01ch グルメ食べ歩き
すみた
(東京都 北区)

店名 讃岐手打ちうどん すみた(すみた)
住所等 東京都北区中十条2-5-11 【地図表示】
禁煙 タバコ可(灰皿あり)
訪問日 2006年1月下旬 かしわざる 800円 
2006年8月上旬 釜あげ 700円  + 牛すじ(2本) 300円
2006年12月中旬 おろしぶっかけ(冷) 650円




〜讃岐饂飩 すみた その1〜



2006年1月下旬 かしわざる 800円 

今回は、都内の「讃岐手打ちうどん店」の中でも「一、二を争う美味さ」「比類なし」と巷で評判の「手打うどん すみた」(北区・東十条駅or十条駅)さんを訪問してみました。

1999年開店。「うどん」系のグルメサイトでは必ずと言って良いほど名前が挙がり、絶賛されている讃岐ウドンの有名店です。
こちらのご主人は本場香川の名店「源内」で修行されたそうです。私も一度だけ本場香川に讃岐手打ちウドンを食べに行った事があります。

お店は、JR宇都宮線の東十条駅の南口から徒歩3分ほど、JR埼京線の十条駅北口からも同じ位の距離です。




東十条駅の南口から徒歩1分ほどの交差点。ここが十条中央商店街の入口です。
「すみた」は、この商店街のほぼ中央付近に位置しています。




この商店街通りは、この先に演芸場があるので「演芸通り」とも呼ばれているようです。
左に曲がる小道がある角地にお店はあります。




ヒサシには「讃岐手打ちうどん」、提灯には「あげたて天ぷら」と書かれています。
うーん・・・白と紺のツートーンカラーでまとめられたシンプルで渋い店構えですね。さほど気取らず、ぱっと見た感じでは、地元御用達の町角のうどん屋さんと言う印象です。




店頭に掛けられた「当店人気メニュー」の札。
ミニ丼セットなどもあるようですね。




ドアに貼られたメニュー表です。
「すみた」はとてもメニュー豊富ですが、中でも「かしわざる」を推す声が多いことから、私も「かしわざる」をオーダーしてみます。

「かしわ」とは鶏肉のこと、「ざる」はざるうどんの意味です。




店頭に貼られた営業時間と定休日の案内です。
土日は、昼のみの営業になるようです。




入店すると、お店はL型カウンターと小卓2つで、意外に狭めです。
特にカウンターの奥の席は、体格の良い人などが座るには、多少窮屈に感じられるかもしれません。

カウンター上にオデンを煮込んでいる鍋が見えます。当然ですが、「讃岐おでん」だそうです。





さて、注文後、意外に早く「かしわざる」が登場しました。

ふーむ・・・既に見た目からして、「只者ではない」麺ですね。
瑞々しく、太く、長く、堂々として豊かな量感を感じさせるオーラのある麺です。

箸で麺をつかむと、「ずっしり・・・」とした重みと共に、麺が「ニュルニュル」と活発な前後の動きをする手応えがあります。
断面が真四角の太い麺ですが、良く見ると麺の裁断面に「地層」のようなものが見て取れます。

おそらく、麺生地を何回も、しっかりと重ねて伸ばす工程を繰り返すため、このような「層」が生まれるのでしょう。
何層にも渡って、半透明なゼリー状の部分と白い不透明部分が交錯し、とてもきれいな断面です。

まずは、汁に浸けず麺だけを食べてみました。


「ツルツル、スルーリ・・・・」

表面はヌルヌルと潤滑剤を塗ったような、やや「ぬめる」感じで、これほど太いのに抵抗なくスルリと口に入って来ます。
舌触りの第一印象は「非常になめらか」だと言うことです。


噛み締めてみると・・・・

「モッチ、モッチ、モッチ・・・・」

歯応えがとても豊かで、伝わって来るコシの力量が凄いです。すっごく「入念に」・・・「練り込んでいる」コシです。
な、なるほど・・・・何とも見事な「グルテン」組織体。

低加水の麺のようなゴツゴツとする武骨な硬さなのではなく、「多加水」で「非常にしなやか」なのに「素晴らしく強靭」「破格の粘り」・・・と言うイメージです。
つまり、やたらと頑固で武骨なコシを売りにしているのではありません。
ただ硬いとか、歯を跳ね返すとか、なかなか噛み切れないとか・・・・こけおどしの硬さや、ハッタリのコシではありません。
いたずらに、無闇に「がっつり」した麺とは全くレベルの違う、高次元の仕上がりです。

うーん・・・・この歯応え、口当たりを、もし、何かに例えるとしたら・・・・「水あめ」の歯応えに似ている気がします。
スーパーなどで売られている大瓶に入った水あめをスプーンで練って取り出し、口にほおばった時の・・・あの歯をゆっくりと包み込むような・・・豊かな粘り気と、どこまでも滑らかに「モッチョ〜リ」とする食感です。

もしくは・・・・うーん、一流マラソン選手の「筋肉」のイメージでしょうか・・・・。
一流マラソン選手の筋肉に触った人は、その筋肉の「しなやかさ」と「柔らかさ」に驚くと言います。
つまり、「ボディビルダー」の筋肉のようなガチガチに硬い筋肉ではなく、もっとしなやかでふくよかで、強靭だけれど柔軟で、筋力(=コシ)を長く維持する持続力があり、
まさに長時間のロードワーク(=麺打ち)でこそ、誕生する限りなく鍛えられた麺・・・・と言う印象です。

