01ch グルメ食べ歩き
ぽん多本家
(東京都 台東区)

店名 ぽん多 本家(ぽんた ほんけ)
住所等 東京都台東区上野3-23-3 【地図表示】
禁煙 タバコ完全禁煙
訪問日 2006年6月中旬 カツレツ 2625円 
           穴子フライ 3675円
           ごはん・赤だし・おしんこ 525円 
2006年12月中旬 海老コロツケ 2625円
            カツレツ 2625円 
            かきフライ 2625円
            ごはん・赤だし・おしんこ 525円




〜上野 本家ぽん多 その1〜



2006年6月中旬 カツレツ 2625円  + 穴子フライ 3675円 + ごはん・赤だし・おしんこ 525円

今回は、都内でも屈指の「美味しいトンカツ店」との呼び声が高い、巷で評判の「ぽん多本家」(台東区・御徒町駅)さんを訪問してみました。
実際、インターネット上の「とんかつ系サイト」「グルメ系サイト」などを見る限り、こちらのお店を「絶賛」する記述が多数見受けられます。
しかも、その表現は「絶品のカツ」「感動的な美味しさ」などの最上クラスの賛辞が惜しげもなく贈られているお店なのです。

ところで、いつ頃から、誰が呼んだのか・・・・世に「上野とんかつ御三家」なるものがあるらしく、どうやら具体的には「双葉」、「蓬莱屋」、「本家ぽん多」を指すようです。
私はこの御三家のいずれにも未訪問でしたが、今回、初めてこちらの「本家ぽん多」を訪問してみました。
本家ぽん多は創業明治38年ということで、御三家の中でも最も老舗と言う事になるようです。
宮内庁のコックを務めていた初代創業者が、パン粉を付けて豚肉を油で揚げる「カツレツ」を初めて考案したそうで、それが今のトンカツのルーツになっていると言う説もあるようです。




お店は御徒町駅、上野御徒町駅、上野広小路駅、仲御徒町駅、湯島駅などから、それぞれ徒歩1〜3分程と交通至便な場所です。
写真の奥にチラッと見えるのがJR御徒町駅のガードです。上野松坂屋デパートの南館のすぐ近くになります。




看板は右から左へ店名が書かれていて、「ぽん太」や「ぽん田」ではなく、「ぽん多」です。
重厚な観音開きのドアが出迎えてくれます。
1Fは店内が見える「窓」が一つもなく、ノレンなども出ないので、扉横の「営業中」の札が良い目印になります。




1Fは厨房スペースと、カウンター席になっています。
落ち着いた照明で、高級感に溢れる調度品、実に大人の雰囲気です。




左手に2Fへ上がる階段があります。
この日は二名で伺ったため、二階席へ案内して頂きました。




階段の途中にあるコーヒーカップとソーサー。
アンティークのコレクションなのでしょうか・・・。




二階席です。「寸分」の誤差なく、きっちりと整列させられた椅子とテーブルに、一流店の作法を垣間見る気分ですね。
こちらのお店はジャンルでは「洋食」になりますが、内装は「障子」などをあしらい、「洋食」と言うより「和食」の雰囲気でまとめられています。

この日は、夕方の部の開店と同時に訪問したため、夕方の部の一番乗りでした。
昼のピーク時などはかなり混雑するようです。




「よしず」が窓からの陽光を優しく和らげます。
よしずの先には「ガラス」がはめ込まれ、しっかりと防音効果を発揮しています。
上野や御徒町の喧騒からほど近いにも拘らず、とても寛げる落ち着いた快適空間です。




メニューです。「フライ」「ソテー」「シチュー」・・・など、洋食屋さんならではのメニューが並びます。
ちなみにトンカツは「トンカツ」ではなく、「カツレツ」としてメニューに加わっています。
また、上段に並ぶメニューはいずれも「料理単品」ですので、「定食」スタイルで食べる場合には、別途下段の「ごはん・赤だし・おしんこ」を同時にオーダーすることになります。

白紙が貼られた品は仕入れの状況によって「品切れ」になっているようです。
一部「時価」となっているのは、高級食材ゆえ、旬や市場の値動きで仕入れ値が変わるためでしょう。

