01ch グルメ食べ歩き
とん太
(東京都 豊島区)

店名 とんかつ とん太(とんた)
住所等 東京都豊島区高田3-17-8 【地図表示】
禁煙 タバコ完全禁煙
訪問日 2006年3月中旬 特ヒレかつ特選定食 1995円




〜トンカツとん太〜



2006年3月中旬 特ヒレかつ特選定食 1995円

今回は、都内でも屈指の「美味しいトンカツ店」との呼び声が高い、巷で評判の「とん太」(豊島区・高田馬場駅)さんを訪問してみました。
実際、インターネット上の「とんかつ系サイト」「グルメ系サイト」などを見る限り、こちらのお店を「絶賛」する記述が多数見受けられます。
しかも、その表現は「生涯最高」「感動する味」などの最上クラスの賛辞が惜しげもなく贈られているお店なのです。


 お店は新目白通り沿い

お店に到着しました
お店は高田馬場駅から徒歩4分ほど、神田川を渡り、新目白通りに面しています。


 落ち着いたシックな店構え

白い小振りのノレンと格子戸が「粋」な感じを醸します。
高田馬場と言うと学生相手のお店が多いですが、駅からやや離れることもあり、落ち着いた格調を感じさせる店構えです。


 営業時間と定休日

営業時間と定休日の表示です。
昼は割と短めで2時間のみの営業のようです。


 店内のカウンター席

店内は厨房を囲むようにL型のカウンター席、そして向かい側に小上がり席があります。
カウンター上には大きなお皿が並んでいるため、調理の手元が見えないのがちょっと残念です。


 小上がり席

小上がり席は二卓です。サービスメニューとして、「かつ丼」もあるようですね。
雰囲気的には、照明や調度品などを見る限り「和風」路線のようです。


 メニューの表

いわゆるトンカツ定食は、「特選定食」、「定食」、「お昼の定食」の3ランクに分かれています。

実はこちらのお店には3年ほど前にも一度訪問しています。
インターネットではこちらのお店の「特ロースかつ定食」を推す声が多いので、その時は「特ロース定食」を頂きました。
その時は、大いなる期待の元に訪れたのですが、初めて、「なるほど・・・トンカツにも、人それぞれの好みがあるのだな・・・」と教えられる体験になった覚えがあります。

私の「豚かつ」の好みは、以下のとおりです。

(1)ロースよりヒレ肉が好き。中学生の頃から、ずっとヒレ肉派です。
よく、肉の美味しさは「脂」にこそあるとして、淡白なヒレ肉よりも、脂の多いジューシーなロース肉を推奨する人がいます。
確かに豚肉を角煮やしゃぶしゃぶ等で食べると、その通りだと感じます。これらのように「お湯で煮る」場合は、脂感の少ないヒレ肉は確かに旨味が物足りないです。
ただし、肉を油で揚げる調理法であるトンカツの場合は、ロースの場合、脂に脂(油)を足すことになり、「食のバランス」における私的な好みとしては、脂感が強くなり過ぎる・・・・と感じてしまう事が多いです。
逆に脂の少ない「ヒレ」の場合、衣を付けて油で揚げる事で、まさにベストバランスの脂感が現出すると思っています。ゆえに、トンカツにおいては、今も昔も「ヒレ肉」派となっています。

(2)あまり熟成させ過ぎず、フレッシュな若い風味がある肉を、高温で揚げた、やや「がっしり」した肉質が好きです。
また、揚げ油はラードがメインで、衣はカリッとして多少焦げ臭がある位のもので、パン粉の厚みも肌理も中位で、溶き卵の層は薄い方が好きですね。

(3)豚の種類は、ズバリ「鹿児島黒豚」が好き。
よく運動する黒豚の赤身肉はサシが全く入らず、「がっつり」したやや乾燥気味の歯応えなうえ、旨味が非常に濃厚なので、まさに私の「理想のトンカツ肉」です。
やはり、基本的に「とんかつ」に対して、ジューシーな脂ではなく、「赤身の旨さ」を追求する人間のようです。


