ラーメン&つけ麺食べ歩き
吉左右
(東京都 江東区)

店名 麺屋 吉左右(きっそう)
住所等 東京都江東区東陽1-11-3 【地図表示】
禁煙 タバコ可否不明
訪問日 2007年4月下旬 らーめん 650円
           つけ麺 750円


〜麺屋吉左右 その1〜



「吉左右」にほど近い大通り。
お店は東京メトロ東西線の「木場駅」から徒歩約3分、
「東陽町駅」も約5分ほどの場所にあります。

右端に見える「緑のヒサシ」を曲がります。






何気なく、角を曲がると・・・・
「ズゥオオオオオン・・・・」と一群の人だかりが出現。
な、な、何事か・・・・!?






ヤ、ヤハリ・・・・「吉左右」待ち客の皆様方でしたか。
この熱気・・・・この一帯だけ気温が違うような気が・・・・。

昼時を大きく外していても、なんと・・・・26番目。
店頭には椅子が用意されています。






店頭に掛けられた営業時間の案内。






店内はカウンター形式。
お二人で「すべて」を切り盛りされています。
奥の部屋にチラッと・・・・「製麺機」が見えますね。






客席に置かれたお品がき。
今回、注文は事前に並んでいる時に尋ねられ、
「らーめん」と「つけ麺」をオーダー済み。










2007年4月下旬 らーめん 650円
(この写真はクリックで拡大します)



「全方位」&「全タイトル」・・・・完全制覇。

まさに・・・・「GRAND SLAM」(グランド・スラム)
と言う称号が相応しい一杯。

「やれる事」「思いつく事」を
すべて限界値まで「完全履行」した印象です。

とにかく「お金と手間がタップリかかっているラーメン」ですね。
食べれば・・・・店頭の行列の凄さにも納得です。









「一口目」から、アゴ全体に「ガッツンッ!」という衝撃が走り来る
猛烈な爆発力を伴う「アトミック・テイスト」を放つスープ。
まさに・・・・息もつけない「旨味の弾幕」、もしくは「味の集中豪雨」と言う印象・・・・。






スラリとしなやかで・・・「パラパラ」「プリプリ」と軽快なリズムを奏で、
アクティブな「動き」と、まん丸な断面の「口当たり」が印象的な自家製麺です。
やたらと太すぎず、無闇に硬すぎず・・・「ソフィスティケイト」された食味。




2007年4月下旬 らーめん 650円

2006年1月創業、瞬く間に人気化し、今や都内東部を代表する人気行列店の一つ。
お店は、片側三車線の大通りから一歩入った路地に面している。大通りの角を曲がると・・・・予想はしていたものの、お店の前の狭い道路には、只ならぬ人だかりが出来ていて驚いた。既にお昼時は大きく過ぎていたが、数えてみると25名が列を作っており、ほぼ一時間の待ち時間となった。

途中から、店頭の待ち椅子に座る事が出来、ほどなくして事前に注文を聞かれる。待ち時間の間、「らーめん」が「つけめん」か・・・・迷ったが結論は出ず、後で後悔するのも嫌なので「両方」注文することにした。最初に「ラーメン」を、食べ終わる頃に「つけ麺」を、と言う順番でお願いする。
順番が来て入店すると、店内はカウンター席のみなのだが、椅子がやや高く、またカウンターの衝立も少々高めだ。そのため、スーッと背筋が伸び、自動的に「姿勢を正して」食べる感じになる。

登場したラーメンは・・・・・やや大振りな器にたっぷりとスープが注がれている。
スープは「豚のゲンコツ、鶏ガラ、椎茸、昆布」などで取ったスープを一日寝かせて、「カツオ節など三種類の魚節」を使った魚介スープと、丼に注ぐ際にブレンドするダブル・スープだそうだ。

一口、レンゲで飲んでみると・・・・・スープがかなり「熱々」なこともあり、一口目から非常に「強大なるインパクト」・・・・がある。
まさに一口目から、食べ手に考える余裕を一切与えずに、強引に自己の世界へ引き込むパワーのあるスープだ。
口に入ってから・・・・「美味い」と言う感情が「打鐘」の如く響き渡るまでに・・・・時間が非常に速いのに驚かされる。舌で味わうと言うよりも・・・・アゴ全体に「ガッツンッ!」という衝撃があふれ返る、猛烈な爆発力を伴う「アトミック・テイスト」な美味しさなのだ。

