01ch グルメ食べ歩き
さくらい
(東京都 文京区)

店名 厳選洋食 さくらい(さくらい)
住所等 東京都文京区湯島3-40-7 カスタムビル7〜8F 【地図表示】
禁煙 タバコ分煙(7Fカウンター席のみ禁煙)
訪問日 2006年6月中旬 ビーフシチューセット 2800円 
2006年6月中旬2 ハヤシ&カレーセット 1800円 
2006年6月下旬 オックステールシチュー 3000円




〜厳選洋食さくらい その1〜



2006年6月中旬 ビーフシチューセット 2800円

今回は、都内でも屈指の「美味しい洋食店」との呼び声が高い、巷で評判の「厳選洋食さくらい」(文京区・上野御徒町駅)さんを訪問してみました。
実際、過去にテレビ「どっちの料理ショー」や「王様のブランチ」「チューボーですよ」などにも美味しい洋食のお店として登場し、インターネット上の「洋食系サイト」「グルメ系サイト」などを見る限り、こちらのお店を「絶賛」する記述が多数見受けられます。
しかも、その表現は「まさに厳選された洋食」「上品な大人の味」などの最上クラスの賛辞が惜しげもなく贈られているお店なのです。

実は、こちらのお店は私にとっても、それまでほとんど興味のなかった「洋食」の「スゴサ」を初めて教えてくれた記念すべきお店でもあります。




お店は、春日通りに面したビルに入居しています。ビルの左脇に黒い立看板が置かれているのが良い目印になります。

東京メトロ銀座線の上野広小路駅または都営大江戸線の上野御徒町駅がとても便利で、それぞれ徒歩約1分の近さです。
また、JRの御徒町駅から徒歩約3分ほど、上野駅のしのばず口からも徒歩約7分ほどの場所になります。
住所は、御徒町に近いことからてっきり「台東区」かと思っていましたが、実際は「文京区」になります。




ビルの左脇にエレベーターホールがありますので、7階へ上がります。
ちなみにお店は7階と8階の2フロアを使っていますが、入口があるのは7階のみになります。




いわゆる「洋食」と言うと・・・・・クラッシック、レトロ、などのイメージを受けますが、
こちらのお店のテーマも「おいしくてなつかしいメニュー」と掲げられています。
昼から夜まで、中休みなしの通し営業になっています。




エレベーターを7階で降りると、左手に客席が広がっています。
インテリアはニューヨークの摩天楼をイメージしたとか・・・。
クール&スタイリッシュにまとめられ、なかなか高級感を醸しています。

大きな窓からブラインド調の格子を通して差し込む高層階を生かした陽光が良いですね。
中央の階段は8階への通路になっています。




同じく7階ですが、階段の左側に広がるカウンター席スペースです。
メタリック&ブリリアントに仕上げられ、こちらのスペースは禁煙になっています。

横へ長く広がる窓を通して、厨房内の4〜5人のスタッフの調理振りを見ることができるようになっています。
なかなか心憎い演出です。




メニューの最初には、「季節のおすすめ料理」が掲載されていました。
なるほど、今は6月ですので、春野菜の「アスパラ」を始め、6月から解禁された「鮎」、「あさり」も春の頃が最も身が太ると言います。

最近話題の「イベリコ豚」のローストや「名古屋コーチン鳥丼」もそそります。
「さくらい洋食コース」と言うプリフィックス・コースもあります。




こちらは「ランチメニュー」です。この他にも、まだまだメニューは続きがありました。
今回はもともと「ビーフシチュー」がお目当てでしたので、「ビーフシチューセット」を「パン」でオーダーしました。





まずはレタスとトマトの「サラダ」の登場です。

ちなみに、美味しいサラダの条件は「3Cを備えたものである」と言われています。
「3C」とは、つまり「Clean」(清浄)、「Crisp」(パリパリ新鮮)、「Cool」(ひんやり冷たい)と言うことです。
最初の二つはクリアしているものの、ランチタイム用にある程度は作り置きしてあったのか、温度はほぼ室温に近い状態でした。

ドレッシングはアッサリしていて、レタスは心地よい程度の自然な苦味があります。
レタスは葉の部分だけだとクニクニとして歯応えが弱いですので、適度に茎の部分も混ぜると、シャクッとして歯応えが良くなると思います。

また、私はこの「3C」にあと二つ加えて、真に美味しいサラダとして個人的に「5C」の条件をチェックしています。
あとの二つは・・・「Cut」(野菜の切り方)と、「Color」(配色の豊かさ)です。
どのように新鮮で瑞々しく冷たい野菜でも、食べやすいサイズや形、切り口のスムーズさなど・・・カッティング次第で食感が激変します。
と言うより、その野菜のカットにこそ「プロ」の技を感じます。

また、時折、付属のミニサラダだからと、緑一色のものを出してくるお店もありますが、「見た目」も味のうちですので、できる限り「緑」「赤」「黄」「白」「橙」等、四〜五色の豊かな配色で盛り付けて頂けますと「満足度」がグンとアップすると思うのです。
料理における「色彩効果」「視覚の印象」と言うものは想像以上に大きな効用があります。