この日は、二名で伺ったので、私が「カツレツ」、同行者は「穴子フライ」を注文し、合わせてそれぞれ「ごはん・赤だし・おしんこ」もオーダーしました。




トンカツと相性の良い「ほうじ茶」と、手削りの楊枝です。
厨房は一階ですが、二階にも配膳用の小さなスペースがあり、そこに店員さんが常駐していてくれますので、メニューの追加やお茶のお替りなども全く不便はありません。

この後、注文から約18分ほどで「カツレツ」と「穴子フライ」が同時に登場しました。





さて、いよいよ「カツレツ」+「ごはん・赤だし・おしんこ」の登場です。
フレンチ料理店などで使われそうな、ゴールドの縁取りがある美しい洋食器で登場しました。
ちなみに、今回はせっかく二名で訪問したので、「カツレツ」と「穴子フライ」を半分ずつシェアして食べたのですが、上の写真ではうっかり、同行者の分の「おしんこ」まで撮影してしまいました。
くれぐれも一人前に「おしんこ」は一皿だけです。

箸やご飯茶碗の大きさと比べると、カツレツの大体の大きさが判るかと思いますが、結構「厚み」がありますので、実際には見た目以上にボリュームがあります。
厨房は一階ですので、調理の様子は全く判りませんが、インターネット上では「ぽん多」の調理法について、「始めに低温の揚げ油で10分前後じっくりと熱を通し、最後に短時間だけ高温の揚げ鍋へ移して、カラッと揚げ上げる・・・」旨の記述をしているサイトが見受けられます。
いずれにしても、かなり淡いキツネ色から想像するに、カツを低温でゆっくりと揚げているのは間違いないでしょう。

ちなみに使われる豚肉は全てロース肉だそうで、こちにのお店ではヒレ肉は使わないそうです。
付け合わせとして、ポテトフライが一つ付いてきます。





さて、この「カツレツ」を見て、その独特な形に少々驚きました。
普通、ロースカツと言うと、大抵は「瞳型」「涙滴型」のような形をしています。これは豚のロース肉の形がもともとそう言う形だからです。
ですが、こちらのカツレツはハンバーグのような見事な「楕円形」ですね。しかもかなりの厚みがあります。
この時点で、これは今まで食べ歩いて来たロースカツとは違うなと直感しました。

ちなみに、右上に見える小さなフライは、付け合せの「ポテトフライ」です。
食べてみますと、水分が多く、大きさから言っても、おそらくは未成熟の「新じゃが」と言う感じの幼い味です。
5〜6月は新じゃがの季節ですので「旬」の味とも言えますし、完熟じゃがいもにはない、フレッシュでデリケートな美味しさがあります。
実際、フライの技術が素晴らしいせいか、「若さ」はあるものの、パンチのある美味しさです。





カツレツを広げて断面を見てみました。
熱々のカツの中心部に肉汁が集まり、うっすらと滲み出ています。
うむむ・・・・ところどころ小さな空洞があるのは不思議ですが・・・・肉の血管や、スジや、脂肪を「掃除」した跡なのでしょうか。

まずは、何も付けずにカツを一切れ食べてみました。
衣は決して「カリカリ」とかはせず、「サクサク」と「しんなり」の中間のような・・・・僅かにふやけたように「ウェット」なタイプです。
植物油で揚げているのか、熱し焦がされたラードの香ばしい焦げ風味も感じられません。
肉自体の旨味は、「上品」と言うか、「淡白」と言うか・・・・カラーイメージで言うと「白」のイメージの味わいです。

量感や適度な肉汁はあるものの、「あっさり」としていて、獣臭もなく、いわゆる「濃い肉の味」ではありません。
歯応え的には肉の繊維を結構感じます。これはまさしく厚切りの豚ロースの赤身肉独特の歯応えですが、単なる「がっつり」と引き締まったロースの赤身肉ではなく、肉をよく叩いたのか、脂身や筋の掃除をしたからなのか・・・・一度、肉の繊維を軽く「ほぐして」から、再度キチッと寄せて、再び上手に「成形」したような食感もあり、肉を揚げる前に、かなり「手を加えている」「下ごしらえしている」と言う印象です。
ただ、そのせいか、肉の繊維に断裂感があり、歯応えがやや「バサバサ」として感じられます。