何より特徴的なのは、スープの「熱さ」も手伝って「ボワッッ」と火炎が吹き上がるかのような・・・・まるで「活火山」のような「エネルギーの噴出感」があるスープだと言う事だ。
まるで・・・・スープに混じった「火薬パウダー」が燃焼しながら喉の奥にまで突き進んで来るかのような・・・・何とも力強い「喉を焼き焦がす」かの如き・・・・「旨味の濃さ&エネルギー」の燃焼感を持つスープである。とにかく、この最初の「一口目」・・・・・の只ならぬインパクトは相当なものだ。
「味付け」もかなり濃い目で、スープが舌に乗った瞬間だけ、「しょっぱい」と感じたが、すぐにこの煮えたぎるような・・・・沸騰するような・・・・舌に沸き立つ「エネルギー充填率150%の如き旨味」にかき消されてしまった。

さらに、このスープ・・・・表面にこそ「油の層」の姿は見えないが、しかし、実際にはかなりの量の脂が念入りな「乳化」によって、二度と分離不可能なほど、見事に「スープの内部」へ溶け込んでいる。舌に「トロロロン・・・」とまとわり付くのも束の間、その後は決して「ドロッ」ではなく、「ネットリ」でもなく、驚いた事に・・・・すぐに「サラサラ・・・」と口中に広がってゆく感触さえある。乳化した脂が「細かな球体」になって、舌の上を無数にころがり行くような「脂の粒状感」(脂肪球)が感じられるほどの舌触りなのだ。

この「乳化」と言う調理法は、「旨味の素」であるゼラチンや脂肪分をスープに均質に同化させ、口当たりに「厚み」を持たせ、味を「まろやか」にする・・・・「特濃系スープ」を作るための「奥義」である。
しかし・・・・そのためには膨大な量の「豚骨」を大きな寸胴で、火加減に注意しながら「コトコト・・・・コトコト・・・・」と、長時間に及び根気良く丁寧に炊いて「骨の髄」を溶かし出して行く作業が必須となる。短気になって「グラグラ・・・・」と勢い良く沸騰させては、見た目は派手だが、高温で肝心なゼラチンが破壊されてしまい、理想的な乳化は期待できなくなってしまうのだ。
ゆえに、理屈では判っていても・・・・限られた一日の仕込み時間の中で、ここまで徹底した「乳化」を実践できているお店は極めて少ないのが実情なのだろう。

さらに、二口目を飲んでみると・・・・やはり、やたらとはっきりした旨味がグイグイと舌へ圧し掛かって来て、濃い味付けが舌を覆い尽くし、飲む一口毎に秘められた「旨味のボリュームの凄さ」と「味付けの濃さ」に驚かされる。
非常に「明確に」味が際立ち、整った味の輪郭があまりにも「クッキリ」と強く浮き出て来て、しかもそれが非常に「長時間持続」する・・・・この旨味の攻め立て方は・・・・まるで息もつけない「旨味の弾幕」、もしくは「味の集中豪雨」・・・・と言う様相である。何重にも味が張り巡らされていて、まるで蟻の這い出る隙間もないと言うか・・・・「必ず美味いと言わせてみせる」・・・・というような、お店の「念」が見えて来る。

ただ、流行の「魚粉」をこれ見よがしに使っていないのは好印象だが、個人的には「加水分解調味料」(たんぱく加水分解物)を少々効かせ過ぎているような印象を受けてしまうが、むしろここまでやれば・・・・どんな人でも「味の物足りなさ」は実に絶無となるのだろう。ふんだんな天然素材だけにとどまらず、それなりの人工的な「厚化粧感」を感じさせるものの、まさに、最新兵器を重装備した「完全武装」のスープと言う様相だ。

一方の「麺」だが・・・・こちらのお店では、「ラーメン用」の麺は製麺してから1〜2日熟成させた物を使用し、一方の「付け麺用」の麺は敢えて打ち立てのフレッシュな麺を使っているらしい。
すすってみると、スラリとしてしなやかで・・・・「パラパラ」「プリプリ」と軽快なリズムを奏で、一本一本が完璧に分離して動き、決して重力に支配されず、動きを停止せず、口中にクッタリと寝そべることがない・・・・実にアクティブな「動き」を放つ麺だ。茹でるとかなり膨らむようで、まん丸な断面で、実に「まるまる」とした口当たりが印象的である。