さて、いよいよ「ビーフシチュー」の登場です。
スプーンやお箸までセットしてくれるのは、非常に親切ですね。お店によっては、ナイフとフォークしか出してくれない所もあります。
しかし、ビーフシチューのルー(ソース)は絶対にスプーンの方が食べ易いですし、煮込まれて柔らかな肉はお箸で食べたいと言う方も少なくないでしょう。

付け合せはパンをチョイスしました。
やはり「洋食屋」さんでは、パンが美味しい事が多いですし、何よりビーフシチューのせっかくのルーを、パンですくって残さず味わえるからです。
このパンですが、オーダーが入ってから一つずつ焼くのか、まさに「焼き立て」で、非常に芳ばしく、かなり熱々の状態でした。
そのため、外側はフランスパンのように「カリッ・・・」とやや硬めですが、中は「ホカホカ」で、まるでつき立てのオモチのように「モッチ〜リ」「モチモチ」として、パンなのに何と言う「粘り」だろうと驚かされます。

やはり、ご飯は「炊き立て」が何より美味しいように、パンも「焼き立て」こそが抜群に美味しいです。
また、フタ状になっている上の傘の部分が「こんがり」としていて、変化のある歯触りか楽しめるパンになっています。
おそらくその辺りを狙ってこのような独特な形になっているのでしょう。思ったとおり、かなり美味しいパンですね。





さて、いよいよビーフシチューを食べます。
うーん・・・・見るからに「濃密そう」「ヘヴィそう」なルーですね。濃いこげ茶色のデミグラスソースがたっぷり使われていそうです。
まずは、「ルー」だけをスプーンですくって食べてみました。

しかし・・・・しかし・・・・しかーし・・・・・
あまりにも不用意にその「ルー」を舌の上に乗せてしまった、次の刹那・・・・・

あ、あ、あまりに「美味すぎて」・・・・・
私の肉体が耐え切れず、一瞬、このまま死んでしまうかと思いました。


生体の耐えられない、「生体拒絶反応」(防御反応)が起きそうなほどの・・・・・まさに、危険水域の「爆発的美味しさ」です。
それほどに「ショッキング」な美味しさなのです。

こ、こ、これは・・・・・
まさに、旨味の「ブラックホール」・・・・・。
まさに、旨味の「異次元凝縮体」・・・・・。

その味わいには、一切の曖昧さがなく、あまりにも強烈な旨みのインパクト、尋常でない「旨味の濃縮度」です。
異次元の「質量」を持った「超小型のブラックホール」が、私の口中へ進入してきて、今、舌の上に存在している・・・・・そんなイメージです。
一体どれほどの「旨味の質量」を内包しているのか・・・・私の過去の「経験値」にない、理解を超えたある種の「とんでもないモノ」、「未知のモノ」が口に入って来た・・・・と言う生体パニックに全身が襲われました。

この美味さに、果たして耐えられるか・・・・と自問自答しながら、目をつぶって全身に力を入れ、この圧倒的な「美味さ」に必死で耐え続けます。
このままでは、私の味覚神経に過電流が流れ過ぎて、味覚回路がパンクしてしまうかも知れません。
ともかく「旨味よ、早く去って下さい・・・」と念じるしかありませんでした・・・・。

この感覚は、ちょうど、「熱すぎる物」を口に入れた時に、熱過ぎてハフハフと、舌や唇が触われずにあせっている状態と同じです。
つまり、あまりに「美味すぎて」、舌がソースに長時間触われないのです。



そうして、口に含んで数十秒後・・・・・旨味の超絶凝縮体「ブラックホール」が、
ようやく解体を始め、その無限の質量が解放され始め、「恐るべき口中ビッグ・バン」の怒涛の嵐が過ぎ去った後は・・・・・。
後半になると、このルーは、また全く異なる味わいに変化して来ます。

それまでの無尽蔵の旨味の「大噴出」と交代に、今度は絶妙な「ほろ苦味」が姿を現して来るのです。
「ズゥーン・・・・・」と、無音の闇に包まれるかのようなこの深ーいビター感・・・・・。
まるで、素晴らしい映画を見終わった後の余韻を反芻しながら楽しむ、「エンドロール」のような深くて静かな時間が流れます。

前半の異次元濃度に凝縮された「旨味」で全身を震わせ、狂おしく悶絶させた後は、一転して、ディープな「ほろ苦味」で金縛りにし、無音のまま動けなくさせる・・・・。
まさに、美味しさに「翻弄」されるとはこのことでしょう。


ちなみに、ビーフシチューの隠し味として「黒ビール」などを使う方法もあるようですが、こちらのシチューの「ほろ苦味」はビールとかのホップによる苦味ではないと思います。
この「ほろ苦味」は・・・・まるで、コーヒー粉をそのまま舐めたような非常にコクのあるビタースウィートな深〜い味わいです。
ひょっとして、隠し味として少量のコーヒーを混ぜているような気もしましたが、実際はどうなのかは判りません。

実は、私も家で「カレー」を作る時は、隠し味としてインスタントコーヒーやバンホーテン等のピュア・ココアパウダーを少量入れています。
これらは良く知られていることですが、コーヒーのほろ苦味と香りがルーに加わると、深いコクが出て、グーンと「大人の味」になりますし、ココアの甘いカカオ風味と滑らかさが加わると、市販のルーとは思えないワンランク上の美味しさになります。