そう言う意味では、慣れないとやや不自然な食感にも感じてしまいますが、「脂身」や「筋」の部分を包丁できれいに取り除いてあり、いわゆるこれが「肉の掃除」と呼ばれるプロの技なのでしょう。
決して硬くはないのですが、肉に厚みがあり、サシが少ないのでなかなかの弾力と噛み応えがあり、奥歯で「モギュ、モギュ」と噛み締め甲斐があるのですが、噛み砕くと言うよりも、「噛みほぐす」ような食べ方になります。

また、サシの入った豚肉のジューシーな口解け感、自然にトロける滑らかさ、モチモチとする粘りと柔らかさ・・・・などを追求する人にとっては、肉の歯応えや厚みによる量感がありすぎると感じるかも知れません。
一方で、肉質はともかく淡白で上品なので「獣らしさ」が少なく、「肉を食べた」と言う感じがやや希薄にも思いますし、衣もしっとりとしたウエットタイプで、焦がしたようなラード風味や濃い匂いが後を引きません。濃い色のガリガリするワイルドなとんかつが食べたい方には、どこかしら品良くまとまり過ぎていて、やや物足りないと言うかも知れません。

要は、筋が周到にすべて切れていて、脂身も一切見当たらないので、普段食べているロースカツに比較すると、どこかしら加工感と言うか・・・・生の豚肉を揚げたと言うよりも、職人が加工した上品な「肉製品」を食べた・・・・と言う印象です。
ただ、これこそが洋食伝統の「技」なのですから、むしろこう言ったお店側のスタンスを、食べ手側が良く理解して訪問する事が、何より肝要でしょう。


さて、次の一切れは「塩」だけを振って食べてみました。
カツの味が増幅する感じで、輪郭がクッキリとして、味にパンチが出ます。しかも、塩味の追加で全体に勢いが付く感じですが、ミネラルの結晶体である塩ですと余計な風味が追加されないので、あくまで肉と衣の味自体が純粋に楽しめます。
ただ、厚みがありますので、カツ全体に万遍なく塩味が行き渡る事はなく、やや表層的もしくは部分的に塩気が目立ってしまい、部分的に味に尖りが出て、さほど相性が良いとは思えませんでした。





卓上に置かれた、ウスターソース、ケチャップ、塩、カラシです。

さて、三切れ目ですが・・・・ここで、卓上のウスターソースを使うべきかどうか迷いました。
過去のとんかつ店では、「こだわり」のあるお店ほど、ついつい力み過ぎてしまうのか、用意されているソースも大抵は明確に美味し過ぎる事が多く、ソースの味が勝ち過ぎて肝心の肉の味が判りづらくなってしまったり、ソースの味がトンカツの味を追い抜いてしまい、ソースの味ばかりが独走してしまうと言う経験が多かったからです。
もしくは、お店がトンカツの完成度に注力するあまり・・・・トンカツの下味が付いた状態で既に味が「完成」していて、ソースの味が余計な存在に感じられ、むしろソースの味の居所がない感じになってしまう事もあります。

しかし、ところが驚いた事に・・・・・こちらのお店のカツレツは、ウスターソースを少しかけて食べてみたところ、普段着姿からいきなり高級ブランドスーツへ着替えたかの如き、数段階も上の美味しさが現出しました。
ソースをかける前のトンカツは、何だかやや大人しく感じられていたのですが、めきめきと明確なパンチのある鮮明な美味しさになり、味にはっきりとした「主張」が出て来ました。

ウスターソースの味を得て、ついに「完成形」となり、いよいよこちらのカツレツがその実力の全容を現して来たという印象・・・・いよいよエンジンがかかり、本番到来、こちらのカツレツが「俄然」本領を発揮して来たイメージです。
しかも、キレとスパイス感のあるウスターソースの味が加わることで、唾液の分泌も促進され、無性にご飯も欲しくなって来ます。この「ご飯」が欲しくなる感覚・・・・「食事」として考えても、こちらのカツには断然「ウスターソース」をかけた方が、食が進みますね。ご飯がグイグイ、バクバクと進む、「ご飯を食べさせる力」のあるカツへと成長するイメージです。