そして驚くのは、何より、このモッチモッチ感が、噛んでも噛んでも、いつまでも続き、なかなか終わらないことです。
15〜20回位噛んだ後でも、最初の一口目と食感がほとんど変わらないのです。

普段食べているうどんは硬めのコシがあったとしても、4〜5回も噛めば、咀嚼されて歯応えが弱くなり、細かく柔らかくこなれて、自然と喉の奥へ飲み込まれて姿を消してしまいます。
しかし、こちらのうどんは、「モッチ、モッチ、モッチ・・・・」が全く弱まらず、あえて意識的に飲み込まない限り、いつまでも口中に存在し続けるのには驚きました。

やはり、小麦粉のグルテンの結束力の強さ&豊かさが半端ではない感じです。
そして、口中にある間は、常に口中を「潤滑」「対流」するように、見事な「円」の動きで、麺が常に「グルグル」と舌の上を動き回っています。
決して、「淀まず」、「立ち止まらず」、常に流れるように「円く」動き、時には勢い余って、口からあふれ出してしまうかのような・・・・実に「ビビッド」な動き方です。

まさに「非凡」なコシと動きを持つ素晴らしい麺です。
こういった「豊かで艶かしい」コシの麺は機械打ちでは絶対に作れない麺です。
果たして、小麦粉と水とわずかな塩を捏ねるだけで・・・・・こういった歯応えの食べ物を作り出してしまう「業」に、正直、畏敬の念を覚えてしまいます。

しかも、コシのある麺と言うと、大抵は強いコシ出すために、かなり多めの塩を投入し、麺だけを食べてみるとその過剰な「しょっぱさ」に驚く事があります。
実際、麺のコシの強さで知られる讃岐うどんは、他のご当地うどんと比較すると含まれている塩分量は多めであると、以前にテレビで紹介されていた事があります。
しかし、こちらの麺はほとんど塩気が感じられず、小麦の旨味が非常に心地よい美味しさであり、粉の配合と麺打ちの技術だけで、見事にこの非凡な「コシ」を出している事が判ります。

「モッチ、モッチ、モッチ・・・・」と噛んでいて、途中で飲み込もうかとも思うのですが、ついついもったいなくて、いつまでも噛んでいたくなります。
確かに、世の多くの讃岐うどんフリークを「虜」(とりこ)にしてしまう麺だと言えるでしょう。





いよいよ「ツユ」に浸けて食べてみます。

「ズルズル・・・・モッチモッチ、モッチモッチ・・・・モッチモッチ、モッチモッチ・・・・・。」

いやはや、これまたツユに浸けても素晴らしく美味しいです。


讃岐うどんと言うと、関東人の私には大抵「ツユ」が甘すぎて、さらに醤油の風味が弱く、物足りなさを感じる事が多いのですが、こちらのツユは、さほど過剰な甘味が感じられないのがいいです。
味はやや薄口、出汁はイリコがほんのりと上品に効いていて、実に品があります。

また、麺に振りかけた「レモン」のフレッシュな酸味が、ツユに溶け込みきれいな味の輪郭を描いて、非常に爽やか。とても良く合っています。
ベタベタするような甘さや、化学調味料のようなクドさとは無縁の、とても「優美」な美味しいツユです。

「かしわ天」は、揚げ立て、熱々で、肉汁、旨味ともにたっぷりで、とてもスパイシーで、これまた実に美味しいです。
衣は「サクサク」と軽く、芳ばしく、クリスピーで、身は柔らかく「ジュワッ」と肉汁がほとばしって素晴らしくジューシー・・・・と言う、まさに理想の揚げ方ですね。
食べていると、柔らかで肌理の細かい鶏肉が「ネットリ・・・」と、舌に「絡み付いてくる」ほど、ふくよかで柔らか、肉厚な感じがあります。



さて・・・・食べ終えてみると、ツユもかしわ天も素晴らしいですが、やはり何よりも「手打ち麺」の「非凡さ」「絶品さ」には舌を巻いてしまいました。

普段食べているうどんとは、「確かに違う・・・」、そして・・・「あまりにも大きく違う・・・」と言う感想です。
「今日はぜひ本格派の讃岐うどんを食べたい」と思った時には、迷わず訪問してみて損はないと思います。


ただ、その際は・・・・食べる側もある程度、「気構え」や「心の準備」が必要な気がします。
つまり、「昼は気軽にうどんでも・・・・」と言うような感じではなく、きちんと腰を深く据えて食べるべき「手打ち饂飩」(うどん)であるように思います。

また、麺を噛み砕いても、小麦粉の良い香りが「フワァ〜〜」と香り立つ感じは少なく、良く練り込まれた麺は「粉っぽくなくなる」と言うセオリー通りの食味でもあります。
想像を超えてグルテンが豊かなので、「モッチモッチ」と非常に良く「粘る&伸びる」感じがあり、もっと田舎風の「すいとん」のような粉臭くて、簡単にプツッと切れる麺が好きだと言う方には、ちょっと「コシの力量」が豊か過ぎると感じられるかも知れません。
また、ツユも、醤油のかえしが黒々と強く効いたカツオ風味の「関東風」のツユではありませんので、普段、食べている関東うどんのツユとは一線を画しています。