さて、いよいよ「牛肉」を食べてみます。
二つの肉が乗っていたのですが、こちらの右側の牛肉は、「ザックリ・・・」とする短い刷毛状に整った繊維を持つ牛肉でした。
適度に混じった牛脂肪、凝縮された牛肉独特の香りや風味が高級なコーンビーフを連想させます。
焼いた表面や肉の繊維がやや舌に残る感じがあり、ホロホロと自然にほぐれるような口解け感を楽しむタイプではないですね。

そして気付いたのは、おそらくこの「牛肉」を塩とコショウだけでステーキとして焼いて食べれば、かなりの旨味と肉汁が漲る美味しい肉なのだと思うのですが、
遥かに旨味やコクが濃密な異次元濃度の「ルー」と組み合わせられているために、むしろ牛肉の味が相対的には「淡白」「シンプル」にも感じられ、その存在が「息抜き」「舌休め」になっている感じです。

まるで熱い「マントル」のような極上ルーの強大なエネルギー感、パワー感、ヘヴィ感、を厚みのあるザックリとした滑らかなビーフが、実に優しく大らかに受け止めてくれます。
つまり、ルーだけだと「舌が触れないほど」あまりに旨味が濃密なのですが、一緒に牛肉を食べることで、ルーが適度に溶き延ばされて、丁度良い濃度になる感じなのです。
最初に「ルー」だけを舐めた時は、そのあまりに「濃密な旨味の密度」に、すぐに私の舌が負けてしまうかと思いましたが・・・・
さすがに名店の逸品料理だけあり、お皿の中では、この「濃」と「淡」のバランス関係がきちんと築かれていることで、美味しく食べ進む事ができるようになっているのだと悟らされます。

ちなみに、牛肉にかかっている白いソースですが、味に「まろやかさ」を加えるための生クリームかと思っていたのですが、そうではなく、酸味があり、醗酵風味があり・・・・どうやらヨーグルトかサワークリームのように感じられました。
その酸味がデミグラスソースの濃厚なコクと旨味に、爽やかで軽快な「キレ」を加えている感じです。
また、牛肉とともにルーをじっくりと味わってみると「赤ワイン」のほのかな風味がある事が判ります。

また、付け合せのマッシュドポテトは、バタークリームを混ぜたらしき「マッタリ」としたムースのような舌触りで、非常に細かい網の目で裏漉ししたのか、素晴らしく滑らかですが、塩気やコショウがほとんど感じられず、味がボヤッとして焦点化しにくい感じを受けました。
ただ、シチューソースとの組み合わせから考えると、こう言う「無塩テイスト」のあっさりとしたポテトが、濃厚に凝縮されたソースを「溶き延ばし」てくれる、「舌休め」の役割を担っているとも考えられます。
他に、ゴボウ、プロッコリー、ニンジンが付きます。ニンジンは「シャトー切り」にされていて、この切り方は洋食屋さんならではでしょう。





左側の肉は、右側の肉とは対照的に「トロトロ、ムッチョ・・・」とする、とろけるゼラチン質の多い部位です。

どうやらこちらのお店のビーフシチューは、牛肉の異なる二つの部位を提供するようですね。
きれいに整った繊維感が心地よく牛肉の風味が濃厚な部位、そしてトロトロにとろける柔らかな部位・・・・。
このような配慮も実に素晴らしいです。
これなら、ほとんどの客も、自分の好みを満たせるのではないでしょうか。

想像を遥かに超越したソースの飛び抜けた美味しさに比べると、
牛肉そのものの美味さは、まだどうにか「日常の世界」の範疇であり、ある程度予想範囲内の美味しさでした。

さて、いよいよ肉を食べ終わったので、残ったルーを「パン」ですくって食べてみます。
ちなみにフレンチなどでも、シェフが精魂込めて作った貴重なソースは、パンできれいにすくって、お皿に残さず頂くことがマナーにもなっています。
淡い小麦粉の「パン」ですくってルーを味わうことで、それまで極めて濃厚だったルーの味が、ビーフとともに食べた時よりもさらに一層溶き延ばされ、「味」が展開されて、非常に判り易くなります。

無垢なパンの白さによって、きれいに溶き延ばされたその味わいは・・・・ふんだんに使われたであろう動物や香味野菜による何種類もの濃くて、豊かで、複雑で、非常に深ーい旨味が味わいの中心位置にあり、その周囲をほんのりと香る赤ワインの風味、トマトの風味ときれいな酸味が取り囲んでます。そして・・・・やはりラストには、まるでコーヒーのような深くて心地よい苦味が舌に長らく尾を引いて残ります。
うーん・・・・敢えて言わせて頂ければ、この料理の「主役」は、むしろ「牛肉」と言うよりも・・・・・どちらかと言えば、やはり、「ルー」(=ドゥミグラスソース)にこそあるような気がします。