このような好みのため、3年前にこちらのお店を訪問した時の印象としては・・・・。
こちらのお店の「特ロースかつ」は、低〜中温揚げで、衣がやや厚く、何より「肉の歯応え」が非常に柔らかいので、その時は、「肉を食べている気がしない」と言うのが正直な感想でした。
サシが多めに入ったロース肉は、ちょっと圧力がかかるだけで、脂がとろけてしまうため・・・まるで「絹ごし豆腐」のような食感に感じられ、しかもその上下を厚めのサクサクした衣がサンドイッチしているので、一層、肉の存在感(歯応え)が判りづらく感じたのです。
ただ、一方で、確かに「豚カツ」に、とろける脂と肉のジューシーさを求める人達にとって、このとろけ具合と肉汁の多さが「絶品」として評価されるのもうなずけました。

私的には、特に「ロース」カツに対しては、赤身の「がっつり」したやや乾燥気味の歯応えを求めていた私にとって、ここでトンカツにおける「好み」と言う壁の存在を初めて知る事になりました。
ただ、その時に、「では、こちらのお店のヒレ肉はどうなのか?」と言う思いが頭をよぎり、以来、ずっと気になっていたのです。

なので今回は、「特ヒレ定食」をオーダーすることにしました。
いよいよ、3年間温めた念願が叶ったと言うところでしょうか。

オーダーした時に「豚汁」「しじみ汁」「ワカメ汁」のいずれか選べますと言われたので、「しじみ汁」を選択しました。


 メニューの裏

「カツ類」以外に、「魚介類定食」もあります。
ちなみに店内禁煙の表示があります。


 季節の味「かきフライ」なども

さらに、「季節の味」として「かきフライ定食」などが貼り出されていました。
「かきフライ」は追加もできるようですね。


 卓上の調味料群

卓上の調味料群です。
「塩」は二種類が用意されています。ベトナム産の天日自然海塩と中国産の天然塩「鳳凰」だそうです。
中国産の塩は岩塩のような小さな塊りが「ミル」に入っていて、使う時に挽くようになっています。
トンカツが登場するまで「ゴマ」を擂って待ちます。ちなみに白ゴマと黒ゴマのブレンドになっています。

カウンター越しに「ピチピチ、ピチピチ・・・・」と油が小さく弾ける繊細な音が聞こえてきます。
音から判断すると、どちらかといえば低温で揚げているようです。



 「特ヒレかつ特選定食」 1995円

さて、いよいよ「特ヒレ特選定食」の登場です。
ちなみにオーダーしてから登場まで、ジャスト20分でした。

こちらのお店の「特ヒレ」は「棒状」なんですね。油取りの紙が敷かれています。
ご飯の量はさほど多くありませんが、サイドを固める香の物が充実しています。



 粗めのパン粉によるキツネ色の衣

まず「衣」を見ると、パン粉が不均一で粗めです。おそらく自家製なのでしょう。
花が咲いたように、ふわふわと・・・パン粉を厚めにまとっています。

やや濃い目の黄金色から察するに「中温」で揚げたようにも見えますが、衣の先端の色が濃いことや部分的にやや色むらがあることから、ひょっとして低温で揚げた後に、高温の油に通した感じもします。



 「特ヒレ肉」の断面

二切れほど横にして断面を見てみます。
肉はしっとりとしていて、外側よりも、中心付近にしっとりと肉汁が集まっています。見事な揚げ方ですね。

ただ、左側の肉の表面が少々つぶれ気味なのが少し気になります。やや包丁で押しつぶし気味に切った感じです。
肉の断面の繊維がつぶれてしまうと、舌触りに非常に敏感に影響しますので、右側の肉の断面位に滑らかに切ってあると良いと思います。
パン粉はやはり厚めですが、衣が厚いと言うよりも、目の粗いパン粉が立体的にたくさん付けられている印象です。溶き卵の層は普通です。

