01ch グルメ食べ歩き
筑紫樓 恵比寿店
(東京都 渋谷区)

店名 魚翅酒家 筑紫樓 恵比寿本店(つくしろう えびすほんてん)
住所等 東京都渋谷区恵比寿南1-10-2 【地図表示】
禁煙 タバコ分煙(1Fはタバコ可灰皿あり、2Fは完全禁煙)
訪問日 2006年8月下旬 赤焼大排翅「180g」 10800円  + アイスウーロン茶 350円
           什錦炒飯 1300円  + 小龍包 1000円
           杏仁豆腐 500円  + 海鮮炒麺 1300円
                                   (各別途サービス料10%)




〜筑紫楼 恵比寿店 その1〜



2006年8月下旬 赤焼大排翅(大ふかひれの姿醤油煮込み)「180g」 10800円  + アイスウーロン茶 350円 (各別途サービス料10%)

今回は、都内でも屈指の「フカヒレ中華料理店」との呼び声が高い、巷で評判の「筑紫樓 恵比寿店」(渋谷区・恵比寿駅)さんを訪問してみました。
実際、インターネット上の「中華料理系サイト」「グルメ系サイト」などを見る限り、こちらのお店を「絶賛」する記述が多数見受けられます。
しかも、その表現は「涙ものの美味しさ」「絶品のフカヒレ」などの最上クラスの賛辞が惜しげもなく贈られているお店なのです。




お店はJR恵比寿駅から徒歩2分ほどです。この日は、二名で夕方の5時近くに訪問しました。
やや入り組んだ場所にありますので、初訪問の場合は地図でしっかりと場所を確認した方が良いでしょう。




「筑紫楼」は、現在、都内を中心に6店舗を展開しているようですが、こちらの恵比寿店が「本店」の位置付けとなるようです。

実は5年位前にも一度こちらのお店を訪問してフカヒレ料理を食べた事がありますが、その時はもっと気取りのない庶民的な店構えだったのですが、どうやら2005年に大幅に改装したようで、ピカピカになるとともに、かなりの風格を持つ店構えになっていて驚きました。

お店のHPを拝見しますと、「魚翅海鮮酒家筑紫楼」と謳っているようですが、こちらの恵比寿店はフカヒレ料理だけでなく、四川料理をベースとした点心類や北京ダックなども人気のようです。




入口には巨大な「魚翅」(ふかひれ)がオブジェのように展示されています。
もの凄い大きさですね、もとは10m近い巨大鮫だったのではないでしょうか。おそらくは「ジンベエザメ」もしくは「ウバザメ」などの超大型鮫の尾びれだと思います。
フカヒレ料理にしたら、果たしていくら位なのか想像もできません。この巨大フカヒレの背中側に二階へ上がる階段があります。

左手に食前酒の「シャンパン」が冷やされています。
右手のレジには、2006年10月に「筑紫楼銀座店」オープンの告知ポスターが貼ってあります。
これで全部で7店舗になるようです。




一階席には、壁に沿って二人掛けの小卓が続き、フロア中央に丸テーブルが並んでいます。
以前の質実でシンプルな、気取りのない雰囲気からは想像できないほど、オシャレに洗練されましたね。




自然採光と間接照明を上手に融合させています。窓の外にテラス席が見えます。
一階席は喫煙可能ですので、全テーブルに灰皿が用意されています。




二階にある個室の一つです。大小6部屋の個室があります。
なんと・・・・「窓」まで「フカヒレ」デザインです。




二階フロアの四人掛けボックスタイプの席です。
照明が落とされていて、中華料理店としては、なかなかくつろげる雰囲気です。




この日は二人で訪問したため、こちらのテーブルスペースに案内されました。
刺繍入り白いテーブルクロスに、分厚いナプキン・・・・・なかなか畏まった雰囲気です。
ちなみに二階フロアは全席禁煙です。




こちらは「コースメニュー」です。
毎月の「おすすめ特選コース」メニューのページです。




「週替りランチ」と「ランチセット」のページです。




「夏のコースメニュー」のページです。




こちらは「ドリンク」メニューです。
ソフトドリンクから「アイスウーロン茶」をオーダーしました。




こちらは「単品」メニューです。「前菜」と「フカヒレ」のページです。
この日は、こちらのお店の看板メニューである「魚翅」を食べに来ましたので、「赤焼大排翅」(大ふかひれの姿醤油煮込み)を注文する事にしました。

フカヒレの重さによる量り売りになるようで、100g毎に6000円です。
「一万円位のフカヒレでお願いします」と伝えました。




すごいメニューの種類なので、うっかり1ページ飛ばして撮影してしまいました。
こちらは「肉料理」と「野菜・豆腐料理」のページです。




こちらは「麺・飯」「飲茶・デザート」のページです。
私は、「什錦炒飯」(エビ・チャーシュー入り五目チャーハン)を注文し、同行者は「海鮮炒麺」(海鮮やきそば)を注文しました。
また、二名で「小龍包」を一皿と、デザートとして、私は「杏仁豆腐」を、同行者は「マンゴープリン」を頼みました。





最初に登場した取り分け用の小皿とアイスウーロン茶です。
ウーロン茶の味や香りは、氷が入ったせいか、さほど濃厚ではないですね。





少しして、スタッフの方が煮付ける前の「鱶鰭」(ふかひれ)を見せに来てくれました。
「こちらで180gのフカヒレになります。お値段にして10800円になりますが、よろしいでしょうか?」と丁寧に現物を見せて確認してくれます。
こちらのフカヒレでお願いしました。

サイズのイメージを出すため箸を置いてみたのですが、箸を手前にして斜めから写しているため、遠近感のせいでフカヒレが実際より一回り小さく見えます。
また、「厚み」もかなりありましたので、実際に食べた印象としましては写真のイメージよりも二回りはボリュームがありました。





さて、煮込み前の「ふかひれ」を見せて頂いてから、約25分ほどで、いよいよ「赤焼大排翅」(大ふかひれの姿醤油煮込み)が登場して来ました。
「赤焼」と名前が付くように、濃い色の醤油煮込みのようです。

よく、ホテルのルームサービスなどに使われる丸いドーム状の銀色の大きな蓋が保温のために使われていましたが、その蓋を取りますと先ほどのフカヒレが見事な赤い飴色に煮込まれています。高級感満点の演出ですね。