それにしても一体、どれほど「ルー」を煮詰めれば・・・・・これほどの「味」に成り得るのでしょうか。
ビーフシチューの味の決め手になるドミグラスソースは、本格的なお店ともなれば、動物性素材と野菜を半日煮込んでは半日休ませる、これを最低でも「一週間」は繰り返して煮込み続けて作ります。店によっては何と「一ケ月」ほどもかけて大切に煮詰め続けるお店もあるようです。
洋食の「命」と言われる「ドミグラスソース」は、まさしくそのような気の遠くなるような時間をかけて、旨味をとことん「濃縮&凝縮」させて作られるのです。
まさに「臨界点」まで濃縮され尽くしたその異次元の「旨味の凝縮体」が、口中で一気に解き放たれ、想像を絶するこれほどの「ビッグ・バン」を舌の上で引き起こすのでしょう。


私は、ここで初めて「煮詰めること」「濃縮すること」により誕生する「異次元の味」の「凄さ」を思い知らされました。

和食や中華の世界では、こう言った長期間煮詰めて作られたソースを「直接味わう」(舌を覆う)と言う事は少ないでしょう。
素材の味を「そのままの濃度」で頂く料理法が多いからです。
ラーメンスープなども骨髄を煮て使いますが、あくまで煮詰めたソースではなく、淡いスープとして味わいます。


動物や野菜の旨味を「濃縮&凝縮」する手法&文化は、過去、何百年にも渡り、
「ソース」作りに精魂を込め、心血を注いで来た西洋料理の「独壇場」であり、「特権」だと言う事なのでしょう。
まさに、恐るべし「洋食の世界」です。





セットのコーヒーです。このコーヒーも淹れ立てで、とても美味しい上に、不思議な香りと味を感じました。
どのような香りと味かと言うと、コーヒーに極少量のココアを混ぜたような甘いフレーバーと柔らかな味です。私がこの日に見た限りでは、こちらの客層は圧倒的に女性客や年配客が多いようですので、おそらくはそういった客層の嗜好に合わせてコーヒー豆をチョイスしているのかも知れません。

もちろん、実際にはココアなどは混ぜていないと思いますが・・・こちらのコーヒーはよほど上質なセレクトをしているのか、多くのコーヒーで感じるイガイガと味が荒れた感じが全くなく、トゲトゲしいエグ味が一切なく、深い森の木の良い匂いと言うか、腐葉土に覆われた山の香りと言うか・・・ナチュラルな「森の土」の香りと、良質で独特な「柔らかで甘い」テイストに満ちているとても上質な味わいでした。

ちなみに、あまり知られていないようですが・・・・コーヒーは「世界3大農薬漬け農産物」の一つと言われています。その栽培単位面積当たりの「農薬」の使用量は、あらゆる栽培作物の中で、一位の「綿」、二位の「タバコ」・・・・に次いで三番目であり、実に大量の農薬を使用して栽培されているそうです。
こう言う話を知ってしまうと、多くのコーヒーで感じる不快なイガイガ感が、単に深煎り焙煎とか、ヘタな高温抽出のせいとか、だけではなく、ひょっとして大量の農薬投入のせいなのか・・・と思えてなりません。





さて今回、本当に久しぶりに、食べ物による衝撃的な体験をして、「洋食」の素晴らしさに開眼し、
これからも最高の洋食を堪能すべく、その遥かなる道のりの入口に立ったような新鮮な気持ちです。

実は、今まで「洋食」には、ほとんど興味がなかったのですが、それは西洋料理、例えればフランス料理などをあちこちで食べても、「?」と思う事が多かったからです。
盛り付けなどの見た目の芸術性は高いですが、「味」に関しては明らかに私の価値観と不一致に思える事が少なくありませんでした。
値段が高くて本格的なお店へ行くほど、一層、そう感じました。

ただ、今から思うと実はそれらのお店のほとんどは、いわゆる「ヌーベル・キュイジーヌ」の料理を出すお店だったのです。
「Nouvelle Cuisine」、和訳すれば「新しい料理」と言う意味になります。
つまり、フランスでも1970年代頃から、それまでのバターやクリーム、動物性素材をたっぷり使った伝統的で濃厚な料理から、もっと低カロリーでシンプルに作れる料理が流行し、あまり手をかけず新鮮な素材をそのまま生かしたような、軽い味わいの「ヌーベル・キュイジーヌ」が主流になったのです。
そのため、今までのフレンチ食べ歩きでは、こう言う「濃縮系の深い旨味」の魅力を持つ料理と出会う経験が、ほとんどなかった訳です。

しかし、「日本の洋食」は、はるか昔、江戸末期や明治時代にルーツを持つ世界です。
つまり、まだ西洋料理が濃縮&複雑な調理をされていた「クラッシック」の時代のレシピが日本へ伝わり、その濃厚な味のレシピが起源となって誕生した世界です。
そのため、今でもこうした「凝縮&濃縮系」の旨味を持つ料理がメインであり、立派に健在なのです。
さらに言えば、その伝統の濃厚レシピをベースに、長年かけて日本人の舌に合うように丹念に改良されて来た料理が一堂に揃う世界です。

こう考えると、「洋食」と言うジャンル・・・・・非常に魅力的で、かつ、実に貴重な素晴らしい料理ジャンルだと思えます。



(すべて完食)