噛んでみると、「モッチ、モッチ・・・」として、確かに、少し熟成させたと思しき「粘り気のある噛み応え」&「コシの落ち着き感」があり、やたらと太すぎず、無闇に硬すぎず、不粋にゴワゴワせず、なかなか「ソフィスティケイト」された食味に感じられる。言うなれば・・・・筋肉モリモリのワイルドなマッチョタイプではなく、老若男女の誰からも好かれそうな、広い客層のハートを射止めるであろう「スタイルの良い好青年俳優」と言うイメージである。
このスマートな麺の印象が、ラーメン全体を、少なからず「上品」で「紳士」な方向へ振っていると思う。

ただ、しかし・・・・スープを二口飲み、麺を二口ほど食べた時点で・・・・この後に「つけ麺」も頼んであった事を思い出し・・・・早くも、「二杯も、食べ切れるかな・・・・」と、少々不安になって来た。
この「食べ切れるかどうか・・・不安・・・」と言う意味は、決して「量的」な問題ではなく、「味の濃さ」的に、果たして私の「舌」が耐えられるかどうか・・・・と言う意味である。
私がもともと「薄味好き」と言う事もあると思うが、実際・・・・この時点で、もう「一杯全部」を食べたかのような気にさせられ、私の舌はすっかり「飽和」サインを出してしまい、脳内の味覚中枢は・・・・「もう、箸を置け」と言う指令を出し始めている。

実は、こちらへ訪問する直前にも他店で一杯食べていたのだが、連食三杯、麺量にして600〜700g程度なら「胃の容量」的にはノープロブレムである。しかし、あまりに味が濃いと、胃が満腹になる前に「舌の容量」の方が先に限界に達し、ギブアップしてしてしまう事がある。いわゆる「食べ疲れ」、「舌が負ける」と言う状態だ。
「舌」もまた、「胃」と同様に、「キャパシティの限界」があると思っている。食べた物が胃に溜まるのと同様、味は舌に蓄積し、その受容限度を超えると「苦しくなる」と思う。ヘッドホンで音楽を聴く時も、いくら大好きなCDでもボリュームを大きくして聴くと、早めに耳(鼓膜)が疲れてしまい、長時間聴けないのと同じ現象である。
特に、ここ数年前から、インターネットで話題となったり、人気化する新店の中には・・・・「加水分解型調味料」(蛋白加水分解物)が、私にとってはキツ過ぎると感じられるお店も多く、大抵、スープを3割ほど飲むとギブアップ・・・・となってしまう。

しかし、外で並んでいる大勢の人の手前、のろのろ休んでいる訳にも行かず、自分に喝を入れて・・・・「具」に箸を付けてみた。
チャーシューは肉厚だが、しっとりと柔らかで、脂身部分に沿って既に分解しかかっている。歯を入れると「ハラハラ」「ホロホロ」とほぐれ、肉の旨味も素晴らしくたっぷりだが、スープの中に埋没しないようになのか、やはり味付けはきっちり濃い目で、しっかりとパンチを持たされたチャーシューだ。
メンマはやや細めだが、歯切れに粘りがある感じで「ジャキ、ジャキ」とする歯応え。同じく、スープに埋もれないようになのか、やはりこちらもしっかりと味が濃い目に仕上がっていた。

一枚乗っている「海苔」は、黒々としてツヤがあり、青臭さがなく、そのあまりの香りの良さと美味しさに驚かされた。一口に「海苔」と言っても、「高価な海苔」と「安い海苔」では、おおむね「10倍以上」もの価格差がある。それゆえに、そのお店の食材への「こだわり」や「コスト意識」が最も端的に表れる物の一つが「海苔」だと言える。
その点、この素晴らしい濃厚な風味とコク、豊かなミネラル感・・・・こちらで使われている海苔は、トップグレードの高価な逸品なのは疑う余地がない。逆に、安い海苔は繊維が粗く、ガサガサ、ボソボソして、やたらと「緑色」が強く、海苔と言うより「藻」のような不快な臭いがしてしまう。