いずれにしても、客側も、こちらのお店が本格派&正統派の「讃岐手打ちうどん」のお店なのだと言うことを、良く認識したうえで訪問するべきだと思います。



(すべて完食)




↓続きあり






〜讃岐饂飩 すみた その2〜




2006年8月上旬 釜あげ 700円  + 牛すじ(2本) 300円

八月の灼熱の太陽が照り付ける真夏の正午・・・・。
都内で「讃岐うどん」と言えば・・・・真っ先に名前の挙がる超人気実力店「すみた」さんへ再び訪問してみました。

今回は、二名で伺い、初めて「讃岐おでん」も食べてみました。
とは言っても「牛スジ」一品だけですが・・・・。





私は、一度だけ本場香川に讃岐手打うどんを食べに行った事がありますが、その時に不思議に思ったのは、どこのうどん屋さんへ入っても、ほぼ必ず「おでん」が置かれていることです。
「うどん」と「おでん」に、どのような関係があるのか良く判りませんが、寒い冬だけでなく、暑い真夏でも、一年中、アツアツの「おでん」が置かれているようです。
「讃岐うどん」と並んで、「讃岐おでん」もまた、香川の人達の「ソウルフード」なのかも知れません。

二人で訪問しましたので、「牛筋」を二本注文しました。
ちなみに、お皿に添えられた「からし」は、関東のおでんに良く添えられる「和からし」ではなく、讃岐おでんに定番の「からし酢味噌」です。
本場の讃岐では、おでんにこの「からし酢味噌」をたっぷりと付けて食べるそうです。関東でもコンニャク田楽などに、この「からし酢味噌」が塗って出される事がありますね。

香川県には、「讃岐白味噌」という甘口の白味噌があるそうで、その讃岐白味噌を使ったやや甘味のある「カラシ酢味噌」が特徴だそうです。





さて、さっそく「牛すじおでん」を頂きます。

牛すじをパクリと口に入れて、串から引き抜いた途端、「ホロホロ・・・」と、口中で、牛すじ肉が柔らかく分解し、ほぐれてしまいます。
普段頂く「牛スジ」と言いますと、もっと「クニクニ」と歯に粘る食感が多いですが、こちらのお店は非常に「ふっくら」「ホッコリ」としていて柔らかく、「サックリ・・・」と軽く歯が通ります。
噛んでみますと、「トロトロ」「モッチリ」とする粘性が豊かで、まさに「全身ゼラチン質」と言う感じに加え、肉汁とダシが渾然一体となって口中へあふれ出し、どこまでも深くて濃厚な旨味の宝庫・・・・と言う印象です。

ダシ汁はやや甘口で、牛肉に非常に良く染み込んでおり、むしろ味付けが割と「濃い目」に感じられるほどですが、決して濃いだけの単調な味わいではなく、注意深く食べてみて驚いたのは、旨味が「一過性」「単層的」ではないことです。
最初に、「ギュギュ〜」と旨味の濃縮された「ダシ」の美味しさを感じ・・・・十数秒もしますと、「ホクホク」とする「牛肉の赤身」の美味しさへとバトンがタッチされ、続いてさらに十数秒後、「コッテリ・・・・」とする「牛の脂」の美味しさを感じ、いよいよ最後に牛すじを飲み込む頃には・・・・「トロトロ&ネトネト」とする「ゼラチン」(コラーゲン)の美味しさを感じます。
この感覚は・・・・まさしく、「美味の四段ロケット」ですね。一口ごとに、この四回に及ぶ美味しさの「波状攻撃」の洗礼を受ける事になります。

いやはや・・・・さすがは「すみた」のおでん、「絶品うどん」同様に牛すじオデンもまた「非凡」なる美味しさです。
特に最後の「ゼラチン感」はパワフルで、まさに「接着剤」のような「ピトピト」「ネトネト」とする強力な「粘着性」で、口を楽しませてくれます。
実際、「楽器」や「木像」や「家具」などの木工品の接着に良く使われる「膠」(にかわ)は、実は動物や魚の皮や骨などのゼラチン(コラーゲン)を抽出し濃縮させた物ですので、あながち「接着剤」と言う表現も大袈裟ではないでしょう。

また、途中から「辛子酢味噌」を使ってみましたが、このカラシはたっぷり付けても「ジワッ・・・・」とマスタード系の風味がやって来る程度で、ほとんど辛くありません。酢味噌の風味も控えめでした。
ちなみに、「関東おでん」では、通常は「和カラシ」が添えられますね。

この「和カラシ」は、鼻に「ツーンッ」と来る揮発性の非常にパンチのある強い辛味が特徴で、オデンの味を引き締めるのに一役買っています。
ただ、うっかり付けすぎると辛すぎて鼻の奥が痛くなり、オデンの味も消し飛んで、風味を損ねてしまいますが、こちらの「辛子酢味噌」は、そのような事もなく、もっと「ゆったり」とした優しい味わいです。





さて、今回の「うどん」は色々と迷いに迷った末、結局、「釜あげ」を注文させて頂きました。
8月の真夏に、わざわざ「熱いうどん」とは・・・・・とも思いましたが、やはり、本格派「讃岐うどん」と言うと、どうしてもこの「釜上げうどん」は外せないイメージがあるのです。
私が初めて「釜あげうどん」を食べたのが、香川の「讃岐うどんツアー」の最中だったから・・・・と言う事も影響していると思います。