↓続きあり






〜厳選洋食さくらい その2〜




2006年6月中旬その2 ハヤシ&カレーセット 1800円

前回、あまりにも大感激してしまったとともに、今まであまり馴染みのなかった「洋食」ジャンルの魅力と奥深さの「真実」を垣間見てしまったような気がしてならず、間を置かず再訪してみました。
今回もランチタイムだったのですが、「洋食屋さんのカレーライス」に興味があったので「ハヤシ&カレーセット」を注文してみました。

ちなみに、こちらのお店は人気店ですので、昼食タイムや夕食タイムはかなり混雑することもあるようです。
前回は開店直後に伺ったのですが、今回は昼の12時半頃に伺ったところ、お店の入口がビルの7階と言うこともあり、エレベーターを降りるとすぐに店内なので、ウェイティングスペースが狭く、エレベーター前が混雑して、待ち客があふれていました。

また、7階のカウンター席側のみ禁煙なのですが、喫煙可能なテーブル席とはかなり距離が近いですので、タバコの煙が苦手な方は、特に空いている時間帯を選んで訪問する事をお薦めします。
これだけの絶品洋食を出すのであれば、2フロアあることですし、どちらか1フロアを完全禁煙にしてもらえると嬉しいですね。15分ほど待った後、席へ案内して頂きました。





さて、登場した「ハヤシ&カレー」は、それぞれが真っ白な二つの「ポット」に入れられて登場します。
ライスのプレートやスプーンの大きさから比較して頂けると良く判ると思いますが、「ハーフ」とは言え、カレールーもハヤシルーもかなりのボリュームです。
どちらかの一つのポットだけが提供されても十分一人前の量だと思います。つまり、事実上、二人前が提供されたようなうれしいお得な気分です。

また、この前に、最初に野菜サラダが登場しています。盛り付けも味も前回と同様でしたので、今回の写真は省略しました。
付け合せとして、福神漬けとラッキョウの薬味が添えて出されます。酢漬けにされたやや甘めのラッキョウが美味しかったです。





左側が「ハヤシルー」、右側が「カレールー」です。
ルー自体に量があるうえ、そのたっぷりのルーから顔を出すほど、具として「肉」がゴロゴロ入っている事が判ります。

ライスもヌカ臭さやジャー焼けなどの匂いは絶無で、良い匂いがします。
ダマになっている部分も微塵もなく、炊き方もルーをかける前提の硬めの炊き上がりで美味しいです。





まずは「ハヤシルー」をライスへかけて食べてみました。
「パクリ・・・・」と食べた、その次の刹那・・・・・

これまた、前回のビーフシチューで受けた衝撃、そのままの超絶インパクトが、口中に吹き荒れます。
うーん・・・・この美味しさは、まさに「 Beyond Description 」・・・・筆舌に尽くせませんが・・・・
敢えて言葉を探せば・・・・まさしく、舌を覆う「旨味の溶岩流」と言うイメージでしょう。

ビーフ、トマト、赤ワイン、香味野菜、スパイス・・・・などなど多種の食材を「グツグツ・・・・」と長時間煮詰めて、濃縮に濃縮を重ねた、その「厚み」に度肝を抜かれる、非常に「リッチ&ディープ」な味わいです。

口当たりは「トロトロ〜ン」として、ともかく滑らかで芳醇な豊かな香りがあります。この舌に非常に柔らかく「トロトローン・・・」とする、とろけるまろやかな感覚は良く煮込まれた玉ネギによるものですね。
その玉ネギのナチュラルな「甘味」がとても心地よく感じられ、そしてそのデリケートな甘味に対比するかのよに、これまたナチュラルなトマトの「酸味」が実にほど良く効かされています。
砂糖のような調味料のあざとい甘味ではなく、また、ビネガー(酢)を入れたような後付けの酸味でもなく、すべてに高度な「素材感」が貫かれています。

後味には、前回食べたビーフシチューと同じ「ズウ〜ン・・・・」とするブラックコーヒー風の深い苦味があり、やはり前回と同じ「デミグラスソース」をベースにたっぷりと使っている事が良く判ります。
ただ、もちろんハヤシルーとして適度な濃度に多少は水で溶き延ばされているとともに、ラードやヘットで炒めた小麦粉を僅かに使っているのかどうか・・・・前回のスルスルと口当たりの良いビーフシチューと比較すれば、小麦粉などによるルーの微妙な「増量」感があると言うか、明らかに口当たりにやや「モッタリ」とした重みを感じ、お腹にもしっかり「溜まる」感じがあります。

具としては、伝統的なハヤシライスらしく、ビーフの薄切り肉が入りますが、このビーフも「サックリ」と歯切れ良く、しっかりと良い「牛肉」の味わいが楽しめて抜群に美味しいです。
安いハヤシライスですと、安い輸入牛の安いバラ肉を使っているため、その「ブヨブヨ」した脂身の食感が非常に苦手なのですが、こちらのビーフは脂身だらけのバラ肉などは使っておらず、食材に一貫した高級感があります。