また、途中で試しに、卓上に置かれていたコショウを少しだけ入れてみたのだが・・・・ほんの極少量なのに、口中で「ツァッパーンッッ・・・・」と炸裂する、目が覚めるほどスパイシーなコショウでびっくりしてしまった。
かなり辛口で激スパイシー、鋭く、強く、非常にキレがあり、「香り」と「辛味」と「スパイス感」が詰まりに詰まっているコショウなのだ。無地の陶器に入れられていたのでブランドは不明だが、これは、もう・・・・・入手可能な限りの「最高品質のコショウ」を使っているのは間違いない。
そして・・・これだけ「強く鋭い辛味」が生きていると言うことは「挽き立て」のコショウであるのは間違いない。おそらくは店主氏が毎朝「粒コショウ」を高性能ペパーミルで挽いて、容器に移し入れているのではないだろうか。

駅近くの立ち食い店などに置かれている「香りが飛んでしまった」ような・・・・「味が抜けてしまった」ような・・・・気の抜けた安物のコショウ、成分が揮発した古いコショウとは、まさに「雲泥の差」「完全な別物」である。コショウにも細かなグレード区分があり、その品質差により大きな価格差がある。安くて古いコショウは、全く香りも辛気もなく、スパイス感どころか、ただザラザラするだけで、まるで「砂をかむ」ような無味乾燥なものが多い。
コショウ一つでも、「これほどこだわる」のかと・・・・お店の姿勢に感服せざるを得ない。他には「酢」と「一味唐辛子」が卓上に置いてあったのだが、後から考えたら、これらもおそらくは厳選された「一流品」の味と思え、ぜひ一口だけでも「味見」しておけば良かったと結構後悔した。

こちらのお店・・・・食べ進むほどに・・・・一つ一つのパーツに触れるほどに・・・・目の届く範囲の「すべて」、思い付く範囲の「すべて」、出来る範囲の「すべて」・・・・・において、あらん限りの「最高の素材」「最高の仕事」「最高のサービス」を提供しようと言う「決意」が、客である私に強烈に伝わって来る。お店で出すものには「絶対に妥協したくない」・・・・と言う店主氏の「魂の叫び」が聞こえて来るようだ。

さらに・・・・「手間」&「コスト」のかかった美味しいスープだと、あまり多く注いでくれないお店もあるが、こちらのお店は大き目の丼に惜しげもなく「なみなみ」と貴重なスープを注いでくれるのだから・・・・これでは原価割れにならないかと心配になるほどの質と量で提供してくれている。こちらのお店では「原価計算」よりも、まずは「顧客満足度最優先」である事が判る。
しかも・・・・スープの量が多くても、冷めるのが早いと持て余してしまうところだが、こちらのお店は「厚手」の器を使用する事で保温性が非常に良いのも嬉しい、実に最後までアツアツのスープのまま堪能できるのだ。
知れば知るほど、本当にどこまでも妥協したくないんだなぁ・・・・と感心することしきり。いやはや・・・・「全方位」「全パーツ」に目が行き届き、一切の妥協のないお店・・・・と言う印象だ。

ただ、食べ進むに連れ、乳化によるスープの重さとタンパク加水分解物による閉塞感を感じ始め・・・・なにか、箸休めと言うか、息抜きと言うか・・・・もう少し途中でサッパリできるような、「薬味」や「青菜」等を入れてくれると嬉しい気がする。
今、乗せられている薄切りのネギは、非常に薄く切って中央にまとめてあるため、ゴソッと固まってしまっていて、少々ほぐれにくい上、全体の「ヘヴィさ」の中に存在が埋もれてしまい、薬味の役割を果たし切れていないように思う。せめて、もっと「厚く」切って、噛むたびに「パリッ、シャクッ」とする明るい歯触りやネギの芳香が拡散するような切り方が良いと思うのだが・・・・。
また、幾多のこだわりの中で、水差しの「冷水」だけは・・・・普通に感じられた。私的には美味しい冷水こそがラーメンの「最高の薬味」だと思っているので、是非、水差しの中に備長炭等を入れてみてはどうかと思う。

食べ終わる頃には・・・・「胃の容積」的な腹心地にはまだ余裕はあったが、「味覚中枢」や「摂取カロリー」の容量的には、やはりそれなりの負担を感じた。
ともかく息つく暇がないと言うか、音楽で言えば「フォルテッシモ」の部分だけで丸々一曲が作曲されているかのような・・・・コーヒーで言えばまるで強烈に苦味ばしった濃い味の「エスプレッソコーヒー」を大きめのカップでたっぷり飲んだような・・・・イメージに近い気がする。