ちなみに、「釜揚げうどん」とは、読んで字の如く、茹で上げたうどんを茹で湯とともに、茹で釜からそのまま丼へと盛り付けたものです。
そのため、一緒に丼に注がれた湯は、うどんの茹で汁が混じり、やや白濁した状態です。
ただ、ラーメンとは違って「カンスイ」が使われていませんので、茹で湯からは何か「しけった」ような嫌な臭いが漂うと言うことは一切ありません。
むしろ、茹で汁からは馥郁たる湯気が立ち昇り、周囲一帯には小麦粉の清々しい香りがあふれ返ります。

また、うどん自体も一度も冷水で締められないまま提供されますので、冷たい水にさらして、うどんを「キリリッ」と引き締めることができません。
そのため、うどんの「コシ」に関しての実力が露わになり、一切のゴマカシが効かないと言う・・・・打ち手にとってはシビアな「うどん」でもあります。





さて、まずは「うどん」を箸ですくい、
ツユには浸けずに、そのまま一口すすってみますと・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・


おぉ、お、思わず・・・・・「卒倒」・・・・・しそうになりました。



昇り立つアツアツの湯気の中に、「幻影」の如く現れた神々しい「うどん」の姿、
私の舌が、その未知なる衝撃の食感と「邂逅」をした刹那・・・・・

一瞬にして、「ゾワゾワゾワ・・・・」と、鳥肌が立ち、全身の毛が逆立つ感覚に襲われます。
同時に私の背筋を、熱い「電流」が走り、脳天へと突き抜けて行きました・・・・。

その後の数秒間は、まさしく「茫然自失・・・・」、そのあまりにも桁違いの美味しさに、私の思考回路が全く追いつけません。

この、あまりにも「幻想的」なすすり心地・・・・「夢心地」の舌触り・・・・。

過去の経験値から言えば・・・・「あり得ないはず」・・・・の「食感」・・・・・・です。

まるで、「この世の物とは思えない陶酔の食味」・・・・・・。
まさしく、「未知との遭遇」です。


箸で「うどん」を持ち上げると、湯気と小麦粉の香りが一斉に立ち昇る中、
そのすすり心地は、「ホワワワワワァ・・・・ホゥ〜・・・・・・」と、まさしく「小麦粉の咆哮」(ほうこう)の如き・・・・めくるめく、「狂おしいほど」の「幽玄」なる味わい・・・・。
冷水締めの入らないアツアツの「釜あげ」ならではの、コシの「ふくよかさ」&「緩やかさ」とともに、熱で活性化した小麦粉の味と香りが、口中いっぱいにあふれ返り、炸裂します。

その潤沢な表面は、まるでビロードにくるまれたようにものすごく摩擦係数が低くなっていて、すすればすすった分だけ、唇、舌の上、そしてストレートに喉の奥にまで一気に「滑り込んで来る」比類のない滑空感です。
この「すすり心地」の前には、誰もが「言葉を失う」ことでしょう。「うまい」のはもちろん、物理的な「絶頂感」「エクスタシー」に、極めて近いものがあります・・・・。

また、噛んでみれば、これまた小麦の風味が口中いっぱいに小爆発する感じで、その膨れ上がった小麦の風味がじんわりと鼻腔へ抜けてゆくさまは・・・・まさしく「忘我」の境地です。
熱々の「釜あげ」だからこそ、「味」も「香り」も「コシ」も・・・・ここまで見事なほどに「活性化」しているのでしょう。

私の口中では、
小麦粉の「香り」が、「ヴェスヴィオ火山」の巨大噴火の如く、無限の高さに「湧き立ち」・・・・・
小麦粉の「旨味&甘味」が、大銀河「マゼラン星雲」の如く、桁違いの質量を持って「渦巻く」・・・・・
まさに、美味しさの「口中ビッグ・バン」です。

いやはや・・・・私はまるで、「歴史的瞬間」の現場に立ち会っているかのような、畏れ多い心境になって来ました・・・・。

生まれて以来、間違いなく初めて味わった、究極のうどんの「理想形」。
一度でも食べれば鮮明に心に焼き付いてしまう味・・・・・はっきり言って「神域」です。





一口、また一口、すするたびに、打ちのめされる、ノックアウトされます。
この「うどん」から受ける衝撃的な感覚は・・・・「前例がない」&「比類がない」ので、この感覚を「例えようがない」「表現の言葉がない」と言うのが正確なところですが、
もし、敢えて言葉を探すとしたら・・・・言うなれば・・・・「活きどじょうの踊り食い」ならぬ、アツアツ「活きうどんの踊り食い」と言うイメージでしょうか・・・・。

本当は、もっと遥かに上品で、「神々しい味」なのですが、残念ながら他に上手な表現の言葉が見つかりませんでした・・・・。

表面はヌルヌルと潤滑剤を塗ったような、やや「ぬめる」感じで、摩擦係数がゼロになったかの如く、ともかく「恐ろしいほどに滑らか」です。
「ユルゥ、ユルーン・・・・」と、唇の上を究極的に「なまめかしく」通り過ぎて行った後、口中に入った「うどん」は、常に口中を「潤滑」「対流」するように、見事な「円」の動きで、麺が常に「グルグル」と、縦横無尽に、生き生きと舌の上を動き回っています。
決して「淀まず」、絶対に「立ち止まらず」、常に「流れる」ように・・・・・とても活発に、実に生き生きと、本当に楽しそうに動き回り、実に伸び伸びと泳ぎ回っています。