ちなみに、こちらのウスターソースの味は、辛口でスパイシーでキレがあり、味の輪郭が非常にはっきりとしています。ビールで例えれば、まさに「ドライ」系と言う表現が似合うかも知れません。舌触りはウスターらしく、実にサラサラで、後味がスッキリとしていますが・・・・どこかしら、隠し味として極々微量の醤油を混ぜているような・・・・印象も受けました。単なる勘違いのようにも思いますが・・・・。





さて、三切れ目のカツを半分ほど食べたところで、初めてご飯に手をつけました。
実は、ご飯にはほとんど期待していなかったので、評価対象外と思って後回しにしていたのですが、数秒後・・・・その考えがあまりにも大きな「誤解」であった事を嫌と言うほど思い知る事になりました。

写真のご飯は少し食べた後での状態です。最初はご飯などを単独で撮影する必要はないと思ったのですが・・・・二口ほど食べて、その凄まじいまでの美味しさに度肝を抜かれ、急いで写真を撮りました。
後で写真を見てみると、そのピンッと美しく立ち揃ったご飯粒に「非凡なオーラ」をはっきりと感じますが、カツレツと一緒に登場してしまったため、ついついカツレツばかりに目を奪われてしまって、いざ食べてみるまで気付かなかったのが正直なところです。


こ、こ、この「ご飯」の異次元の美味しさたるや・・・・・
まさしく目からウロコが100枚は落ちる・・・・「ウルトラ・ショッキング・テイスト」です。

そのあまりにも「神がかり」的な「奇跡の美味さ」に・・・・・
頬張る度に、私の体がバネ仕掛けのように、椅子の上で、激しく、大きく、盛んに「縦揺れ」してしまいました。
ブルブル、ガクガクと、身震いが止まりません・・・・おそらく、椅子の上で10cmは宙に浮いていたでしょう。


何より「米」の質そのものも「超絶品高級米」だと思いますが、同時に・・・・その米の素晴らしさを一切余すことなく、
恐ろしいほど見事に炊き上げられている事実に、鳥肌の立つほどのショックを受けてしまいます。

ご飯はやや硬めの炊きあがりで、ご飯の一粒一粒が「ピンッ」と美しく立ち揃い、「一粒」としての自身の姿形を見事に保っています。
すべての米粒の表面が、無類の表面張力を持っていて「プックリ」と膨らんでいます。そのためご飯の一粒一粒がしっかりと歯に触る感じがあり、噛んでみると、まるで「イクラ」のように、無数のご飯粒が一粒ずつ「プチプチプチ・・・・」と口の中で弾ける感覚があります。
そして歯が「プチッ、プチッ・・・」とその表面を破裂させる度に、米の一粒ずつから旨味が噴出し、味が湧き立って来て、凝縮されていた米の美味しさが迸り出るイメージなのです。
口当たりはややドライなのに「ふっくら」としていて、決してパサ付いている訳ではなく、噛めば噛むほど、どんどん旨味が増幅し、自然な甘みが湧き立って来ます。

いやはや、旨味がなんと「ギッシリ」と濃厚に詰まっている米なのでしょうか・・・・モチョモチョと柔らかく粘るような「緩い」感じはなく、一粒一粒をしっかりと「噛み潰す」食べ方になります。
まさに、この美味しさこそが「白米」の真実を語る美味しさなのでしょう。

おそらくは超強烈な火力で一気に炊き上げるのはもちろん、火を落とした後でのご飯の「蒸らし」の仕上げが、完璧なのでしょう。
炊いた際に水気に混じって外部へ流出した米の旨味を、釜の中での十分な「蒸らし」を経て、「湯気抜き」の際にご飯全体の「水分」を非常に巧みに飛ばし、旨味のみを再びご飯粒へ「全て完璧に引き戻している」気がします。
余分な「水気」が米の表面に残らないからこそ・・・・・米本来の「旨味」が、この小さな飯粒の中に、凄まじいほどの濃度で「ギュウ〜〜ッ」と凝縮&濃縮され、閉じ込められている印象です。