ただ・・・・幾多の「美味しさへのこだわり」を目の当たりにした身としては、この「旨味の強調感」や「味付けの濃さ」も・・・・店主氏の目指す「万全の味作り」に基づく良心の一環なのだと理解できる。
むしろ、敢えてしっかりその「ニーズ」を狙っているのだろうと思えるし、次々に訪れ、嬉々として列に加わる客入りを見ていると、その狙いが間違いなく「大成功」している事を確信させられる。


(麺は完食。スープは3割飲んだ。)




↓続きあり






〜麺屋吉左右 その2〜



メニュー裏面の解説です。
「麺のコスト」、「スープの乳化度」、「具の選別」、「卓上調味料への探究心」などなど・・・・
全方位に及び、非常に強い「こだわり」で埋め尽くされている印象。








同上日 つけ麺 750円
(この写真はクリックで拡大します)



ラーメンの「ハイ・クオリティ」と「味のベクトル」を
そのまま凝縮してプロデュースされた「つけ麺」と言う印象。

こちらも、店主氏の「決意の度合い」「つぎ込んだコストと時間」・・・
そして、「努力の軌跡」が・・・「ありあり」と伝わって来ます。

まさしく・・・・「全方位」に妥協知らず。
「必勝」に向けた桁違いの「デタミネーション」を感じる一杯。

無類の「Deep Impact」・・・・
只ならぬ「デミグラス・テイスト」を存分に堪能すべし。









こ、これほど・・・・凄い「乳化」を成し遂げたつけ汁は初めて見ます。
特濃のつけ汁は、これぞ・・・・究極の「ホモジナイズド・スープ」の完成形。
「表面油膜が全く分離しない」・・・・事に戦慄を覚えます。






麺だけを食べると、まるで、銘菓「ひよこ」の芳しい匂いのような・・・・
上品で、甘く、芳醇な風味がフレッシュに湧き立つ美味しい自家製麺。

すすれば・・・若々しく、躍動感のある速い動き、
噛めば・・・弾けるように「プリンッ、プリンッ」のコシが秀逸。






麺を「つけ汁」に浸けて引き上げたところ。
全身が「完全乳化」した驚異のつけ汁は、まったく重心がブレず、
図太い重量物が舌に乗るかの如き・・・「味の強大なグラビティ」テイストが現出。




同上日 つけ麺 750円

ラーメンを7割ほど食べたところで、「つけ麺」が登場してしまい、急いでラーメンを食べ尽くして、つけ麺へスイッチした。
麺の入った器を移動させようとして手に持つと、器がホカホカと熱く、一瞬、「あれ?間違ってあつもりにされたかな?」と驚いたが、麺自体は冷たい・・・・。
一瞬、不思議に思ったが、すぐに理由を理解した。おそらくは、これだけ乳化した「ゼラチン」(コラーゲン)の豊かなスープだと、洗剤で洗っただけでは汚れが落ちないので、熱いと感じる位の「熱湯」で器を洗っているのだろう。そして、途切れる事のない行列で、器は冷える間もなくフル回転になっているのだろう・・・・と。

私も、自宅で「自作ラーメン」を作る事があるが、寸胴や食器の後片付けにおいて、豚骨から出る「ゼラチン」に必ず悩まされる。ラード等の「脂」は洗剤で簡単に落ちるが、「ゼラチン」は粘着性の強い「タンパク質」なので冷えて固まると「水+洗剤」では容易に落ちないのだ。そのため、「熱湯」を使って溶かして落とすしかないのである。ただ、ここまで器がホカホカ熱いと、せっかくの冷たい麺も次第にぬるくなって来てしまうため、できれば一度、器も冷水で冷やしてから使ってくれると嬉しい。

麺を持ち上げてみると・・・・「ラーメン」の麺の断面が完全な「丸太」であったのに比較すると、「つけ麺」の麺は四角いエッジ感が残っている。そして、確かにメニュー公称値の「300g」はゆうにありそうで、なぜか安心する。時折、どう見ても公称値よりも明らかに少ない麺を出して平然としているお店があるが、こんなところにもこちらのお店の「良心」がはっきりと感じ取れる。