ちなみに店内の説明書きに「最初は何もつけず、次は塩で・・・」と言うような食べ方のアドバイスが貼られています。

それではと、まずは何も付けずに一口食べてみました・・・。

まず、「衣」はふんわりと膨らむように空気を抱き込んで立体的に衣が付いているうえ、「サクサク・・・」と歯触りが非常に「軽い」です。何と言うか・・・冬に着る「ダウンジャケット」の軽くて柔らかな着心地を連想するような印象です。
ただ、パン粉が「立っている」感じなので、箸でつかんだり、口に入れる際に、「パラパラ・・・」と周囲にこぼれやすい感じです。

肉質は・・・歯を入れた時の「ふぅわり・・・」とする感触が何とも言えず味覚中枢を刺激します。
口の中で一度、肉が「フワッッ」と膨らんでから、そのまま繊維がきれいに分離し、自然にほぐれてゆく感じがあり・・・・何とも心地良い口解け感がある美味しさです。
それでいて、柔らかい赤身特有の歯応えもあり、とろけて液状化してしまうような脂身部分がほとんどないこともあって、「肉を噛んでいる」という実感もあります。
全体として絶妙な噛み応えときちんとした中量級の量感を持っています。

そして肉の繊維の「肌理」(きめ)が非常に細やかで、舌触りがものすごく「滑らか」なのが印象的です。
当然ですがスジや歯応えのムラが全くなく、全体が「均質に柔らかい」です。

とても「ふっくら」でありながら、実に「しっとり」・・・と言う味わいです。
そして、結構、肉を「熟成」させている感じで、フレッシュな肉の風味のパンチが少ない分、じっくりと奥深い複雑な味わいになっています。

ちなみに、よく、牛肉や豚肉は、数日間低温で寝かせて「熟成」させると、肉のタンパク質が分解して旨味の元であるアミノ酸が増えるので、より美味しくなると言われています。人によっては「肉は腐る直前が一番美味しい」と言う人もいます。
しかし、食べ物はやはり十人十色です。実際は食べ手の好みに負うところが大きいでしょう。

果物でもバナナなどは、買ってから10日位過ぎてシュガースポットと言う黒い斑点が全体を覆い尽くし、果肉がとろけるほど柔らかくなったものが美味しいと言われますが、一方で青みが少し残ったようなフレッシュな硬めのバナナが好きだと言う人もいます。

私も、どちらかと言えば、肉もバナナも、あまり熟成させ過ぎない状態で、やはりフレッシュな「鮮度」を感じられる位の方が美味しいと感じます。


さて、こちらのお店の「ヒレカツ」ですが、「サクサク」した衣と、「ふっくら」「しっとり」とした肉質のコントラストがお見事で、何も付けずに食べても十分に美味しく食べられました。
ただ、衣の「歯触り」は非常に優しく軽快なのに、カツを一切れ食べ終わった後の、後口の段階になると、油分がちょっとクドく口に残る感じがあります。

尻上がりの「キレ」がない感じで、ややベタッとした尾を引く後口です。いわゆる「ウェット」な後口なのです。
そして、油からは高温の「揚げ油」独特の・・・・あのラードをフライパンで乾煎りした時のような芳ばしい動物性の香ばしい風味があまり漂って来ません。

ここで、ふと気付いたのですが・・・・おそらくは、こちらお店の揚げ油は、動物性の「ラード」ではなく、「植物油」をメインにして使っている気がしました。
高熱で溶かした豚脂(ラード)でトンカツを揚げると、融点が高いせいか、後口が「カラッ」とした動物性の脂独特のドライな衣になります。
逆に植物油は融点が低いので、いつまでも液体のままというのが「ウェット」な後口につながっているのだと思います。

ただ、「熱されたラード」の香ばしい風味・・・あのラードの強い匂いが苦手な人もいると思いますし、ラードは胸焼けや胃モタレをしてしまうと言う人もいるようですので、クセのない植物油特有の穏やかでしっとりとした優しい風味は、安心して幅広い層に受け入れられることがメリットとも言えます。
また、低温〜中温揚げですので、衣に「焦げ臭さ」と言うものが絶無ですので、万人向けの上品で優しい風味と言えるでしょう。