ちなみに、フカヒレにはヒレを姿(全形)のまま干した「排翅」(パイチー)と、糸状にほぐして干した「散翅」(サンチー)とがあります。
主として、背ビレや尾ビレなどは「排翅」(姿)として加工され、他の比較的小さい胸ビレや腹ビレ等は「散翅」(ほぐし)として加工される事が多いようです。
価格的には、当然ですが、姿のままである「排翅」の方が高級品で、同じ重量なら「散翅」の二倍以上はするようです。





また、フカヒレは、その「大きさ」だけで価格が決まるものと思いがちですが、実際には、サメの種類やヒレの部位、形状や色、産地等によってグレードが細かく分類され、ランクや価格が決まるそうです。

まず、サメの種類ですが、フカヒレとなる最も代表的なサメは「ヨシキリザメ」だそうですが、これはマグロ漁の中に混ざって捕獲されるため、水揚げ量が多い事によるそうです。
実際、マグロ漁が盛んなせいか、日本は世界有数のフカヒレの生産国だそうで、中でも、宮城県北部に位置する「気仙沼港」は、国内のサメの水揚げの9割を占める「フカヒレのメッカ」として知られています。

他にもモウカザメ、アオザメ、メジロザメ、ネコザメ、シロザメ、などが用いられ、これらの中では特に軟骨繊維の発達した「アオザメ」が高級品になるようです。
また「メジロザメ」から取れるフカヒレは「白翅」と呼ばれて珍重されていたり、「ジンベエザメ」、「ウバザメ」などの「超大型」のフカヒレは最高級とされているそうです。
メニューの説明によりますと、この100g毎6000円のフカヒレは、どうやら「吉切鮫」のヒレのようです。
これが「青鮫」になりますと、100g毎に7000円に単価アップするようです。

また、ヒレの部位は、胸ビレ、背ビレ、第二背ビレ、腹ビレ、尾ビレ・・・・等あるのですが、日本では特にゼラチン質が多い尾ビレが上等とされています。
今回のフカヒレは、その形状から見ますと、どうやら「尾ビレ」のようですね。中国では繊維の長い背ビレを好む傾向もあるようです。





二人で一皿を頼んだため、スタッフの方が「お取り分けいたしましょうか?」と申し出てくれましたので、お願いすることにしました。
二階の廊下の角にある調理台で、ササッと2分ほどで、二人前に取り分けて頂いて、登場した一人前がこの写真です。

お皿は結構深さがありますので、フカヒレがすべてスープの中へ埋もれていてあまり見えませんが、実際にはかなりの量が入っています。
「スープ」は、見た目からして「モッタリ・・・」としていて、いかにもゼラチン濃度が高そうです。





レンゲと箸を使って、スープの中のフカヒレを取り出してみました。
レンゲのサイズと比較して頂くと良く判るかと思いますが、レンゲに乗り切らないほどのかなりの大きさです。

既に箸でつかんだ時のフルフルする手応えで、この後に舌の上で展開されるであろう「超絶美味のショータイム」の予兆を感じます。
そして何より、「金糸」と呼ばれるこの無数に見える「軟骨繊維」が、ヒレの「皮組織」(ゼラチン質)の中に、整然と並んで閉じ込められている状態が、フカヒレの美味しさの秘密なのです。

また、ご存知のように、フカヒレそのものには全く味がありません。
したがいまして、中華スープで煮込むなどして味付けをする訳ですが、もともと無味無臭のため、スープの美味しさがダイレクトにフカヒレの美味しさを左右してしまいます。
こちらのお店では、旨み豊かな丸鶏のみを使用し、8時間かけて鶏の旨みすべてをスープに溶け込ませた乳白色の「特製白湯スープ」を使い、醤油ダレでじっくりと煮込んでいるようです。

フカヒレ素材そのものが高価な上、乾燥させたフカヒレの水による「戻し」は、何日もかかるそうですし、スープの旨味と煮込みの技術で味が決まることを考えますと、「フカヒレ料理」は、到底、素人の手におえる食材ではないと言えるでしょう。

さて・・・・それでは、さっそく頂くことにします。





フカヒレは、レンゲからあふれる程のかなりの「大きさ」とともに、同時にかなりの「厚み」があります。
このフカヒレを、敢えて小分けにはせず、その塊りのまま「一口」でほお張ってみました・・・・。

まず、唇の上に載せたフカヒレはビロードのように「なまめかしい舌触り」で、スルリ、スルリ・・・と猫足のように舌の上へと侵入して来ます。
その際に、唇や歯がフカヒレに「ユルルルーリ・・・・」と、優しく「なでられる」感触があり、予想はしていても・・・・その「天衣の絹ずれ」のような感触に、まずは「驚嘆」してしまいます。

そうして、フカヒレの塊りが舌の上へと移動を完了すれば、これから数十秒間に及び・・・・筆舌に尽くせない「世紀の味覚のショータイム」の開幕となります。
フカヒレの構造は、細やかな無数の軟骨繊維をゼラチン質が覆いまとめ、同時に旨味タップリのスープをその中に内包すると言う構造です。

そこで、まずは、フカヒレを上あごと舌の間で挟み、上下からゆっくりと静かに圧力をかけて行きます。
そうしますと、フカヒレは、自らゆっくりと「解体」を始め、「ズ・・ズズ・・・ズズズズ・・・・」「サワサワサワ・・・・」と、ゆっくりと徐々に、極めてデリケートに、「無段階」に、「崩れて」行きます。

イメージとしては・・・・・四角いトコロテンを「押し出し器」に入れて、「グググ・・・・」とゆっくり押しますと、無数の細かな筋になって放出される・・・・あの感覚が近いでしょうか。
そして自然に崩れ始めたフカヒレの中からは、まるでビロードのような無数の軟骨繊維が「放出」され始め、そのツルリ、スルリとした潤滑感のある繊維の一本一本が、「唇」、「舌」、「歯」・・・・を途切れることなく、常にまったりと「なで回し」ながら、口中いっぱいに広がって行きます。

まるで「無数の羽ぼうき」が、舌の上を四方八方へ、縦横無尽に、舌を撫で回しながら広がってゆくようで、この滑らかで、柔らかで、ネットリとするフカヒレの感触に、気分はすっかり「夢心地」になり、私の舌も、身も、心までもが・・・・とろけて、すっかり「洗脳」されてしまいそうです。