まずは、「汁」に浸けずに、「麺」だけを一つかみ食べてみると・・・・・一瞬にして鼻腔いっぱいにあふれ返る素晴らしい芳香、そして、「おおお・・・・この匂いは!?」と、「ハッ」とさせられる・・・・。
まさに、「打ち立ての香り」、「出来立ての匂い」が本当に素晴らしいのだが、「中華麺」の匂いというよりも・・・・もっと何か、明らかに別な食べ物を連想させられる、なんとも「甘く、かぐわしい匂い」である事に気付くのだ。
この口中にあふれ返る、何とも甘い、非常にかぐわしい・・・・「匂い」は、焼き立ての「ケーキ」か・・・・カスタード「プリン」の匂いのような・・・・どこかスイーツ風の匂いと思ったが、さらに数秒後、もっとはっきりと「閃くもの」があった。

この優しく、柔らかく、鼻腔をくすぐる滑らかな甘い匂いは・・・・ズバリ、大正元年誕生、黄色い箱のロングセラー・・・・「銘菓ひよ子」の匂い・・・・である。しかも、その「ひよ子」の餡ではなく、「皮」の匂いが最もイメージに近い。つまり、「小麦粉」と「卵黄」が砂糖などともに練り込まれ、芳ばしく加熱される事によって醸される・・・・甘い風味が香り立つ「あの」馥郁な匂いなのだ。そして、決して「香り」だけでなく、「味」的にも・・・・「銘菓ひよ子」の「皮」を連想させられる一面がある。

ううむ・・・・これほど「馨(かぐわ)しい」風味がする自家製麺、これが何を意味するかと言えば・・・・・使われている小麦粉の「質」そのものが非常に素晴らしいと言う事だ。
一般に、麺の評価は「重量」(グラム)ばかりが話題になりがちだが、例えば同じ「300g」の麺を作る場合でも、当然ながら高価な小麦粉を使うほど単価は跳ね上がってしまう。
おそらくはこちらのお店・・・・コストを惜しまず、相当潤沢に「高価な国産小麦粉」などを使って選りすぐりの自家製麺をしているものと推察する。太さ的には、「中太」と言うサイズで、昨今良く見かける「極太」の麺から比較すれば、見た目のインパクトは少ないが、その「中身」は、むしろ非常に「お金」のかかった麺である事が判る。

この麺の素晴らしい「香気」は、先の「らーめん」では、麺が濃厚なスープに埋もれていたのか、それとも麺の熟成で香りが少し落ち着いていたのか・・・・あまり意識できなかったが、カンスイもほとんど使用していないようで、カンスイの匂いも絶無であり、とにかく「新世代感」「高級感」の強い自家製麺だ。ただ、その分・・・・「保守的な中華麺」や「レトロなかんすい風味」が好きな人にとっては、甘い匂いが強すぎると言う人もいるかも知れない気はする。

そして、口に入った麺は・・・・麺の「動き」、その「反応速度」が非常に「高速」で「ビビッド」なのに驚く。
すすれば一直線に「シュルルンッ」と口の中へ突入し、「パラパラパラッ」と五月雨のように舌の上へ降り注ぎ、口中を元気に動き回る、動き回る、動き回る・・・・その「ハイスピード感」と「リニア感」が素晴らしい快感に感じられる。
昨今良く見かける「極太」の麺が、いずれも「のっそり・・・」とした「ヘヴィ級」の重い動きであることに比較すれば、まさに「中量級」ならではの動きの速さ、「軽快感」と「躍動感」と言うアドバンテージをしっかりと身に付けている。

そうして、いよいよ噛んでみれば・・・・もう、弾けるように「プリンッ、プリンッ」である。こう言う弾ける歯応えもまた、練り込まれた「卵白」から来ている食感だろう。
そして、何とも清清しくも、非常にかぐわしい風味が全開になって・・・・素晴らしい「スイート・パヒューム」が口中に湧き立つ・・・・。