そのグルグルと動き回る「うどん」を歯で押さえ付け、噛み締めると「ムッチョ・・・・ムッチョリ・・・・」と、柔らかめの「水あめ」のように歯を包み込む無類の「歯応え&噛み心地」が現出します。
さすが「すみた」の手打ちうどん、やはり、小麦粉のグルテンの結束力の強さ&豊かさが半端ではない感じですが、それでも、冷水締めの入る「ざるうどん」などから比較しますと、かなりコシが「ゆったり」としていて、「ふくよか」な歯応えですね。
以前に食べた、強靭でよく粘る「ざるうどん」のコシも非常に素晴らしかったですが、今回の「釜揚げうどん」の・・・・どこかしら「幼くて」、「ナイーブ」な・・・・優しいコシも、類まれなる「絶品」ぶりであり、猛烈に気に入ってしまいました。

ちなみに、本場「讃岐」では「うどん」はあまり噛まずに、ツルンツルンと「飲み込む」ように食べる人が多いと言うことです。
つまり、あまり細かく噛み砕かずに、長いままのうどんの究極的に滑らかな「ノド越し」と「量感」を楽しむタイプの食べ方なのでしょう。

実際、今回の「釜あげ」は、まさしく、ズバリ、そう言う食べ方がしっくりと来ます。
もちろん、良く噛んでも、抜群に美味しいですが・・・・。





「ホワホワ・・・・」と立ち昇る白い湯気の中に、音もなく「スーーーッ・・・・」と、現れる、ゆっくりと姿を現す、幾筋かの白いうどん・・・・。
うーん・・・・何と幻想的な「立ち姿」でしょう。

どこまでも、滑らかで・・・・無垢で・・・・純白で・・・・・。
まっさらで、ピュアな、美しい、穢(けが)れなき味わい・・・・・。

この美味しさを、もし何かのイメージに例えるとしたら・・・・「バージン・スノー」もしくは「アスピリン・スノー」に包まれた・・・・一面に真っ白な「冬の雪山」のイメージでしょうか。
色の純白さに加え、この・・・・非常に「淡い」「デリケート」な「ベルベット・タッチ」の舌触りが、「粉雪」もしくは「淡雪」を連想させるのです。

別な言い方で例えますと、この「絶品うどん」の「ホンワリ・・・・」とする柔らかい舌触りの「心地良さ」は、柔らかな「高級シルクのパジャマ」を着て・・・・ハンガリー産の超極上「羽毛ふとん」にくるまった暖かな寝心地・・・・・を想像してしまいます。
それほどに、「夢心地・・・・」の超絶の舌触りなのです。今まで持っていた「手打うどん」への常識が、轟音を立てて崩れてゆく・・・・・とてつもない感動の嵐を体験しました。

これだけ、うどんの持つ「小麦の美味しさ」がピュア&ストレートに堪能できるのは、「ツユ」や「薬味」に、「うどん」の風味を邪魔されないからでしょう。
これがもし、汁に浸った「かけうどん」ですと、個人的には麺がスープの存在に埋もれてしまい、魅力が若干消されてしまうような気がします。それほどに、「麺」そのものが美味いのです。

また、「熱々」だからこそ、「味」も「香り」も「コシ」も・・・・ここまで見事なほどに「活性化」しているのですね。
ラーメン店などで食べる「つけ麺」の場合は、熱々の「あつもり」よりも、冷たい「つけ麺」の方が、小麦粉の風味が落ち着いて楽しめるのですが、なぜか「うどん」の場合は全く逆に感じられます。
おそらくは、「うどん」には「カンスイ」が使われていないからでしょう。「中華麺」の場合は、アツアツ&麺単体の状態ですと、小麦風味と一緒に「カンスイ」の独特の臭いが湧き立って感じられてしまい、到底「つけ汁」の助けなくしては、アツアツ麺単体では食べる気にはなれません。

こう考えますと、「熱々うどん」&「ツユ別」&「薬味別」と言う条件が揃ってこそ生まれる・・・・この究極の食味は、名店「すみた」の数あるメニューの中でも・・・・
唯一、この「釜あげうどん」でしか、味わえないことになります。

「讃岐うどん」を極めて行くと、「うどん」本来の食味(魅力)を楽しむためには、むしろ次第に「ツユ」や「薬味」が邪魔に感じられて来ると言う人がいます。
まさに、こちらの「すみた」の超絶讃岐うどんを頂きますと、その意見も「むべなるかな」と感じます。


途中からは「ツユ」を使って食べてみたのですが、汗をかきやすい真夏のせいなのか、今回の「ツユ」は、かなり塩気が強めに効いていました。
また、「ツユ」も熱々だったせいか、ダシの風味もホワホワと湯気に紛れてしまう印象で、前回よりもダシが判りづらく思えました。
そのため、「ツユ」には、ほんの少し「うどん」を浸けるだけにして、薬味もほとんど使わずに、「うどん」だけをそのまま主にすする感じになりました。

途中、その強めの塩辛さから「ツユの味が濃い」と同行者へ述べたところ、同行者は「ええ??味が薄いよ!?何かの間違いじゃない?」と言うので、驚きましたが、少し考えて、その理由に合点しました。
ツユは決して「味が薄い」のではなく、実は「醤油」と「カツオ」が効いていないだけで、「塩気」などはきっちりと強めに効いていて、むしろ味の輪郭は強めです。
しかし、同行者は生粋の関東生まれ&育ちですので、「うどん」と言えば「醤油」と「カツオ」の風味が強い黒々としたツユに慣れています。そのため、「醤油」と「カツオ」の風味が一向に漂って来ないこの淡い色のツユを「=味が薄い」と感じてしまったのでしょう。
まさに、「讃岐うどん」のツユと「関東うどん」のツユの味の違いですね。