そして、舌の上でフカヒレがゆっくりと崩れて行くにしたがい、フカヒレが抱き込んでいた大量の美味しいスープが舌の上に炸裂し、「ドバッ・・・・」と、旨味が口中にあふれて出て来て、これまた、得も言われぬ美味しさです。
さらにさらに、今度はフカヒレを軽く噛んでみますと、無数の軟骨繊維が「プチプチ・・・プチプチプチプチプチ・・・・・」と、小さな声を放ちながら、極細の軟骨繊維が「一斉に切れてゆく」精緻&微細な感覚に・・・・全身が激しい「恍惚感」に襲われます。

さらに続けて噛み続ければ、口中で「コリコリコリコリ・・・・」「サクサクサクサク・・・・」「クニクニクニクニ・・・・」と、細やかに、軽やかに、しめやかに、音色と歯応えが連続して変化して行きます・・・・。

そうして、いよいよ飲み込めば、たっぷりのスープの旨味とともに、「スル〜リ・・・・」とノドの奥へとトロけるように落ちてゆく究極的に滑らかな喉越し・・・・まさに、ブルブルと全身「身震い」が起きてしまう美味しさです。

この無類の「舌触り」、「口解け感」、「ジューシー感」、「歯応え」、「ノド越し」・・・・・。
この、連続する類まれなる美味しさの「シークエンス」、まさしく、これこそがフカヒレの持つ魅力の「真骨頂」に他ならないでしょう。

うむむ・・・・一つ目を食べ終えた時点で、そのあまりの重圧的な美味しさに、私の舌も、脳も、すっかりノックアウトされてしまい、既に「息も絶え絶え」の放心状態の様相です。





頑張って気を取り直して、二切れ目のフカヒレにチャレンジです。
写真を見ても、ある程度伝わるかと思いますが、この「トロロン・・・」とした煮崩れ寸前の「ゼラチン感」こそが美味しさの秘密です。
表面はユルユルした感じで溶け始めているかのように柔らかく、口に入れた時の歯や舌をなで回すピロピロの舌触り、トロトロと柔らかな歯触り、口の中でとろける口解け感・・・・まさに「夢見る」ような食感なのです。

口に入れ、ほんの少し、舌で圧力を加えるだけで、「ワラワラ、ワラワラ・・・・」と軟骨繊維が、次々と、「滑るように砕けてゆく」、「無段階にほぐれてゆく」、「無数に細かく分かれてゆく」・・・・・この食感は、他のいかなる食材でも体験できない、まさしく「比類のない」ものです。
よーく熟れた「高級マスクメロン」の柔らかな果肉の、歯をなで回し、舌の上でトロける口解け感も最高の美味ですが、こちらの口解け感は、そのさらに「2ランク」は上の快感です。

そうして、軽く歯を入れれば、「プチプチプチプチプチプチ・・・・・」と、再び、細やかな無数の軟骨繊維が断ち切れる微細な振動が、歯に心地良く伝わって来ます。
この「フカヒレ」の衝撃的な「口解け感&歯触り」は・・・・「前例がない」&「比類がない」ので、この感覚を「例えようがない」「表現の言葉がない」と言うのが正直な気持ちです。

うーん・・・・この「官能的」な美味しさは、既に「味覚」の次元を通り越し、「物理的な快感」、「陶酔感」、「絶頂感」、「恍惚感」・・・・に近いものが備わっています。
本来、人間の「唇」や「舌」は性感帯でもありますので、これはもうその辺りを巧みに刺激する・・・・ほとんど「エクスタシー」の世界にも通じる食感があるような気がします。

ただ、今回、少々気になったのは、最初に食べた特に厚みのある一切れは、中心部分に僅かに熱が通っておらず「ヒンヤリ」と感じられ、その分、味も染み込んでおらず、生のままのフカヒレっぽい温度と味でした。
その極僅かな中心部分だけは、トコロテンのような・・・・寒天(かんてん)のような感触で・・・・まさしく「無味無臭」です。
じっくりと20分ほどは煮込んでいたと思うのですが・・・・やはりフカヒレ調理の難しさを感じます。





さて、具の「フカヒレ」を大満足とともにあらかた食べ尽くし、残されたスープだけを飲んでみました。
この赤みがかったゼラチンスープは、フカヒレ煮込み用によく使われている「紅焼醤(ホンシャオジャン)」と言われているスープですね。

スープの動物性ゼラチンとフカヒレの海洋性ゼラチンがダブルで効いていて、驚くべき高濃度の「ゼラチン」(コラーゲン)が溶け込んでいます。
片栗粉も使われていると思いますが、それにしても破格の「モッタリ・・・」とする舌触り、無類の「マッタリ・・・」とした口当たりぶりです。油断していますと、潤沢なゼラチン質で、唇が「ピトピト」と強めにくっつく感じになります。

上質な鶏ガラを豊富に使った白湯スープがベースのようですが、非常に「リッチ&ソフト」な舌触りと味わいであり、同時に、信じ難い「旨味」と「コク」を備えたスープです。まさしく、全身が「旨味&コク」と言うイメージです。
しかし、鶏の油がほとんど浮いていないこともありますが、鶏の味が前面に出た感じではありません。ただただ「ふくよかな旨味」として、分厚いマットレスのような姿で存在している印象です。
動物性の脂がほとんどないので、クドさやしつこさは全くなく、「ドロドロ、ドロリ」とした感じではなく、「トロトロ、トローン」として、口当たりに丸みと膨らみがあります。
さらに、「干し貝柱」や「オイスターエキス」などの、いわゆる「乾貨」や「貝類」をふんだんに使った中国料理の独特な旨味が感じられるスープです。

味付け自体も割と濃い目で、かなりしっかりとした味付けなのですが、ゼラチンのトロミにすべてが「包み込まれている」と言う印象で、醤油味や塩気は、分厚いスポンジに覆われたかのように、全くといって良いほど舌に触って来ません。
さらに、「辛味」や「酸味」はゼロで、まさしく「調味料の味」ではなく、いかにも「ダシの旨味」でスープの味が構成されている印象です。
ほんのりとした淡い「甘味」が感じられますが・・・・非常にデリケートな「甘味」で、あくまで素材からのナチュラルなテイストであり、後付けの「甘味」ではないようです。
また、かなり「蓄熱性」が高く、スープが本当にいつまでも素晴らしく「アツアツ」です。おそらくは、異様なゼラチン濃度があるせいでしょう。