水が多すぎたり、湯気抜きが不十分なご飯は、ご飯が緩かったり、ご飯の表面がビチャビチャしていたり、粘度のある「ダマ」になっています。ダマの中身はベッチョリと米粒が結着した「糊」状態です。
一方で、水が少なすぎたり、蒸らしが足りなかったご飯は、硬い芯が残ってしまい、ガサガサする粗い食感が出て、米本来の甘味や旨味も感じられません。


そしてさらに驚いたのは、先の「ウスターソース」に加え、「絶品ご飯」と言う秘宝アイテムを手に入れた「カツレツ」は・・・・まるで単独で食べた時とは完全に「別物」と思えるほどの美味しさへと・・・・更なる「大変貌」「大化け」を遂げたことです。

「カツレツ」の衣は「しっとり」、肉は「ホクホグ」と言う感じで、肉は一切とろけず、繊維感が揃った感じもなく、どこまでも「淡白」な旨味と弾力のある肉質です。
このカツレツを単独で食べた時の正直な感想としては・・・・「美味しいけれど、肉が厚いのでボリュームがあり、淡白なので、最後は食べ飽きてしまいそう。」でした。
しかし、このカツレツ・・・・キレのあるウスターソースを少しかけ、ホカホカのご飯と一緒に食べると、「俄然」、美味しさが満開に花開き始め、全開「フルスロットル」のスピード感で箸が進むのです。
組合せの妙味、出会いの相乗効果、カツレツの美味しさもグググーンと、「数倍にUP」します。

ちなみに、こちらのお店のカツレツは「塩」だけで食べても美味しいと言う話も耳にしますが、確かに「カツ」を単独で食べる場合は、その優しい口当たりと、淡白な肉の旨さをそのまま生かせる「塩」でも良いかも知れません。
ただし、実際にはご飯と一緒に「おかず」として食べますので、そうなると俄然、「ウスターソース」の方が遥かに全体のバランスが良く、ご飯もカツレツも一層美味しく頂けると思いました。
辛口のウスターソースの、コク、キレ、スパイシー感が、味の輪郭を描き、まさしく、完璧な味覚ワールドが出現します。箸のスピードもぐんぐん加速しました。

また、こちらのお店はドロリとした「とんかつソース」は置いてなく、敢えてウスターソースしか置いていません。
しかし、こちらのカツレツには、トロッとして口当たりの鈍重な中濃ソースやトンカツソースではなく、実はサラッとして口当たりにキレと軽さのあるこのウスターソースこそが、一番良く合うと思います。と言うより、長年に渡りウスターソースと二人三脚で、今の味に到達し得たのだと思います。
実際、小皿を出してくれますので、ケチャップとウスターを混ぜて、ドロリとしたトンカツソース風にして食べてみましたが、口当たりが「もったり」と重くなり、味が「ベッタリ」とクドくなり、厚みのあるカツの味を殺してしまい、まるで合わなかったですね。





さて、カツが熱いうちは肉汁が豊かな感じですが、次第に冷めて来ますと・・・・肉汁が「衣」へ吸収されてしまい、肉が締まり、やや「モソモソ」とする乾いた肉の食感に変化してしまいます。
こうなると、ジューシーさが薄れ、舌の上でトロけるような食感も全くありませんので、味わいが多少「バサバサ」していると感じる人もいるかも知れません。
一方の「衣」は「ベシャッ・・・・」として、やや湿ったようにウエットで重くなり、ふやけたように柔らかな感じになって来てしまいます。
そのため、早めに食べ切りたいところですが、肉が厚く、ボリュームがある上・・・・何しろ「ご飯」が非常に美味しいので・・・・カツだけを食べ続ける訳にもいかず、何とも、悩ましいところです。

しかし、ここで思わぬ助け舟が登場しました。
あまりにもご飯が美味しいので、カツより先に、ご飯を食べ尽くしてしまったのですが、店員さんへ「ご飯のお替りは有料ですか?」と尋ねたところ、「無料です」との実にありがたいお返事。
さっそくご飯のお替りを頂いたのですが・・・・・この後、あまりにも予想だにしなかった展開が・・・・・。


実は最初のご飯は、カツを三切れほど食べてから口を付けたため、食べるまでにかなりの時間が経ってしまい、実はちょっと冷め気味だったのです。
しかし、しかーし・・・・・お替りのご飯は、まさに「ホッカホカ・・・・」と湯気が上がる熱々の状態で食べ始めました。