また、ツユの塩気の強さですが・・・・特に「醤油」に含まれるアミノ酸には、塩辛さを和らげる作用がありますので、讃岐系のツユは醤油が控えめな分、一層、塩っ気がむき出しになっていて、尖って舌に刺さるように感じられるのだと思います。


ちなみに、同行者は冷たい「かしわざる」を食べたのですが、途中で少しもらったところ、「真夏」のぬるい水温のせいか・・・・「うどん」の冷水締め後の温度が高く、冬場のような「キリリッ」とした冷たい「うどん」ではなく、僅かに締めが「ユルリ」と弛緩している印象を受けました。
また、「ツユ」だけでなく、「うどん」からも、ちょっと驚くほどに「塩気」を感じ、割としょっぱめでした。そのため、せっかくのうどんの小麦粉の「旨味や甘味」が、やや判り辛いように感じられました。
しかも・・・・「うどん」だけでなく、「かしわ」(チキン唐揚げ)もかなりしょっぱめ、スパイスもかなりキツメで、鶏の美味しさをギリギリ残している印象でした。
おそらくは、「麺」の塩気とのバランスを取って、「ツユ」も「かしわ」も塩を増量しているのだと思います。

ただし、「うどん」の麺打ちの塩加減の秘訣は、古くから「土三寒六常五杯」と言われています。
これは、日本の四季の気候変化に合わせて、うどんを打つ際の塩分の濃度の調整比率を定めた口伝の言葉です。
つまり、「土三」とは、盛夏(土用)の暑い頃は「塩一杯を水三杯」で薄めた塩水で小麦粉を溶きなさいと言うことです。また、「寒六」とは真冬(寒中)の頃は「塩一杯を水六杯」で薄めた塩水で、小麦粉を溶きなさいと言うことです。
そして「常」とは、それ以外の春秋のシーズンを指し、この頃は「塩一杯を水五杯」で薄めた塩水で、小麦粉を溶き伸ばすと言うことになります。

麺打ちは、気温や湿度の変化にとても影響を受けるそうで、暑い季節は麺生地が柔らかくダレ易くなってしまい、逆に寒いと生地がカチカチに硬くなり易いそうです。
そこで、「夏」には塩分を増やして麺生地をしっかりと引き締めコシを出し、逆に冬には塩分を少なくして生地が締まり過ぎないようにと・・・・「麺打ち」の先人達は教えてくれている訳です。

まさに今回の「かしわざるうどん」は、しっかりと濃い目の塩分量に感じられましたので、こちらのお店はこの基本中の基本を、極めて「忠実」に守っている事になります。
ただし、私のオーダーした「釜あげ」では、塩分は全くと言って良いほど感じられなかったのですが・・・・器に張られた茹で湯に塩分がほど良く抜け出したのでしょうか・・・・不思議です。

ちなみに、「かしわざる」は、以前1月に食べた「かしわざる」を100点とすれば、今回は冷水締めがややぬる目で緩く、また「麺」「ツユ」「かしわ」とともに、いずれも結構な塩気の立った味でしたので・・・・薄味好きな私にとっては70点と言う感じですが、同行者は、「今まで食べたウドンの中では間違いなく一番の美味しさ」と言っていました。

また実は、私は1月以降もこちらへ二度訪問していて、それぞれ「おろしぶっかけ」と「たぬきうどん」を食べています。
「おろしぶっかけ」は、「讃岐うどん」の魅力が100%花開いたさすがの美味しさでしたが、ほぼ予想通りの美味しさ・・・・と言う印象でもありました。また、冷たいとは言えツユに長らく浸り切ると、ツユが湿潤し、うどんの小麦粉風味がやや消されてしまう印象でした。

また、「たぬきうどん」も美味しかったですが、揚げ玉の油が微妙にクドく感じられ、また熱いツユに浸り切ると、うどんの小麦粉風味がさらに埋もれてしまい、うどんの「食味」のうち、「ノド越し」のみがメインになってしまう印象でした。

人それぞれの好みによる部分も大きいとは思いますが、やはり、「うどん」でも、「蕎麦」でも、「ラーメン」でも・・・・「麺」が美味しければ美味しいほど・・・・
「麺」と「ツユ」は別々の器に盛られるメニューの方が、「麺」そのものの魅力を余すことなく堪能できる気がします。

インターネットを検索する限りでは、こちらの「讃岐うどんすみた」では、「かしわざる」や「おろしぶっかけうどん」を推す声が多いようですが、
私の個人的な好みでは、今回頂いた「釜上げうどん」の「奇跡」の食味は、私にとってまさしく「空前にして・・・・絶後・・・・」と確信できる、一生ものの「夢心地&陶酔」の美味しさでした。



(すべて完食)




↓続きあり






〜讃岐饂飩 すみた その3〜




2006年12月中旬 おろしぶっかけ(冷) 650円

東京屈指の「讃岐うどん」の名店との呼び声も高い「すみた」へ再び訪問をしました。

前回は8月上旬と言う、「真夏」の訪問だったため、「土三寒六」の大原則どおり、麺も汁も塩加減が強めになっており、どちらかと言えば「薄味」好きな私としては、次回の「再訪」は「冬」と決め、寒くなるのを待っていたものです。