紛れもない「本物感」と言いますか・・・・「重量感」と言いますか・・・・「高級感」と言いますか・・・・「滋養感」と言いますか・・・・このスープ、「飲み物」としても抜群に美味しいです。
相当にお金のかかった贅沢で、旨味の潤沢なスープです。

フカヒレの品質ばかりに目が行きがちですが、基本であるこのスープそのものが「別格」の潤沢な美味しさを持っているからこそ、自信を持ってフカヒレを出せるのでしょう。
ぜひ一度、このスープ使ってラーメンを食べてみたいです。





こちらは、フカヒレと一緒に持って来てくれた「炒めモヤシ」です。
スタッフの方によれば、「途中でスープに入れてみて下さい。また別な美味しさが楽しめます。」とのご説明でした。

改めて良く見ますと、モヤシは、食感を乱す「頭の豆」と「ヒゲ根」が完璧に取り去られて、モヤシの一本、一本が、すべてきちんと下処理されています。
少しこのまま食べてみますと、茹でモヤシではなく、油で「シャキッ」と炒めたモヤシですね。「シャコッ、シャコッ」として、歯切れが非常に良く、「パリパリッ」と明快にクラックする歯触りが最高です。
相当に強い火力で炒めているようで、モヤシの繊維に粘る感じや、味の水っぽさが全くないです。また、モヤシ特有の漂白剤のような薬臭さも絶無です。





残ったスープに、炒めモヤシを投入してみました。
お皿の「深さ」が良く判るかと思います。

実は、「高価なフカヒレスープに、一袋30〜40円程度の安いモヤシを入れて、果たして合うものなのか・・・?」と、疑問に思ったのですが、数十秒後・・・・その考えが、全くの大きな誤解であった事実に気付きます。

このモヤシを入れたスープは、予想だにしなかった新しい美味しさを放ち、全く別な顔を見せてくれるのです。
このゼラチンスープの、それまでの「モッタリ・・・」とする舌触り、「マッタリ・・・」とした口当たりの中に、このモヤシの「シャキシャキ感」が加わることで、驚異の「美味」効果を生み出します。

実際、予想を大きく超える抜群の相性で、どちらかと言えば「マッタリ」一辺倒であったスープに、見事な「明るさ」「キレ」「鮮烈さ」が加わり、さらにさらに、一層文句なく美味しくなります。
モヤシの明るいシャキシャキ感が、窓から吹き込む一陣の春風の如く、まるで気付け薬のように作用し、快活な「キレ」と「サッパリ感」を付与するとともに、対比の原理となって、まったりとした口当たりのゼラチンスープの「トロミ」、「旨味」、「コク」を、一層、ググーンと大きく引き立て、何倍にも美味しさを増幅させてくれるのです。

まさしく、この「炒めモヤシ」の加わったスープは、その「旨味」が炸裂し、「ピント」が一層収束し、味の「輪郭」が一気に鮮明になります。スピード感が増し、高揚感、躍動感が生まれて来ます。
超絶ゼラチンの「トロトローン・・・」としたマッタリ旨味と、炒めモヤシの「シャキッシャキ!」のサッパリ歯触りの、計算され尽くした見事なコラボレーションですね。

もともとの「スープ」の実力の高さが、さらに包み隠さず明確になって、いよいよその実力の「全容」を現して来たという印象です。
果たして、いったいどこまで「進化」するスープなのでしょうか。

もともと筆舌に尽くせない美味しさの「フカヒレスープ」なのですが、フカヒレがなくなった後のスープは、目鼻立ちがなくなったかのように、「マッタリ」として、味がやや単調に感じられてしまう一面もある気がしていたところへ、
その客の心理を見透かしたかのように、添えられる見事なる工夫、「さすが」の一言です。

これぞ、まさしく「魔法のモヤシ」です。
まさか100g当たりわずか数十円程度の「モヤシ」でも、使い方次第では、ここまでの究極美味が具現できるとは・・・・・これからは、「モヤシ様」と呼ばなくてはなりませんね。

何とも深遠で、鮮烈なゼラチンスープと炒めモヤシの味わいの名競演・・・・が私の舌の上で奏でられて行きます。
まさに、このスープの真価を発揮する「第二幕」が上演されるイメージです。





食べ終わったお皿です。
レンゲの大きさや器の深さから、大体の一人前のフカヒレスープの容量が判るかと思います。

気が付けば、あまりの美味しさに、ここまでノンストップで、一気に食べ尽くしてしまいましたが、食べていて驚いたのは、スープが冷めて来ても、その美味しさがあまり変わらないことです。
本当に見事に調理された美味しいスープは、冷めても味が壊れないと言うことなのでしょうか。
さらに、化学調味料はもちろん、醤油や塩や、香辛料などの「調味料」の味をほとんど感じさせないスープなのには恐れ入りました。あくまで「素材の持ち味」で、美味が構成されています。

この「フカヒレスープ」こそ、まさしく中国四千年の歴史が到達した一つの「最高峰」、「究極&至高」の「黄金スープ」に他ならないでしょう。



さて、食べ終えての感想ですが・・・・・・
過去、「銀座」や「横浜中華街」などにある、「非常に著名」な高級中華料理店で、五〜六軒ほどは、こちらのお店と同価格帯か、それ以上の「フカヒレ料理」を食べて来ましたが、文句なく、群を抜いて、歴然として、こちらのお店のフカヒレスープが、「最も美味しい」と感じました。
逆に、過去に食べて来たお店の多くが、いかに外形だけを整え、中身の伴わない「イミテーション」のフカヒレ料理であったかが、嫌と言うほどに良く判ってしまいます。

こちらのお店で「ふかひれ料理」を食べますと、果たして、「なぜ、フカヒレが珍重されるのか・・・・」、その理由が心の底から納得できます。
非常に美味しいのですが、単に美味しいと言う枠を超えて、これと同じ「口解け感」を持つ食材は「他にはない」と確信させられるからです。
つまり、一切の「代役」が効かない「口解け感」であり、まさしく、フカヒレにはフカヒレだけが持つ「無類の美味しさ」の世界が確実にあります。