その結果・・・・・熱々の「お替りご飯」の美味さたるや、一杯目のさらに一層「数倍のパンチ」を放つ、「超弩級」、あまりにもアンビリーバブルな怒涛の美味しさです。
一口頬張るたびに「ガクガク」と激しい身震いが起き、私の体が「ブルブル」と「立て揺れ」しているのが自分でもはっきりと判りました。まさに全身に「マグニチュード7」クラスの大地震が起きている感覚です。
ご飯を噛み締めるたびに、お腹の底から次々に突き上げて来る「激しい歓喜」の感情に、全身が耐え切れず、翻弄される感覚です。

今までは、ご飯の美味しさを単独で楽しむなら、ご飯は「塩」と相性が凄く良いので、どれほど美味しいご飯でも「塩」を一振りした方がさらに美味しくなると思って来ました。
しかし、こちらの完全無欠の「白飯」の前には、あらゆるオカズ、あらゆる調味料、「塩」や「お茶」までもが無用の長物ですね。と言うより、この純粋な「米の旨さ」を何者にも邪魔されたくないと言う強い気持ちに成ってしまいます。

一切何も加えず、何も足さず、もし叶うなら・・・・この「ご飯」だけを、このままずっと「永遠に」食べ続けたいと言う強い衝動にかられます。
目の前の「ご飯」以外の、あらゆるものが邪魔と言う気持ちです。

はやる気持ちを抑えつつ、一口、一口、噛み締めながら・・・・気が付けば、ご飯だけをそのまま「一杯」食べ尽くしていました。
いやはや・・・・究極の「至福体験」、まさしく「感涙にむせぶ」状態です。

過去、無数のご飯を食べて来て、今までも美味しいと思うご飯は沢山経験してきましたが・・・・私的には、史上三指に入る絶品の超絶ご飯です。
5年ほど前に長野県の某高級温泉旅館で食べた「絶品ご飯」、そして去年の秋に「天ぷら近藤」(中央区)で食べた「絶品ご飯」、そして今回の「ぽん多本家」の「絶品ご飯」・・・・・その美味しさは、あまりにも世間の水準を大きく抜きん出ています。。
「白米」の美味しさだけで、ここまで打ちのめされてしまう体験は、今回で三度目になります。


さて、まだカツが残っていますので、恐らくは非常に高価なプレミアム米を使っているのであろうこのご飯、恐る恐る二度目の「お替り」をさせて頂きました。
そして・・・・カツレツにウスターソースを少しかけて、ご飯と一緒に頬張ってみて、またまた度肝を抜かれてしまいました。
「天上天下唯我独尊」・・・・他のあらゆるものが邪魔と思えたこの気高い「ホカホカ白飯」が、何と言うことか・・・・この「カツレツ+ウスターソース」とは、抜群の相性を見せるのです。
ホカホカの熱々ご飯が加わることで、既に冷め始めたカツレツを、補って余りある美味しさ。ご飯の熱気にほだされて、「カツレツ」も活き活きとして、最初の頃の美味しさが噴出して来るイメージです。

そう言う意味では、おそらくは意図的に御飯茶碗はやや小振りにしつらえられているものと思われます。
食事の途中、タイミング良くお替りをすることで、常に熱々のご飯が加わり、美味しさの「一口目の感激」を何度でも堪能させてくれる素晴らしい工夫だと思います。





赤出汁です。蓋付きの容器で提供されますので、多少時間が経過しても熱々の状態で頂けます。
具はトロトロ、ヌルヌルの「なめこ」です。僅かに浮くネギは「あさつき」でしょう。

ダシはカツオ節メインですが、八丁味噌の濃度と塩分感が、これまた恐ろしいほど見事に「的を射て」いますね。
超絶ご飯とカツレツの、名補佐役として文句のない仕上がりです。





「香の物」は「タクアン」「白菜」「キュウリ」でした。タクアンには花カツオが散らされています。
食べてみると、ヒンヤリと心地良く冷やされていて、その冷たさが口中をサッパリとさせてくれます。特に暑い夏などは漬物が生ぬるいと「興ざめ」してしまいますので、こう言う「冷やしておく」配慮はポイントが高いでしょう。