一方の「つけ汁」は・・・・ラーメンスープを、さらに凌駕する驚異の「乳化レベル」。
ラーメンのスープが「コンデンス」系だとすれば、こちらのイメージは、それをさらに煮詰めに煮詰めた「デミグラス」系と言えるだろう。
渾身の「乳化」による脂肪球の驚異の濃密度が肉眼でも、舌先でも・・・・容易に実感できる。しかも、大抵のつけ汁は、油は軽いため器の「表面だけ」に油膜や脂肪球が集まり、底の方は普通に水っぽい事が多いが・・・・・こちらのつけ汁は、器の底の底まで・・・・「全身脂肪球」の状態となっている事に度肝を抜かれる。実際、脂肪分が全く分離せず、スープ表面に「油膜」が一切浮いていない事に・・・・その「乳化の凄さ」に、戦慄を覚えてしまう。
これぞ・・・・口にすれば誰もが驚く・・・・究極の「ホモジナイズド・スープ」(Homogenized Soup)である。

いざ、麺を汁に浸けて食べてみると・・・・これまた、先のラーメン同様、麺をすすり込んだ次の刹那、「う、ぅ、うまい・・・・」と言う「電撃的ショック」にも似た感覚が脳裏を一気に突き抜ける。
まさに、特濃の「Deep Impact」・・・・只ならぬ「デミグラス・テイスト」・・・・何より特徴的なのは、考える間もなく、「美味い」と言う感覚がすべてを支配する事と、全身が「完全乳化」した驚異のつけ汁は、まったく重心がブレず、図太い「重量物」が舌に圧し掛かるかの如き・・・・美味の「強大なるグラビティ」テイストが、まるで「仁王立ち」の如く・・・・舌の上に姿を現す事だ。
ただ、先の「ラーメン」の時と同様、少なからず人工的な旨味のブースト感があるのは否めないが、それもこのパワフルな「アタック感」を出すため、敢えて最善策として選択されたと言う印象を受ける。

そして、ラーメンでは最初の一瞬だけ感じられた「しょっぱさ」が、つけ麺では感じられず、最初からいきなり「旨味」が立ち上がって来る。そのせいかどうか、「一口目のインパクト」と言う点では、「ラーメン」よりも「つけ麺」の方が、より一層、さらに明確に「旨い」と感じさせられた。ただ、念のために補足すれば・・・・ラーメンの場合は、食べ始めるまでの数十秒間、長らく麺がスープに浸っているので、麺が濃い味のスープを吸い込んでいた事が「塩分感」の強さに影響していたように思う。
また、最初は熱いつけ汁も、麺を3〜4回浸けていると、次第に温度が低下して来る。そうなってしまうと、さすがに熱さのパンチを伴う「焼け付くような旨味」は堪能できなくなってしまうため、インパクトの「持続力」と言う点ではやや「ラーメン」の方に分があるかも知れない。

しかし、温度が低下しても、完璧にスープ内へ「乳化」し、コロイド状に分散し切った脂は、表面に浮くラード層とは異なり、全く「膜」になることはない。
さらに、「旨味の素」であるゼラチンや脂肪が表層付近だけに集中している「つけ汁」の場合は、麺を浸ける事でそれらが早々と「消費」されてしまい、後半は味が薄く感じるようになってしまう事が多い。その点、こちら「つけ汁」は・・・・完璧にゼラチンや脂肪がくまなく「全身に均質化」した「ホモジナイズド・ボディ」であるため、後半になってもつけ汁が全く薄くなることがなく、ラスト近くになってさえ、極わずかに、麺に付着した水気が溶け込む程度に抑えられていた。

ただ、その特濃均質テイストゆえ、また、使われている調味料の強さゆえ・・・・食べ始めから、食べ終わりまで一切の「味の変化」がないので・・・・後半になると、やや「大味」と言うか、多少「単調」のようにも感じられて来る気がしないでもない。イメージとしては、最初から最後まで「濃い味」で押し切られてしまい、まさに相撲の取り組みで言えば「電車道」で勝負が付いた一番と言うイメージだろう。
ラーメンでも感じたが、どこか途中で口がサッパリするような「青菜」等を入れてみて欲しい気もするし、ネギを「シャキシャキ」言う位に厚めに切って欲しいような気もする。
ただ、私は何も使わなかったが、途中で、卓上の「一味唐辛子」や「酢」や「コショウ」を使って、自分好みの味の変化を楽しんでも良いと思う。そう言う意味では、敢えてデフォルトの状態では「ベーシック」「中庸」の味のまま出している気もする。