まさに、大量の動物と野菜の旨味を煮詰めて、煮詰めて、さらに煮詰めて・・・・・極めて「飽和」状態に近くなったその凝縮体をご飯に掛けて頂いていると言う感覚です。
このハヤシルーの「濃度」、もし、例えるとしたら・・・・市販のレトルトのハヤシライス「10食分」を全て鍋に入れ、グツグツと何時間も煮詰めて、「1食分」の量になるまで煮詰めたような・・・・。
今まで食べて来たハヤシライスの10倍濃厚で、10倍リッチな味密度・・・・まさにそんなイメージのハヤシルーです。
私が過去に食べて来たハヤシライスが、いかに「イミテーション」「インスタントチック」であったかが・・・・・もう、嫌と言うほど良く判ります。





さて、カレールーが冷めないうちに、途中からカレールーも食べてみました。
まず・・・・いつもカレー専門店などで食べているカレーとは、「香り」が全く異なりますね。どうやらスパイス類の中でも、特に「マスタード」の揮発性の香りが豊かなのです。

一口食べてみますと、炒めた小麦粉で「モッタリ・・・・」「ポッテリ・・・・」とする強いトロミ感を付与した、まさしく「洋食屋さんの作るカレーライス」ですね。
思わず、往時のとおり「ライスカレー」と呼びたくなります。

しかし、「ボテッ・・・」としながらも、まさに「香辛料」と呼びたくなるスパイスがしっかりと効いていて、とても高級感のある味わいです。
それでいて、スパイスの組成は意外に「シンプル」な感じで、あまり何十種類も入れていじり回した感じではありません。
これは、まだあまり多種類のスパイスが手に入らなかった頃の、伝統的な昔からのレシピを忠実に守っているからと言う気がします。

そして、口中からスパイスの姿が過ぎ去った後には、何とも言えない清々しい爽やか系の「辛味」と、ほのかな「酸味」がほど良くバランスしています。
そしてさらに、この二者が口中から過ぎ去ると、おそらくは玉ネギと思われるホワホワとほんのりとした甘味が舌に残ります。
「甘・辛・酸」ならぬ、「辛・酸・甘」が見事なバランスと順序で配置されており、そのため、「次々にスプーンが進む」「いくらでも食べられる」印象です。
このゴールデントライアングル的な味の構成が、時代を超えて長らく人気保っている秘訣でしょう。

具として、ゴロゴロとやや大振りな丸々とした美味しいチキンが入っています。
ブロイラーのような鶏特有の「臭み」が全く感じられず、ほど良い弾力とあっさりとしたチキンの肉質が辛味のあるスパイシーなカレーと非常に相性が良いですね。
後で判ったのですが、なんとチキン肉には贅沢にも「名古屋コーチンの正肉」を使っているようです。





ちなみに、こちらの「カレールー」ですが、しっかりと「中辛」位の辛味が付いていますが、その辛味の「質」は・・・・
判る人にはすぐに判ると思いますが、「唐辛子」と共に「和からし」(オリエンタルマスタード)が主役になっているのは間違いないでしょう。
そのためルーの色合いも唐辛子の「赤」と言うよりも、カラシの「黄色味」が感じられます。

その主成分はアリルイソチオシアネートと言う独特な刺激臭を持つ成分で、一般には、オデンに付ける黄色い練りカラシとして馴染まれていると思います。
「からし菜」の種子を粉にした調味料であり、その「辛味」は、舌や唇にビリビリと「熱く」やって来る灼熱系のホットスパイシーな「赤唐辛子」の持続的な辛さとは全く異なり、
瞬間的に「スパーンッ・・・」と鼻や脳天へ突き抜けるようにやって来るあっさりとして「爽やかな」「揮発性」の一瞬だけの辛さです。
後味のキレが非常に潔く、辛味も軽く、この辛さは同じく爽やかで揮発性の「ワサビ」に近いと個人的には思っています。

その「スパッ」と潔く切れる辛味の後には、ルーに溶け込んでいるとおぼしき「玉ネギ」のナチュラルでほのかな優しい「甘味」が顔を出して来ます。
このわずか十数秒の間に舌の上で展開される「辛味」と「甘味」の対比、メタモルフォーゼの見事さに、「伝統の味」を垣間見るようです。

この辺りが、赤唐辛子をメインに使う「インドカレー」や「タイカレー」とは大きく異なる「英国式カレー」の特徴の一つなのでしょう。
また、サラサラとした薄いルーの「インドカレー」や「タイカレー」とは異なり、小麦粉でルーにボテッとしたトロミを付けているのも「英国式カレー」の特徴です。
ただ、昨今のカレー専門店のカレーやレトルトの市販カレーを食べていると、この「モッタリ、ボッタリ・・・」とした小麦粉の重さには、ややとまどうかも知れません。

カレーといえばインドが本場ですが、もともとの日本のカレーライスはイギリスから渡って来たカレーが元祖となっています。
つまり、こちらのカレー・・・・・明治維新とともにイギリスから日本に伝わった「英国式カレーライス」の正式な伝統レシピに則ったものであり、
それらの歴史に縛られないカレー店とは異なる、「洋食屋」さんのカレーのアイデンティティその物ですので、この辺りの特徴は、むしろ食べ手側が良く理解して頂くべきでしょう。
明治5年の「西洋料理指南」と言う書物に、カレーの作り方が掲載されているそうです。





