを各店舗が企画提供している。こちらの「支那そばや」では、店内の貼り紙によれば、枝豆の中でもプレミアム銘柄として知られる「だだちゃ豆」を使ったオリジナルのつけ麺を提供しているとのことだ。

「だだちゃまめ」は、山形県鶴岡の在来種で、生産地や生産量が限られており流通量も少ないことから「まぼろしの枝豆」などとも呼ばれている枝品の逸品だ。
実際、私も山形県の栽培農家のHPで二度ほど購入した事があるが、夏にしか販売されず予約制のため、購入には苦労した記憶がある。実際に購入して茹でてみると、スーパーで売られている枝豆とは「雲泥」の差を持つ素晴らしい美味しさだった。鍋で茹で始めると「枝豆」と言うよりも、むしろ「スイートコーン」・・・・「とうもろこし」にそっくりの甘い甘いフレッシュな香りが家中に充満する感じで、香りも味わいも、普通の枝豆より遥かに濃くて、深くて、鮮烈・・・・・一口食べれば、仰天するほどの美味しい枝豆である。

いよいよ登場した「夏麺」、テーブルへ置かれた際に、「つけ汁のお替りは無料です。もし足りなくなったらお申し付け下さい。」と、スタッフから案内があった。
まずは・・・・汁に浸けず、麺だけをそのまま食べてみると・・・・適度にウェットな食感で表面がヌメる感じがあり、全体に「ホワン」とする優しい滑らかな口当たりである。
噛み締めてみると、使われている上質な国産小麦のふくよかな風味が、そっくりそのまま「生きて」感じられ、何とも「馥郁」な風味があふれ返る非常に美味しい麺だ。麺の「旨味」、「香り」、「素材感」が生きていて、何者にも邪魔されずにストレート&ピュアに私の舌へと、鮮やかに「舞い降りて」来る。特に、とめどなくあふれ出す上質な小麦粉のふくよかな「旨味」は、誰が食べても、明らかに「普通じゃない」と言う印象を持つと思う。

そして後口には、微妙な「甘味」が感じられる・・・・。ただ、この甘味、麺に何か細工をしたのではなく、おそらくは上にトッピングされていたスイートコーンの甘い汁が移ったのだと思う。
また、細麺のつけ麺だと、時間が経つに連れ、麺同士がくっついてしまうことが多いが、こちらのつけ麺は上手に水分が残され、細麺ながらもお互いがくっつかないように工夫されていた。

一方の「つけ汁」は、モッタリとしたトロミと淡い緑の色合いからすると、「だだちゃ豆」を煮て、裏漉ししたような印象だ。
麺を浸けて食べてみると・・・・つけ汁は、実に気持ちよく「ヒンヤ〜〜リ」と冷やし込まれていて、「だだ茶豆」の風味や香りがフレッシュで豊か、豆の粒子がサラサラとして舌を撫で回して楽しい。この感覚は、「自然の味」「大地の味」が詰まった新鮮な野菜類をミキサーにかけ、ペースト状にして一切の調味料なしで食べる感覚に近い・・・・。
野菜らしく、後口が素晴らしく「サッパリ」としていて、舌の上がきれいスッキリと洗い流されるような、「クール&リフレッシュ」された感触になる。この卓越した味離れの良さ、研ぎ澄まされたサッパリ感・・・・ゆえに「夏向け」メニューとして最適な一品に仕上がっている。

そして、二口ほど食べて、このつけ汁・・・・何かに似ているなぁ・・・・と思っていたのたが、三口目で何と似ているのか閃いた。
ズバリ、味や食感ともに・・・・・冷たい「ビシソワーズスープ」にそっくりなのだ。
ジャガイモ、タマネギ、牛乳、生クリームで作る「冷製ビシソワーズ・スープ」の芋や豆を裏漉ししたような・・・・特有のサラサラと粒状感のある滑らかな舌触り、軽く加熱しただけのフレッシュさの残る野菜の豊かな風味が・・・・何とも良く似ている。
さらに食べ進んでいると、つけ汁から、どこかしら「甘酒」っぽさを感じるなと思っていたら、後口に酒粕のような・・・・日本酒のような風味が残る。また、動物性のダシや塩気というものはほとんど感じられず、それゆえ口当たりも軽く、優しく、何より豆の栄養がたっぷりと詰まっている感じで、非常に「ヘルシー」なのが食べていてもしっかりと伝わって来る。

一片乗っていた豆腐が、これまた信じ難い美味しさ。
何気なく一口食べて、そのショッキングな美味しさに、思わず席から立ち上がりかけ、お尻が30cmほど浮き上がってしまった。
ただただ・・・・「だだちゃ豆」の純粋な旨味だけが一切の邪魔なく感じられる、凝固剤やツナギを使わずに、冷やす事だけで上手に固めたようなエクストラ・ピュアな食味。口の中に入れた途端、一瞬にして「淡雪」のように溶けて行き、まるで「幻影」か、「残像」のように、ただただ「茶豆」のピュアな「旨味とコク」だけが舌の上に広がってクッキリと残っている。
これは、「噛む」と言う行為を無用のものとしてしまった無類の口溶け感とともに、「だだちゃ豆」の旨味のエキスだけを有形化して閉じ込めたような・・・・実に比類のない美味しさである。「固めた」感じが全くなく、市販の高級絹ごし豆腐のさらに10倍は柔らかくデリケート、舌が触れた瞬間に、ピュアな旨味として一瞬にして「昇華」する感じで、実に幽玄なる口当たり、舌触りだ。

また、チャーシューは、普通なら冷たいまま出されると、脂肪が活性化しておらず、あまり美味しくないことが多いのだが、こちらでは「平田牧場」の「三元豚」を使っているため、脂肪の融点が低いのか、とても口当たりが良い。トロけ易いように、表面積が増える極細に切られているのも奏功していると思われる。
軽く炒ったように乾燥した豆が散らされていて、歯触りと見た目の両方で良いアクセントになっている。コーンも茹で立てを連想するフレッシュな風味とナチュラルな甘さで美味しい。
つけ汁は「からみ」が非常に良いため、あっというまに消費してしまい、二回ほどお替りさせてもらった。合計三杯の「つけ汁」を摂取したことになるが、野菜特有のとても軽いヘルシーな腹心地で・・・・気分はまさに「ベジタリアン」である。

このメニューは・・・・中華でもなければ、イタリアンでも、和食でもない・・・・と思う。
しかし、到底、「思い付き」で作れるようなレベルではなく、非常に完成度が高い一品だ。普段は、限定商品と言うと「付け焼刃」的なメニューが多いので、まず滅多に食べないのだが、さすがに支那そばやは、限定メニューも「レベルが違う」「真剣に作っている」と感心させられる。
ちなみに、このメニューは6月頃から提供されていたようだが、「だだちゃまめ」自体の出荷は毎年8月中頃だったと記憶している。
どういうルートで6月頃から「だだちゃ豆」を入手できていたのかは判らないが、さすが「素材の鬼」と呼ばれ、全国に広く食材ルートを持つ佐野氏の面目躍如と言うところなのだろう。
また、普通の枝豆に比べれば、遥かに高価な「だだ茶豆」が贅沢にタップリと使われた「つけ汁」が、お替り無料と言うことを考えると、900円と言うプライスは、非常に良心的だと思う。


(麺は完食。スープ割はせず。)










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