お店は「十条中央商店街」の中ほどにある、Y字路に位置しています。
右へ100m程進むと「篠原演芸場」」があり、そのためこの商店街は「演芸場通り」との名前が付いています。




こちらの「すみた」は、都内の「うどんフリーク」の間に、その名を轟かす「讃岐うどんの超名店」ですが、意外にも店舗はこじんまりとした気負いのない佇まいで、地元の雰囲気に見事に溶け込んでいます。

以前の訪問時も、地元らしき皆さんも何気なく入って来ていて、「すごく美味しい」などと会話していました。
店頭に待ち客用の丸椅子が並べてあります。時間帯によっては行列必須なのでしょう。




店内に置かれたメニューです。
寒い冬ですので、「かけ」を選ぼうかとも思いましたが、今回の12月といえば「大根の旬」真っ盛りですので、大根オロシをたっぷりと使う「おろしぶっかけ」が食べたくなりました。

「ぶっかけ」は「温」と「冷」があるのですが、大根オロシが冷たいまま頂けると思い・・・・今回は「おろしぶっかけ(冷)」を注文しました。
しかし、寒い冬の気温の下では、これが実はちょっとした「選択ミス」だった事が後で判明します。





さて、オーダーをしてから7分ほどで「おろしぶっかけ(冷)」が登場しました。
「おろし」とは、もちろん大根オロシの事で、「ぶっかけ」とは、その名のとおり「つけ出汁をうどんが半分浸る位にぶっかけた」メニューです。

関東の文化では、うどんの食べ方は、大抵は「もり」か「かけ」のスタイルであり、他に「鍋焼き」などもありますが、「ぶっかけ」は讃岐うどんに独特の食べ方と思います。
もともとは・・・・さっぱりとした「もり」を食べたいが、一箸ずつうどんをすくって、猪口の中の「ツユ」に浸けて食べるのが「もどかしい」と言う時に、うどんに「ツユ」を直接「ぶっかけて」食べていたスタイルがメニューとして定着したようです。

まさに、「うどん」を日常食としている香川県の文化が生んだメニューと言えるでしょう。
「ぶっかけ」は、まず器の中で「うどん」と「ツユ」と「薬味」を、ぐりぐりと箸で良くかき混ぜてから食べるのが美味しい食べ方のようです。


ちなみに、うどんに載せられている「大根オロシ」は・・・・期待に違わぬどころか、期待を遥かに上回る「超絶の美味しさ」でした。
一口食べて、「果たして・・・世の中にこれほど美味しいダイコンが存在していたのか?」と思えるほどでした。

まず、驚かされたのは、ダイコンの「繊維」が、全て完璧に「寸断」されていて、しかも、一切からみ合わず、見事に「ほぐれている」食感なのです。
ダイコンの繊維が見事に裁断されて、「ふぅわり」とした膨らみのある異様に滑らかな口解け感があります。
続いて、口中いっぱいに湧き上がる新鮮な大根の鮮烈な味わい・・・・その衝撃的な美味しさに目からウロコが10枚は落ちました。
そして、後口に残る・・・・大根の繊維や糸が「絶無」、一切何も舌に残らないのです。

きちんと繊維が「切れて」いるため、決してモソモソせず、繊維の糸や筋が全く舌に触らず、食べ終えると、まさしく「淡雪」の如く「サーッ・・・・」と姿を消し去ります・・・・その鮮烈な風味と美味しさの「残像」だけを口中に残して・・・・。

「大根の旬」は「冬」ですので、大根その物の「旬のパワー」も影響しているとは思いますが、家庭用の卸し金では、到底、ここまでパーフェクトな食味の大根オロシは作れないでしょう。

家庭用の卸し金で大根を卸すと、大根の繊維を「つぶす」感じになると言います。
そのため、筋が切れずに舌に残り、歯触りが悪く、繊維を押し潰してしまうため、大根のエキスも流れ出てしまい、水っぽい味わいになってしまうのです。

こちらのお店では、おそらくプロ御用達の高価な「銅製の卸し金」を使っている物と思われます。
プロが手作りで目立てした銅製の卸し金はとても高価ですが、刃の切れ味が全く違うそうで、繊維の切り口が実に鮮やかで口当たりが良く、さらには、大根エキスの滲み出しも起きず、味が鮮烈な大根オロシが誕生するそうです。

果たして「つぶす」のと「切る」のとで、大根オロシの味がここまで「激変」するとは・・・・料理の奥深さを改めて知る思いです。





さて、まずは、かき回さずに「うどん」だけを頂いてみます。

ズズズ、ズルズル・・・・・。

ハグハグハグ・・・・・。


ほう・・・・今回は、麺の「動き」や「コシ」に、少々の硬さが感じられるような気がします。

すすった感じは「ツルリと滑らか」で伝わって来る「コシの力量」も十分なのですが、以前よりも口中での「動き」が停滞気味と言うか・・・・口中で常に「グルグル」と「潤滑」「対流」するように動き回る感じが少なく感じられます。

また、冷たいツユの中に長らく浸かっていたせいなのか・・・・以前に感じた、うどん表面のヌルヌルとする潤滑剤のような・・・・良い意味での「ヌメリ」が取れてしまった印象で、唇や舌の上を「滑空」する感じもやや控えめです。