セットで付く食後のコーヒーは、せっかくなので今回はアイスコーヒーにしてみました。
意外にも使われているグラスは気取りのないものですね。氷もクラッシュド・アイスではなく、普通に製氷されたままの物ですが、ランチのサービス品ですから、気にはなりません。
重くてスパイシーなカレーと、七色の旨味満載のハヤシライスをたっぷりと堪能した直後だったせいか、コーヒーの風味も味も大人しめで、やや水っぽく感じられてしまいましたが、
ハヤシライスとカレーライスの印象が、あまりにも強大過ぎたので、アイスコーヒーの味が普通であることに、むしろ安堵させられます。

めいっぱい興奮した心身を、冷たいアイスコーヒーが徐々にクールダウンさせてくれる心地よい時間が静かに流れます。



さて食べ終えての感想ですが・・・・・・再び、目からウロコが50枚は落ちた・・・・と言うところでしょうか。

実は、これまで「洋食」に興味がなかった理由として、洋食の代表選手の一つである「ハヤシライス」が好きではなかったから・・・・・と言う理由も大いにありました。
過去に、ハヤシライスを食べる度に思っていたのは、「なぜ、このような美味しくないメニューが存在するのかな?」「洋食が珍しかった大昔の過去の遺物なのかな?」と、ずっと長らく思ってきました。
水っぽいだけのトマトピューレに油と塩を混ぜてルーとし、そこへ薄っぺらいにも拘わらずボヨボヨと噛み切れない脂身だらけの安い牛バラ肉と、硬いままの玉ネギが入るイメージでした。
味は、トマトの酸味ばかり強くて、ともかく水っぽく、ソースが薄く、砂糖の甘さがして、旨味やコクは限りなくゼロに近い・・・・。
過去、メニューに「ハヤシライス」と「カレー」が並んでいれば、100%「カレー」を頼んで来ましたし、そもそも「ハヤシライス」などを頼む奇特な人などが実在するのだろうか、もしもいるなら、ぜひその理由を尋ねてみたいものだ・・・・などと思ってきました。

しかし、今回こちらの絶品ハヤシライスを食べて、今まで食べて来たハヤシライスが、いかに「イミテーション」「インスタント」であったか・・・・まじまじと悟らされました。
今まで、私は一度も「本物のハヤシライス」を食べていなかったのです。何事も「無知」と言うのは恐い事です。

そして、今までカレーライスの足元にも及ばない粗末で陳腐なメニューと考えていた「ハヤシライス」が、実はカレーライスよりも明らかに「高級な食べ物」であると、考えを新たにしてしまいました。
つまり、ハヤシライスは香りや味のインパクトの強い「スパイス類」をあまり使わない分、「素材のコクと旨味」で勝負しているので、きちんとした味を出そうとすれば、どうしてもドッサリ大量の肉類&野菜を使わざるを得ない非常に贅沢なメニューだと思います。
カレーのメインの味付けは単なる「スパイス」ですが、ハヤシライスは洋食屋の命と言われる「ドミグラスソース」が味の柱です。
使われている肉類&野菜の素材の量、そして仕込みの時間と手間は比較にならないと思います。
本物のハヤシライスに比較すると、普段口にするカレーライスのほとんどは、単に「辛さ」と「スパイス感」で味をごまかし、本来の旨味の不足を隠しているだけ・・・・と言う感想になってしまいます。


ちなみに、大満足と共に食べ終えてお店を出てから、かなりの満腹感があることに気付きました。
ルーがダブルで提供されたと言う「量」的なものも、もちろん関係していますが、どうやらそれ以上に、ルーにかなりの油脂類を使っているようで胃に油脂類がズッシリと重く「もたれる」感じでした。
さすがに、油脂をたっぷりと使う「クラッシック」の伝統スタイルです。
特にカレーライスのルーの、「ラード」、つまり油脂で煎ったボテッとした小麦粉によるコッテリとした食後感はなかなかの「重さ」です。
これならかなりの長い時間、お腹が空く事はないでしょう。

いずれにしても、これだけのリッチな素材と、たっぷりのボリュームと、高度な調理技術と、驚くべき手間をかけた絶品ルーを「ダブル」で頂いて、わずかに1800円というのは・・・・・
まさしく「感無量」であり、「客冥利」に尽きる・・・・と言えると思います。



(すべて完食)




↓続きあり






〜厳選洋食さくらい その3〜




2006年6月下旬 オックステールシチュー 3000円

前々回のビーフシチューの味が忘れられず、再訪してみました。
何気なく、メニューをめくってみたところ、「オックステールシチュー」があるのを新たに発見し、「これは食べねば・・・」と、さっそく注文してみました。




昼の開店直後に訪問したので、店内はまだ空いていました。
奥に見える黄色い花が飾られた場所がレジカウンターで、その向かいの白い柱に隠れてエレベーターがあります。
今回もカウンター席へ座りました。