ただ一方で、逆に言えば、フカヒレ自体には味も香りもありませんので、フカヒレの「唯一&最大」の財産は、この「無類の口解け感」だとも言えるでしょう。
つまり、軟骨繊維の間に抱き込まれた「ゼラチン質」の口解け感と、そのゼラチン質の中できれいに「整列した軟骨繊維」の歯触りこそが、フカヒレの美味しさの最大の「鍵」なのです。

そう言う意味では、「フカヒレ」を味わうなら、絶対に「姿煮」=「排翅」(パイチー)がお薦めと言う事になります。価格は糸状にほぐされた「散翅」(サンチー)の何倍かするでしょうが、満足度は「天地の差」「雲泥の差」です。完全に別物と言っても良いでしょう。
糸状にほぐされたバラバラの「散翅」(サンチー)では、軟骨繊維を覆う肝心の「ゼラチン質」がすっかりなくなっているのです。
単に糸状のバラバラな軟骨だけ・・・・これではその食感は「ハルサメ」や「ビーフン」と大差ないと思います。

実際、過去、私もほぐされた糸状のフカヒレをスープや餃子に入れて食べる度に、なせフカヒレが珍重されるのか、その意味が全く理解できませんでしたが、しかし、5年程前に、こちらのお店で「フカヒレ姿煮」を食べて、初めてその「真価」「真実」を知ることができたのです。

ちなみにサメは軟骨魚類に属し、他の魚や動物のような「硬骨」が一本もなく、全身すべて「軟骨」なのだそうです。いわゆる健康食品やサプリメントとして売られている「サメ軟骨」は、その加工品です。
そう言う意味では、ズバリ、フカヒレは、無類の美味しさだけでなく、ゼラチン(コラーゲン)やコンドロイチンを豊富に含み、若々しい肌や骨格を保つ素晴らしいパワーのある食材でもあります。

フカヒレの漁獲量も年々減少傾向にあり、それに連れて価格も次第に高騰傾向にあるようです。
興味のある方はぜひ早めの訪問がお薦めでしょう。



(すべて完食)




↓続きあり






〜筑紫楼 恵比寿店 その2〜




同上日 什錦炒飯(エビ・チャーシュー入り五目チャーハン) 1300円  + 小龍包 1000円 (各別途サービス料10%)

さて、「ふかひれスープ」を食べ終わる頃を見計らって、「五目炒飯」と「海鮮焼そば」が登場しました。
取り分け用の小皿が添えられますので、同行者と、それぞれ半分ずつシェアして頂きました。




登場した炒飯は、本格的な中華料理店で良く出される、溶き玉子で黄色く仕上げた、いわゆる「黄金炒飯」です。
ご飯が広げられておらず、小高く「山」状に盛られていますので、実際は、写真で見る以上のボリュームがあります。

そして・・・・何より驚かされたのは、すべての飯粒がムラなく、完璧に「黄色」であることです。白いまま残っているご飯粒が一粒も見当たりません。
黄色い色は、サフランなどの着色料ではなく、すべて玉子の黄身の色です。

これが何を意味しているかと言えば、溶き卵で、すべてのご飯粒をパーフェクトに、極めて均一に、見事に「コーティング」していると言うことです。
実際に自分で炒飯を作ってみれば判りますが、炒飯は強火で炒めてこそ美味しく仕上がるのですが、そうしますと加熱で見る見る玉子は固まってしまいますので、すぐに「ダマ」や「ムラ」になってしまいます。
逆に弱火でゆっくりと炒めて行けば、卵はよく混ざりますが、それではご飯粒が「ベチャッ」としてしまい、決して「パラパラ」に仕上がりません。
つまり、こちらの炒飯のように、ご飯をパラパラに仕上げながら、すべてのご飯粒に均一に卵をコーティングすることは、相当の修練を必要とする、ほとんど神業に近い、極めて「至難の業」なのです。

そして実は、この玉子の「均一&極薄」のコーティングこそが、何よりの中華炒飯の美味しさの秘訣です。
薄くコーティングされた玉子が、炒め油を吸い込むため、ご飯が油でベチャッとならず、米粒同士が絶妙に「パラパラ」となり、炒飯に「フゥンワリ・・・」とする空気を含んだ「立体的」で「柔らかな」食感を生み出すのです。





このアングルで見ますと、高さのある「山」状に盛られた炒飯のボリュームが伝わるかと思います。

さて・・・・・まずは一口食べてみます。

ハグハグ・・・・・モグモグモグ・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・。



う、うぅ、うう・・・・・一瞬にして、「金縛り」です。

いやはや、美味しい「炒飯」です。あまりにも美味しすぎます。
この美味しさ、私にとって・・・・・「史上最高」の美味しいチャーハンかも知れません。


まず最初に、何より驚いたのは、その「米の美味しさ」です。
米の旨味が見事に「凝縮」され尽くしていて・・・・米の旨味が、一粒一粒の中に、「ギュギュウ〜」と閉じ込められていて、米に「プチプチッ」と歯を入れた瞬間に、その米の美味しさが無数に噴出して、口中いっぱいにご飯の旨味が湧き返ります。

この米の美味しさたるや・・・・「ご飯の炒め方」はもちろん、さらにその前段階の「お米の炊き方」、「お米のグレード」の選別からして、「究極」と言う印象を強く受けます。
完璧な炊き上がりの「絶品米」を、ギンギンに熱した中華鍋の猛烈な火力で「一瞬」にして炒め上げ、美味しさをすべて閉じ込めた印象です。

塩加減や炒め油の使われ方も過不足なく、まさに「完璧」、そして米の美味しさに続いて、玉子の「ほ・ん・わ・か・・・・」とする優しい甘味が舌を包み込み、ゆっくりと参加して来ますが・・・・兎にも角にも、「米」の美味しさが「突出」していますね。

また、いかにも純粋な中華料理と言う感じで、焦げた醤油の芳ばしさで食べさせる和風の「焼き飯」とは異なり、醤油風味がほとんどしません。
そう言う意味ではシンプルな塩味になる訳ですが、だからこそ、ご飯の美味しさ、玉子の甘味やエビの旨味、焼豚の美味しさが、際立って活きて来るようです。