さらに、噛み締めてみますと・・・・「モッチ、モッチ、モッチ、モッチ、モッチ・・・・」とするはずが、「モチ、モチ・・・・」位で終わってしまいます。
歯をゆっくりと包み込む、あの「水あめ」のような・・・豊かな粘り気と、どこまでも滑らかに「モッチョ〜リ」とする食感が控えられ、逆に微細なゴツゴツ感も感じられます。

以前は、いつまでも噛んでいたいと思わせてくれた、まさしく「グミ」や「水あめ」のような麺の「超グルテン感」でしたが、今回は4〜5回ほど噛むと、次第に咀嚼されて歯応えが弱くなり、細かく柔らかくこなれて、自然と喉の奥へ飲み込まれて姿を消してしまいます。


うむむ・・・・この食味の違いは、「うどんの出来のブレ」や「茹で加減が足りない」と言う事ではなく、おそらくは、冬場の「寒さ」による「キンキンに冷えたツユ」のせいだと思います。
つまり、以前に食べた「かしわざる」や「釜あげ」とは異なり、今回の「ぶっかけ」は、うどんを茹で上げた後に、器の中で「キンキンに冷たいツユ」に長らく浸り続けるため、まるで「冷水締め」されているのと同じ状態が、長く続く状況が発生してしまうのでしょう。
そのため、冷たいツユの中のうどんがコチコチに「引き締まり過ぎて」しまうのだと思います。

「真冬」以外のシーズンであれば、ツユの温度もぬるくなり、このような現象は起きないと思います。
実際、以前も一度、こちらで「ぶっかけ」を頂いていますが、その時は初夏の頃の気温の高い時季でしたので、今回のような「低温」のツユではなかったため、うどんの食味には何らの影響はありませんでした。

つまり、「すみたのうどん」は相変わらずの絶品だったと思うのですが、冬の寒い時季でキンキンに冷たいツユに長らくうどんを浸らせ続けてしまう「冷」の「ぶっかけ」を、わざわざ選んでしまった私の思慮不足によるオーダーミスでしたね。





相変わらず、箸で持った時の、豊かな量感のある「手応え」がグングンと伝わって来るうどんです。

外側は白く、内側は半透明の「地層」が幾重にも重なって見えます。麺の中心に近づくほど「グミ」や「水あめ」のような食感になり、決して「芯」が硬く残ると言うことがありません。
「手打ち」による水分の豊富な「多加水」の成せる食感でしょう。加水の少ない「機械打ち」ではこういう風にはなりません。

また、前回の「真夏」の訪問では、「うどん」「ツユ」ともに、割と塩気が強く感じられましたが、今回は真冬と言うことで、「土三寒六常五杯」の原則どおり使われている塩が減らされたようで、「うどん」からも「ツユ」からも強い塩気は全く感じられず、小麦の旨味が前面に出た美味しさが楽しめました。


ちなみに、ツユの味については、讃岐うどんと言うと、関東人の私には大抵「ツユ」が甘すぎると感じる事が多いのですが、こちらのツユは、さほど過剰な甘味が感じられないのがいいです。
ただ、味はやや薄口で上品、醤油の風味がほとんどしませんし、出汁は関東人の好きな「カツオ」ではなく「イリコ」が主体ですので、関東うどんのような濃い「醤油味」と「カツオ風味」を期待してしまうと、多少とまどうかも知れません。

何と言うか、「うどん」に「味」を付ける・・・・と言う感じではなく、「うどん」に「香り」(風味)を穏やかに添えるだけ・・・・と言うイメージのツユなのです。
イリコのダシも非常にすっきり、あっさりとした感じで、スルスル・・・・と、ツユをすべて飲み干しましたが、塩気や甘味、人工的な旨味が舌に残ると言うことは一切ありませんでした。

後口はどこまでも「サラリ・・・」としていて、そこへ大根オロシの効果も加わり、実に心地の良いサッパリとした後口です。
散らされた白ゴマが、サラサラと舌に触り、良いアクセントに感じられました。





「すみた」から徒歩一分ほどの場所にある「篠原演芸場」です。

東京で最も古い1951年に開館した大衆演劇専門の劇場だそうで、連日、様々な劇団による「ミニショー」「お芝居」「舞踊ショー」などが上演されているそうです。
このまま後一分ほど歩くと、「十条価格」と呼ばれるほど良心的な物価で有名な「十条銀座」商店街ですが、ちょっと覗いてみたところ、もの凄い人込みでした。



さて、食べ終えての感想ですが・・・・・

今回頂いた「ぶっかけ」は「讃岐うどん」の代名詞とも言える人気定番メニューですが、メニューによれば、「冷たいツユ」と「温かいツユ」が選べるようになっています。
あくまで好みの問題かも知れませんが、今回のように「ツユの水温」が下がる真冬なら「温かいツユ」が良いと思いました。

つまり、真冬の「ぶっかけ」でも、かけられるツユが温かければ、こちらのお店の本来の実力である、もっと「しなやか」で「ふくよか」で、「強靭」だけれど「柔軟」なコシを長く維持する持続力のある状態で食べられると思います。
逆に、暑さでうどんがヘタり気味になり易い「夏場」なら、うどんが引き締まるよう「冷たいツユ」を選ぶと良いと思います。



(すべて完食)











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