さて、注文後、15分ほどでオックステールシチューが登場しました。
使われているお皿や盛り付けのレイアウトは前々回のビーシチューとそっくり同じです。

付け合せの笹がきゴボウ、シャトー切りのニンジン、プロッコリーは、ほぼ見た目どおりの味わいと言う印象です。
ただ、マッシュポテイトは、やはり無塩バターで溶き延ばした感じで、「ニュム〜」「ニョモ〜」とする独特な滑らか感のある舌触りです。そしてやはり塩気がほとんど感じられず、味が焦点化しずらい「モヤモヤ」「モヨモヨ」とする味わいです。
この不思議なマッタリ&ポッテリ感は、他ではなかなか経験できない、ちょっとミステリアスな食味です。





さて、「牛尾」は二つ入っていました。
右側がテールの中間辺りの肉で全形のもの、左側はテールの根元付近の肉で、肉がトロけて少し骨が露出した状態です。

まずは、濃い茶褐色のデミソースをスプーンですくって舐めてみました。
うーん・・・・「恐るべき口中ビッグ・バン」の如し怒涛の旨味と、深い「ほろ苦味」の醸す絶妙なコラボレーションです。
異次元濃度に凝縮された「旨味」のスゴサは相変わらずですが、今回のルーはやや油が多く浮いていて・・・・口当たりにバターのような「コッテリ・・・・」するしつこさを感じ、ややクドさがあります。
実際、ドミソースの表面に黄色い油が目立つ感じです。

白くかかっているソースは、酸味がありますので、やはり生クリームではなく、ヨーグルトなのでしょうか。
今回のデミグラスソースは、やや油っこさが強めで、口当たりがヘヴィであり、加えて、私の方も以前の衝撃体験を踏まえて、それなりに身構えて味わったためか、前々回のような「生体危機」を覚えるほどの・・・・過激な美味ショックはさほど強くは感じられませんでした。





尾骨から肉を外してみました。
フォークとナイフで軽くつっつくだけで「トロトロ・・・」と、簡単に骨から肉が外れました。

センターの尾骨の周囲を、グルリと肉の帯が取り囲んでいる感じですが、肉がかなりトロトロなので、ほぐしてしまうと尾肉の原形をとどめない感じです。
フォークで肉を刺して食べようとしても、肉がフォークからトロリとすり抜け、蕩(とろ)け落ちてしまうほどです。

まさに、「噛む」と言う行為を無用のものとしてしまった無類の口溶け感・・・・・写真から、肉のトロトロ具合が少しは伝わるでしょうか・・・・。
肉はあらゆる部分が均質にトロトロにとろけていて、ホロホロ、ホグホグするような肉の筋肉繊維と言うものがほとんど感じられず、「マッタリ・・・」として滑らかにトロける口当たりです。

それにしても、ここまでトロトロになるとは・・・・普通に赤ワインなどを使って調理してもこうはならないでしょう。
おそらくは煮込む際に、肉を柔らかくする炭酸水、タンパク質分解酵素を持つパイナップルやハパイヤ、圧力鍋など、様々なノウハウを駆使している気がします。

ただ、あまりにも「トローリ」とし過ぎていて、肉としての歯応えや輪郭がなくなってしまった感じもします。私的にはもう少しホクホクする肉の繊維の噛み応えが残されていても良いような気がします。
それでいて、舌の上で蕩けて淡雪のように「サーーッ・・・・」と姿が消えてゆく訳ではなく、「テカテカ」「キトキト」とする脂っこさを伴って、「モニャモニャ」とした状態で、口の中には長く留まる感じがあります。

また、オックステール特有の濃密なゼラチン質も溶け出して、全体に回ってしまったのか、「ムチョムチョ」、「ネトネト」、する感じはありません。肉の旨味自体も流れ出してしまった印象で、ほとんどソースの味に支配されています。





食べ終わると、尾骨が二片残りました。うーん、何とも・・・・・まるで「クリオネ」のような、独特でユニークな形ですね。
右側の骨は、デミソースが深く染み込んでいます。肉がすこぶる柔らかいため、煮込んでいる時から既に肉と骨がはがれがちの状態だったのでしょう。
デミソースは、パンできれいに拭って食べました。


さて、食べ終えての感想ですが・・・・・
今回のオックステールは、調理の限界に近いほど「トローリ」としていて、その類まれなる口解け感は、柔らかなトロける肉が好きな人には大いに喜ばれそうです。
ただ、その分、牛肉料理としての噛み応えやワイルドさがなくなってしまった感じもします。私的には、せめてもう少し、オックステールならではの複雑な肉の繊維感が残されていても良いような気がします。

また、食べている時から気が付いていたのですが、前々回のビーフシチューの時よりも明らかに、牛テール、デミグラスソースともに・・・・結構、「油脂」が多く、口当たりがキトキトとして、コッテリ感があり、ややしつこさが感じられる事が気になりました。
おそらくは今回、牛テール自体にかなりの脂肪があったと思われ、そこへ加えてバターの量が多めに使われていたようです。

そのため、腹心地がヘヴィで、腹持ちはとても良いのですが、後になって「ズゥ〜〜ン・・・・」と、やや胃にモタレる感じはありました。
もともと「凝縮&濃縮&油脂系」のルーに、さらに油脂が加わり、これならかなりの長い時間、お腹が空く事はないでしょう。



(すべて完食)











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