また、見た目はなんて事のない「小エビ」ですが、実際に食べてみますと、驚くべき美味しさと、歯を弾き返すほどの豊かな弾力に富んでいます。
ザキザキと噛み砕きますと、旨味が「ギュギュ、ギュュュゥゥゥゥ〜ッ」と密に詰まっていて、口中でエビの旨味が小爆発する印象です。
まるで干エビのような高密度の食味ですが、この小エビの歯応えが、チャーハン全体の中でとても良いアクセントになっています。
小エビの「ザキザキ」とする歯応えと「ザリザリ」とする繊維感を歯ですり潰して食べるのが、「高級乾貨」(乾物)的な、比類のない美味しさです。

実際、この「小エビ」と「玉子炒飯」を一緒に頬張って食べますと、10回、20回、30回、そして40回、50回と・・・・噛めば噛むほど、旨味が止まるところを知らずに増幅して来ます。
うむむ・・・・噛めば噛むほど、この炒飯の持つ深みに引きずりこまれます。次第に・・・・・「天上の世界」を垣間見てゆくようです。





そうして夢中で食べ進むうちに、次第に玉子の甘味とは別な種類の甘味をほんのりと感じ始めました。どうやら「蜂蜜」の香りと甘味のようです。
最初は「ハチミツ」の香りと甘味がなぜ存在するのか不思議に思いましたが、すぐに「叉焼」(チャーシュー)を焼く時に、「叉焼」に塗り込めたハチミツがローストされた芳ばしい香りと甘味である事に気付きました。
ほのかなハチミツの隠し味が、なんともリッチな気分にさせてくれます。

また、八角などの中華系の香辛料の香りが極微細に香るのですが、これはチャーハンの味付けに使ったと言うよりも、おそらく刻まれた「叉焼」に使われている香辛料が香っているものと思われます。
また、ダシ汁を使って極うっすらと風味を付けているような気もしますが・・・・・この「叉焼」の味わいが流れ出ているのかも知れません。

食べ進むにつれ、卓上に「コショウ」「塩」「醤油」など、一切の調味料が置かれていない理由が改めて良く判ります。
まさに、「一切、いじりようのない」・・・・「完全無欠の美味しさ」ですね。食べていて、いつの間にか全身が「無上の幸福感」に包まれます。
ただ、終盤になって来ますと、焼豚に塗られたハチミツの甘味が少しずつ舌に蓄積して来る気もします。

ちなみに、本格的な中華料理店の炒飯でも、やたらと大きなエビや、レタスの葉などが入って、炒飯全体の食感が「不均一」になってしまっている炒飯も少なくありませんが、
こちらの炒飯はエビや叉焼などの具も、米粒のサイズに合わせて小さく刻まれており、何かが突出しておらず、全体の食感が極めて均質で、口当たりも「パラパラ・・・パラリ・・・」と、軽快にまとまっています。つまり、あくまで「ご飯モノ」料理としてのアイデンティティを保っています。

具の中では、特に「小エビ」の旨味が絶品なのですが・・・・しかし・・・・それ以上に、やはり「米」の旨味が超絶の凄まじいまでの美味しさです。
私的に「チャーハン」とは、決して「具」の豪華さを競う料理ではなく、「米」をいかに美味しく食べさせるか・・・・を競う料理だと理解していますが、それにしても果たして、ここまで・・・・「米の美味しさ」を生かし切っている炒飯が存在するとは・・・・。
そして、料理の「主役」として「米」がここまでの「高み」に昇り詰める事ができるとは・・・・と、「感慨」しきりです。。

一品料理としてのボリュームもたっぷりですが、先の「ふかひれスープ」同様に、アツアツの状態はもちろん、冷め始めてからでも・・・・どちらの状態でも素晴らしく美味しいチャーハンである事実にも驚かされます。
ボリュームがあり、かなりの満腹になりますが、味が濃すぎず、薄すぎず、調味料に頼っていない、全く「飽きの来ない美味しさ」ですので、「最後の米の一粒」まで、全く休むことなく、一気にペロリと食べ尽くしてしまいました。





さて、こちらはチャーハンと同時に提供された「小龍包」(ショウロンポウ)です。
蓋をしてあったこともあり、また、炒飯があまりに美味しかったため、ついつい油断して後回しにしていたら、提供されてから5分ほど経ってしまっていました。

蓋を開けてみますと、既にまったく湯気が立たなくなっています。
小龍包が登場した時点では、湯気でふっくらと膨らんでいた状態だったのですが、今ではかなりしぼんでしまっています。
うむむ・・・・これは、失敗しました。

当然ですが、「小龍包」は、熱いうちにパクリとやりますと、舌の上にアツアツのスープが迸り出て来て、それを「フゥフゥ〜」言いながら食べるのが、唯一の美味しい食べ方です。





食べてみますと、皮が厚めでモチモチしていますが、時間が経ってしまったせいか、皮が中身のスープをすってしまいふやけ気味です。
皮がスープを吸ってしまっていて、スープが既に少なくなっていたため、スープが「ドバッ」と勢い良くあふれ出て来ることもありません。
また、一部の皮が破れて、中身のスープがすっかり流れ出ている物もありました。

中に残っていた僅かなスープを味わってみますと、非常に上品で、「あっさり」としていて、薄味です。
餡の中身は挽き肉ですが、やはり登場し立てのふっくらとしたアツアツを食べないと、厳しいものがあります。

お店としてはサービスのつもりで、炒飯や焼きそばと一緒に持って来てくれたのだと思いますが、小龍包は最初のオードブルとして頼んで、小龍包を食べ終わってからメインディッシュを注文するか、もしくは逆にメインを食べ終わってから小龍包を注文した方が良いと思います。

ちなみに、以前に銀座の超有名な高級中華料理店へ行った時も小龍包を頼んだのですが、なんと登場した時点で、既にすべての小龍包の皮が破れていて、中身のスープがすべて流れ出てしまっていた苦い思い出があります・・・・。
「小龍包」や「春巻き」、「餃子」や「シュウマイ」のような「点心」(飲茶)類は、もっと大衆的で小さなお店で、厨房と客席の距離が近いようなお店で食べた方が美味しい物に出会う確率が高いような気がします。