二切れ目からは塩で食べてみます。最初は、ベトナムの塩で食べました。

うーん、やはり塩が加わると、味わいが「くっきり」します。味の伝わるスピードがアップすると言うか、全体に勢いが付く感じです。
また、絶妙な塩味が加わることで、唾液の分泌も促進され、ご飯も欲しくなって来ます。やはり、「食事」として考えると、「塩」を付けた方が、食が進みますし、箸の動きも活発になります。

ちなみに二種類の塩を一種類ずつ使ってみたのですが、双方を比べると・・・・ベトナムの塩は「優しくて穏やか、繊細」な感じです。一方の中国の塩は「鋭利でキレと力がある」感じです。
どちらかと言えば中国の塩の方が気に入りました。

また、ウスターソースを使って、一切れ食べてみましたが、ややソースの味が勝ち過ぎてしまう傾向があり、肝心の肉の味が判りづらくなってしまう気がします。
また、もともと肉と衣の味だけで十分に美味しいので、ソースの味の居所がない感じです。
もっと安い肉のカツであれば、むしろソースの味付けが加わることで、ちょうど良い味の塩梅になるとは思うのですが・・・。

さらに、擂ったゴマに付けて食べてみました。
ゴマの風味が加わって美味しいです。ただ、目先を変える意味では良いですが、ゴマ風味でちょっとクドくなるので、一切れを試しただけで、後はすべて塩で食べました。



 豪華な「香の物」

「香の物」が、なかなか豪華です。
少量ですが、ゴボウが入るのは珍しいですね。
食べてみると、すべてが「ひんやり」と冷やされていて、かつ、水分が多く、トンカツの脇役として最適な仕様です。
しかも、すべて「厚切り」にされているので、これらを噛むことで口中の油を拭い去り、洗い流し、サッパリと舌をリセットさせてくれます。箸休めとして、まさにベストな切り方ですね。さすがだと思います。

ご飯はやや柔らかめの炊き加減です。最初の水加減を多少多めにしている印象です。
口に入れると、ご飯が「ふわり・・・」と軟着陸して来る優しい感じがありますが、同時に「粘り」がやや強めに出ている炊き上がりで、全体的に、やや「モッタリ」とするような食感に思えます。
水分が多めな分、ツヤツヤとしていますが、米自体の味としては、旨味や甘味、香りは平均的に感じられ、意外にあっさりとした味です。

またまた「好み」の話になってしまいますが、トンカツ定食において、ご飯の食味の占めるウェイトは想像以上に大きいと思います。
私的には、トンカツの相手役としてのご飯は、少し硬めでご飯粒が「ピンッ」と立った感じのドライ気味の炊き上りが好みです。

キャベツは水らさらされていて、水気がありシャリシャリする感じの歯応えです。
水にさらしている分、キャベツの濃い味はやや抜けていますが、そのぶん上品な味になっており、キャベツ本来の味を味わうと言うよりも、口中の油っぽさを洗い流す「口直し役」として位置付けられている印象です。

しじみ汁は、赤出汁のような薄めのコク、口当たりがあっさりとしたもので、トンカツとの相性を考慮しているようです。たまたまなのか、蜆(しじみ)の量はやや少なめに思えました。

食べ終わってみると、「ヒレ肉」+「植物油」らしく、あっさりとした腹心地で、クセがないと言うか、上品な旨味に満ちています。
加えて、「低〜中温揚げ」+「柔らかめのご飯」+「上品なキャベツ」+「あっさりした汁」・・・・などから考えますと、こちらのお店のトンカツは、ガツガツと豪快に食べると言うよりも、上品で「しとやかに」ゆっくりと食べる路線を標榜している気がします。

ちなみに、お店を出てから、ふとお店の横に積まれていた「一斗缶」が目に止まりました。
ラベルを見てみると・・・「やはり」と言うか・・・植物油(コーンサラダ油)の空き缶でした。
ただ、他にもラベルのない缶がいくつかありましたので、ラードもブレンドして使っているかも知れません。



(すべて完食)










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