タクアンは「ボリボリ」「ゴリゴリ」と歯応えが強めで、繊維が粘ってねじ切れるような感触があり、良く噛む事になりますので、その分、歯や舌の油をきれいさっぱりと拭い去ってくれます。
あまり糠の風味はないのですが、醤油が最初から少しかかっていました。箸休めとして食べるのであれば「薄味」が好きなので、個人的には醤油なしで食べたいです。


付け合せの千切りキャベツもまた抜群の美味しさでした。
一つかみ頬張れば・・・・口の中で「フゥワァリ・・・」と優しくほぐれ、まるで「淡雪」のように繊細な口当たり・・・・この肌理の細かさ、この柔らかさ・・・・間違いなく、上質の「春系キャベツ」を使用した美味しさでしょう。
そして、さらにこの千切りの細さ、巧さ・・・・これぞ、まさしく「千切り」と言える美味しさですね。こちらのキャベツの見事な刀工の技量に比較すると、他店のキャベツは「百切り」や「五十切り」程度と言うイメージになるでしょうか。

「サクサク」と軽やかな歯切れが素晴らしい快感で、すべての断面から「ジワジワー」とキャベツの野菜としての旨味が流れ出して来ます。
さらに、瑞々しく、ヒンヤリ感があり、カツによって油ぎってしまった口中をものの見事に洗い流し、キャベツの薬理成分が優しく胃腸をリセットしてくれる感覚です。

カツレツ以外の、ご飯、赤だし、香の物、キャベツ・・・・を一通り頂いたところで、「なるほど・・・・」と思いました。
トンカツ食べ歩きと言うと、ほぼ100%「カツ」のことばかりが話題になり、評価の対象となりがちですか、実際には、「カツ」だけを単独で食べる事はほとんど有り得ないでしょう。当然のように「ご飯」「汁物」「漬物」などと一緒に、交互に食べるものなのです。こちらのお店は、この辺りの基礎中の基礎を「さすが判っているなあ・・・・」と感心しました。



さて・・・・食べ終えての感想ですが・・・・
長い歴史のある名店は「さすがキャリアが大きく違うな・・・・」と、すっかり感心させられてしまいました。

世の多くのとんかつ専門店が、「とんかつ」の出来栄えばかりに熱中し、血道を上げ、鎬を削り、他のご飯、汁物や漬物、ソースなどは、まるでオマケだとでも言わんばかりに、「出せばいい」的に「おざなり」になっていると感じる事が多い中、こちらのお店はあくまで、ご飯や汁物と非常に高いレベルで「三位一体」となってきちんと一つの「味」としてバランスしています。
単なる「カツ」自慢に終わらない、この恐るべき三位一体感こそが「本家ぽん多」の真骨頂に間違いないでしょう。

大切なのはトンカツ単品の個人プレーではなく、「一食全体」としてのバランスとチームワークの良さなのです。
特に、「トンカツ」を食事として食べる以上、「ご飯」は必須のパートナーとして、絶対に欠かせない大きな存在でしょう。
したがって、まずはこの二者の実力がきっちりと「同水準」以上に揃って存在すること、「二人の息がピッタリ合う事」が、何より大切だと思います。

私も今までは、トンカツを食べる場合・・・・「カツ」の美味しさが何より最も重要であり、評価の対象だと思って来ました。
しかし、今回こちらのお店を訪問してそれではダメな事に気付きました。カツの出来がどれだけ完璧でも、それではせいぜい良くて70点と言うところでしょう。
トンカツを「定食」形式で食べる限りは、本気で100点満点の得点を得ようと思うなら、「カツ」以外のアイテムにも、本気で同様の注力をする必要を強く感じます。


実際、「トンカツ」だけを単独で評価したり、使われている「豚肉」のプレミアム度だけに着目すれば・・・・「ぽん多」を凌ぐお店は存在するかも知れません。
しかし、いざ「食事」として、「カツレツ」、「ソース」、「ご飯」、「赤だし&おしんこ」・・・・と揃うと、私の知る限りでは二位以下を大きく引き離して、まさしく「無敵」の存在感です。
他の多くのとんかつ店とは、明らかに「格が違う」「次元が違う」「キャリアが違う」・・・・と感じます。