(すべて完食)




↓続きあり






〜筑紫楼 恵比寿店その3〜




同上日 杏仁豆腐 500円  + 海鮮炒麺 1300円 (各別途サービス料10%)

最初に述べたとおり実はこの日は二人で訪問しています。
同行者は「海鮮焼そば」を注文しましたので、お互いに小皿でシェアして、「チャーハン」と「焼そば」の両方を半分ずつ頂きました。
以下は、その「海鮮焼そば」のレポートです。




「海鮮ヤキソバ」も、これまた「五目チャーハン」と同様にボリュームたっぷりです。特に大振りに切られた野菜類がドッサリですね。
二種類のカラシ系薬味が添えられます。

具は、エビ、イカ、ホタテ貝柱、袋茸、ギンナン、竹の子、白菜、ニンジン、小松菜などなど、これまたたっぷり乗っています。
具の中では、特に右上に見える大きなホタテ貝柱がミッチリと身肉が詰まっていて出色の美味しさでした。





食べてみますと、最初、塩味が「ピンッ」と立って感じられましたが、次第に野菜の淡い旨味が勢力を拡大して来て塩気を中和し、丁度良い塩梅になる感じになります。
片栗粉で付けられたトロミも、ダマや塊りなどは一切なく、粘度もベストです。
白菜がかなり多いですので、意外にサッパリとした味わいですが、ギンナンや袋茸などの丸い歯応えが、非常に良いアクセントになっています。

何より印象的だったのは、最後になって、麺がなくなり、具も減って来ますと、野菜や海鮮の旨味がたっぷりと流れ込んだ塩味のトロミのある「汁」(スープ)がお皿にたっぷりと残ります。
実はこのスープが、これまた、まるで上出来の「ホワイトクリームシチュー」のような・・・・濃厚な野菜の旨味とコクがたっぷりと溶け込んだ「まったり感」「まろやか感」のある美味しいものでした。
「一皿で二度美味しい」感覚で、一滴残らず飲み干してしまいました。





麺を見てみますと、中華鍋に多めの油を入れて、「焼いた」と言うよりも、むしろ「揚げた」感じの麺です。
そのため、「ゴワゴワ」「ワシワシ」とした硬さがありますが、パキパキと「折れる」ように食べる食感と、油揚げ麺のような独特な香ばしい風味があり、これはこれで美味しいです。
本格派中華料理店で「ヤキソバ」と言いますと、大抵こういうタイプの焼きそばが登場しますね。
おそらくは、たっぷりとかけられた「餡」に、麺の味や歯応えが埋もれる事がないよう、このような揚げヤキソバ風に仕上げるのでしょう。

先の「フカヒレスープ」や「五目チャーハン」の超絶な美味しさと比較してしまいますと、意外に「無難」にまとまっている印象も受けますが、よくよく味わえば全く「不満点」の一つさえも見つけられない、実に美味しい「海鮮焼そば」です。


また実は、後で気付いたのですが、先の五目チャーハンとこの海鮮ヤキソバですが、勘違いしてそれぞれ「1800円」と思っていました。
それでもこの「味」と「量」なら妥当以上の価格だと思っていたのですが、実は会計時に「1300円」だったことに気付いて、一層の割安感、かなりのお得感を持ちました。
ちなみに、会計時には10%のサービス料がかかりましたが、時間帯によってはかからないようです。





さて、いよいよラストのデザートです。
私は「杏仁豆腐」を注文し、同行者は「マンゴープリン」を注文しました。
ちなみに、こちらのお店の「杏仁豆腐」は、「フカヒレスープ」や「北京ダック」等と並んで、こちらのお店の「名物」になっているようです。

うーん・・・・杏仁豆腐の色が濃厚ですね。そして同時に、杏仁の香りが非常に豊かです。
この色合いと香りだけで、どれだけ「素材」を潤沢に使っているか・・・・容易に想像が付きます。赤いものは「クコの実」です。





スプーンですくって食べてみますと、最初に濃厚な「フレッシュ・ミルク」の芳醇な香りと味がやって来ます。
続いて「杏仁」のほろ苦い風味、そして最後にシロップの上品な甘さ・・・・が折り重なるようにやって来ます。
まさに三段階に及ぶ美味しさの波状攻撃、評判どおりの「絶品レベル」の美味しさです。

特に最初に舌に来る「ミルク感」と「杏仁風味」が濃厚で、ビビッドで、もの凄いインパクトです。
このミルク感は、まさしく「特濃ミルク」をコップにいっぱいにして飲むようであり、杏仁風味はローストしたアーモンドナッツを口いっぱいに頬張るが如き感覚です。

ちなみに、この「杏仁」の風味ですが、素人としては「ロースト・アーモンド」の風味をもっと上品にした感じに思えるのですが、農林水産省のHPなどを拝見しますと、実は杏仁豆腐の「杏仁」とは、中国北部山岳地帯を原産地とするバラ科の「アンズ」(杏)の「種子」(仁)なのだそうです。

舌触り的には、トロトロ、サクサクと極めて滑らかにとろけていて、あまり「寒天」で固めたような感じはないですね。
つまり、寒天でプリプリと弾むような感じではなく、緩めのゼラチンによってギリギリ固形化させている印象で、舌の上へ載せただけで、口中の温度と、自身の重さで、そのまま自然に「トロトローン・・・・」と滑らかにとろけ始める感じです。
それでいて流れ出て来る味わいや風味は非常に濃厚です。

おそらく「寒天」はほとんど使われておらず、ゼラチンと生クリームをメインに使っていると思しき「リッチ」感があり、「本物の素材感」と「プロの手作り感」の凝固体と言うイメージです。
また、練乳も使っているのかどうか・・・・ミルク感が強いので、どことなく、上質な「ミルクセーキ」の味わいを連想させられる気もします。

そして、たっぷりの甘い「スイート・シロップ感」があるのですが、見た目には液体のシロップはかかって見えません。
スプーンで杏仁豆腐をすくってみても、断面からシロップが滲み出てくることもありませんので、どうやらよほど上手に杏仁の中に一体化して成形されているようです。
どっしり、しっかりと「甘い」ですが、それが「無垢」で「上品」な甘さなので、全く嫌味がありません。
後口には、ほろ苦い杏仁風味と、デリケートな甘味が舌に残ります。