つけ汁の中には「短冊切り」のチャーシューやメンマが多めに入っていた。ただ、メンマが細すぎるのと、数が多いので、麺に混じって「ワラワラ」と口に入って来る確率が高く、少々うるさく感じられてしまう。今の倍くらいの太さにして、その分、本数を半減しても良いと思う。チャーシューも同じく、細く切られすぎていて、麺だけを食べたい時に、混じり込んで少々邪魔に感じられる事がある。これらを麺と一緒に食べたい時と、そうではない時が、自分の意思で「選択」できないのは、ちょっともどかしい。

当初、心配していた味の濃さは、麺を汁へ「浸す量」を加減すれば、味の濃度調節は可能になったこともあり、さほど気にならず、スムーズに麺の完食に至ることができた。
スープ割は、外に大勢の待ち客がいた事と、おそらくはラーメンのスープと近い味だろうと想像し、お願いしなかった。

「つけ麺」の印象としては・・・・つけ汁に後付けの「甘味」や「酸味」や「辛味」が付加されていないため、味の構成は、基本的には「ラーメン」と全く同じ方向性の味わいであると思う。
ただ、「麺」がスープに浸らずに提供される分、麺の味が良く判り、決して「スープ」だけではなく、「麺へのコストのかけ方」も、また、尋常ではない事が良く伝わって来る。
やはり、「死角なし」と言うか、まさに、全方位に渡って・・・・「万全の造り」、「磐石の体制」、「絶対の満足度」・・・・を目指している印象だ。

お店を出ると・・・・唇周りは大量のゼラチンで「ピトピト」とくっつく感じがある。そして・・・・「濃い味」の物を食べた事による・・・・独特な感覚が舌や胃にはっきりと残る。
休憩なしで二杯(計500g)を食べた事もあると思うが・・・・高名な柔道の達人に寝技でガッチリと「組み伏せられた」・・・・もしくは巨漢のプロレスラーに完膚なきまでに「フォールされた」・・・・後のような、一種の「疲労」や「消耗」にも似たヘヴィな感覚が私の全身に残って感じられた。
見た目は上品だが・・・・腹心地は非常に「ど・・・・っしり」「ズゥゥゥ・・・・ン」とする重たいスープであり、それなりに「舌」や「腹」に応えるラーメンだ。

その理由は決して「体積的なもの」だけではなく、乳化しているため視覚的には判り辛いが、スープはかなりの「脂分」を内包していると思うし、そして、その乳化した脂が舌の「味蕾」を包み込んでしまうため、味がマスクされるのを防ごうとすると、どうしても「塩分」や「調味料」も多めに使うことになるのだろう。
ただ、私は「家系」でも必ず「味薄め」でオーダーする人間なので、こう言った感想は、個人的な「薄味志向」が相当影響しているとは思うが・・・・。

ラーメンも、「ご当地」が流行ったり、「無化調」が流行ったり・・・・と、数年置きに「流行」「ブーム」「トレンド」が巡る傾向にあるようだ。
ここ数年の首都圏では・・・・「濃厚豚骨魚介」+「太麺」のスタイルがブームのように思う。
しかし、一口に「濃厚豚骨魚介」+「太麺」ジャンルとは言っても・・・・こちらのお店の味の創り方は・・・・「べんてん」や「TETSU」、「大黒屋本舗」(現:とみ田)などとは、方向性は少々異なると思う。

むしろ最近、私が都内で食べた中では、「燦燦斗」、「文蔵」、「服部」、「田ぶし」、「八雲」、「はやしまる」などなど・・・・と「共通項」を感じる味である。
ここ2〜3年は、こう言った、ビビッドで力強い絵筆のタッチで、クッキリと起伏を付けて、濃い原色を折り重ねた、まるで「極彩色の油絵」のような・・・・系統のラーメンの台頭を感じる。
明らかに、一昔前のグルタミン酸単体の化学調味料では出せなかった・・・・最先端の「ハイテク複合調味料」の強い恩恵を感じる味である。
映画で言えば、懐かしい「特撮」の時代は終わりを告げ、最先端の「CG」(コンピューター・グラフィック)によるSFX描画を豊富に盛り込んだ作品が話題になる時流・・・・を連想させられる。

これらのハイテク最新技術は、もし使いすぎてしまうと・・・・「ここまでしなくても・・・・」と感じてしまう場合もあるが、ラーメンや映画に限らず、様々な「時流」や「時世」として・・・・そう言う方向に向かう大きな潮流や趨勢があるように思う。


(麺は完食。スープ割はせず。)









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