よくコンビニやスーパーで売られている杏仁豆腐を食べますと、歯応えはピトピトする安易な「寒天質」だけで、香りも味も非常に薄っぺらで、しかもやたらと薬臭かったりします。
トラックなどを使った流通過程での型崩れを防止するため、寒天を多用して固め、また、コスト削減のため安価な人工香料を使うので、そうなってしまうのでしょう。

それらと比較すれば、こちらの杏仁豆腐・・・・・薬臭さも絶無、異様な「ミルク・リッチ感」があります。
まさしく、これぞ「本物」の杏仁豆腐の美味しさ、初めて食べれば、「驚天動地の美味しさ」に思えるでしょう。


ちなみに、同行者も「マンゴープリン」を一口食べて・・・・しばし、「呆然」としていました。

私も、少しだけ同行者の「マンゴープリン」をもらって食べましたが、わずかスプーン一杯の中に、生のマンゴー果実の「数倍」にも及ぶ、フレッシュマンゴーの鮮烈な旨味が「ギュウギュウ」に凝縮されていて、その想像を絶するパンチのある美味しさに、度肝を抜かれてしまいました。

舌の上で、「マンゴー」の美味しさが、「ググ・・・」、「ググーン・・・・」、「ググググググーーーンンン・・・・・」と、何回にも分けて、何重にも、数倍にも、増幅しながら、成長しながら・・・・口中いっぱいに押し寄せ、あふれ返り、美味しさの波状攻撃を仕掛けて来ます。

こちらの「マンゴープリン」・・・・私も一口食べて、「呆然」としてしまいました・・・・・。

明らかに、生のマンゴー果実をそのまま食べるよりも、香りも旨味も、遥かに「鮮烈&濃厚」になっています。
うむむ・・・・・果たして一体、どのようなマジックなのでしょうか?
このような、想像の及ばない美味しさの食べ物が作れてしまうことに、こちらのお店のコックさんに対し、激しい「畏敬」の念を覚えてしまいます。





最後に無料サービスで提供されたホット「ジャスミン茶」です。
一口飲んでみますと、口中と鼻腔いっぱいに、フレッシュでフルーティなジャスミンの花の香りが、思い切り、咲き誇ります。

ジャスミンの香りが、食後の口の中をきれいにサッパリと洗い流してくれ、後口をリフレッシュしてくれます。

舌の上を、喉の奥を、通り過ぎていった、数々の食材達の美声を反芻しながら、ゆっくりとしたクールダウンの時間が流れます。





さて、食べ終わってお店を出ますと、すっかり薄暗い時間になっていました。たっぷり2時間以上も居た事になります。
建物の正面の一画に、緑の植木に囲まれたガーデンテラス席もあり、夏の夕方などは盛り上がりそうです。
また、ビルの左脇に、やや狭めですが3台ほどの客用駐車スペースがあります。



さて、最後に再び、食べ終えての感想ですが・・・・・・
正直、今回の「筑紫楼」への訪問で、「中華料理の魅力をすっかり見直した」と言う気持ちです。

今までも、それなりに有名な中華料理店で食べ歩いて来ましたが、いずれも「看板倒れ」「評判倒れ」と感じるお店が多く、「再訪したい」と思えるお店は極めて少なかったです。
結果として、ここしばらく、「中華料理」ジャンルのお店からは、すっかり足が遠のいていました。

それなのに今回、なぜこちらを訪問したかと言いますと、五年ほど前に食べたこちらのお店の「フカヒレ料理」の美味しさが、ずっと脳裏に焼き付いていたからです。
今回、お店をリニューアルしたと聞いて、どうなったのか気になり訪問してみたのですが、相変わらずの「美味しい絶品料理」に加え、以前とは比較にならないほど高級感のある瀟洒な造りになり、スタッフのサービスも随分と洗練されたものになっていました。

こちらのお店の絶品料理のイメージを語る時、「藍は藍より出でて、藍より青し」・・・・と言う諺が思い浮かびます。
過去、素材の旨味を生かし、ダイレクトに伝えてくれるお店は、今までもたくさん経験してきました。
しかし、こちらのお店の料理は・・・・・その遥か数段上を行く、極めて高度な技術を感じます。
つまり、素材の旨味を「そのまま」ではなく、「フレッシュ&ナチュラル」な美味しさのまま、数倍に「濃縮&凝縮」した形で伝えてくれるイメージであり、かつ、リーズナブルな良心価格で届けてくれる、数少ない「中華料理の名店」だと思います。

いかにも厨房内では「中華料理の英才教育」を受けたエリートコックさん達が、揺るがぬ自信を持って料理を作っている強い「信頼感」があります。
今の私にとっては、間違いなく、最もお気に入りの中華料理店です。


ただ、少々気になるのは・・・・・・ここ数年で、急速な「支店展開」をしていることです。
テナントの契約は資金があればいくらでも可能でしょうが、「本格中華」のお店であれば、厨房を任せられる優秀な調理人を育てるには、これはもう到底、「促成教育」では無理でしょう。やはり、「一流」のコックさんを育てるには相当の「歳月」が必要なのではないでしょうか。

さらに、今回、特に気になったのは、2006年10月から「筑紫樓 銀座店」がオープンするとの告知が店内に貼り紙されていたことです。
後日、筑紫樓のHPを拝見しましたが、銀座店は広々としたフロア面積と莫大な費用をかけたと思しき、かなりの絢爛豪華な店構えのようです。

銀座の地代の高さと客単価は間違いなく日本一ですから、おそらく、この「銀座店」は、まさしくお店としては「社運」をかけた出店と言えるでしょう。
しかし、そうなりますと新たに人材を募集したり育てたりするよりも・・・・ひょっとしたらですが、こちらの「恵比寿本店」から、特に腕の立つ「エリートコック」さんが相当の人数、銀座店へ移籍してしまう可能性もあるのではないでしょうか・・・・。

これらの心配が「杞憂」に過ぎず、こちらの「筑紫楼恵比寿本店」が、今日の素晴らしい「超絶美味」を、いつまでも、大切に守り続けてくれる事を願ってやみません。


なお、この日は上記以外に、他の「麺料理」等も食べています。
そのレポートは → こちら。



(すべて完食)











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