さて、最初に述べたとおり実はこの日は二人で訪問しています。
同行者は「穴子フライ」を注文しましたので、お互いにシェアして、「カツレツ」と「穴子フライ」の両方を半分ずつ頂きました。
以下は「穴子フライ」のレポートです。





穴子フライはカツレツとは異なり、絵皿で登場しました。
ちなみに、こちらもうっかり、同行者の「おしんこ」まで撮影してしまいましたが、くれぐれも一人前に「おしんこ」は一皿だけです。

カツレツとは異なり、キャベツの千切りではなく、レタスやトマト、パセリ、レモン等が添えられます。
レタスは軽くドレッシングがかけられ、和えられていました。





さて、いよいよ穴子フライの実食です。
まずは何も付けずにそのまま一切れ食べてみますと・・・・見た目からすると、カツレツと同じパン粉や揚げ油を使っているようですが、衣は遥かに「フワリ」「カラリ」としていて、あまりウェット感がないですね。
歯触りが心地良く、「サクサク、サックリ・・・・」としていて、口当たりに香ばしさと軽さがあり、衣自体が「パリッ」としてクリスピーな印象です。
そして穴子の身は、淡白で上品な、まるで「貴婦人」のような凛々しくも「ふっくら」とした優しい味わいです。

あくまで想像ですが、もしカツレツでは「低温」と「高温」の油鍋を使い分けているとしたら、こちらは「高温」の鍋だけで揚げた印象です。
それほどに「カラリ」と気持ちよく揚がっています。
また、時折、同じ鍋で「豚肉」や「海老」や「白身魚」をフライにするお店では、淡い風味の海老や白身魚に豚肉の強い獣風味が移って付いてしまうことがありますが、そのような印象も絶無でした。

ただ、極微細なレベルですが・・・・穴子の皮ぎしの油の風味が感じられ、私は全く気になりませんが、ひょっとしたら魚独特の匂いが苦手な人にとっては、恐らくは千人に一人位の確率だと思いますが、この風味を僅かに生臭いと感じる人もいるかも知れません。
ただ、レモンをかけるとすっかり消えますし、さらにはウスターソースをかけると、全く判らなくなりましたので、実際には全くノープロブレムでしょう。

添えられたレタスやトマトもひんやりと冷やされ、新鮮で、クリーンで、とても美味しいです。
ドレッシングは極めて薄味で、野菜の「素の美味しさ」を一切邪魔せず、そのオイル感が落ち着いた味わいを付与しています。





断面を見てみますと、キツネ色の衣の合間から覗く、穴子の「純白の白身」が美しく光り輝いています。
そして、「天ぷら」ではなく、あくまで「フライ」になっているからなのか・・・・この穴子にまた「ウスターソース」が非常に良く合います。
非常にハッキリとした輪郭の明瞭な味わいになるとともに、同時に、見事に「ご飯」が欲しくなる味になります。
この辺りの「采配」、「仕上げ」は、カツレツも穴子フライも、決して単品で食べるのではなく、やはり美味しい「オカズ」として、仕上がっていると言う印象です。

あくまで美味しい「食事」を提供すると言うコンセプトなのでしょう。
いかに良い素材を使った「カツレツ」でも、「穴子フライ」でも・・・・それはあくまで「主菜」(オカズ)であり、「副菜」であり、オカズは「主食」(ご飯)を美味しく盛り上げてこそ「ナンボ」なのでしょう。

そして、「穴子」と言うと・・・・どうしても「お寿司」や「天麩羅」のタネと言うイメージがあり、果たして「フライ」にして合う物なのか・・・・と思っていましたが、実際には、パン粉やウスターソースとも非常に相性が良いですね。
さらにレタスやトマト、パセリが添えられて・・・・穴子とは言え、見事に「洋食」を食べているイメージになります。全く違和感なく、とても美味しく頂けました。
なお、写真ではやや小骨が目だって見えますが、実際には全く気になりませんでした。


さて、食べ終えての感想としては・・・・・
十分に美味しいですが、トータルで4200円と言うプライスを考えますと・・・・私ならトータル3150円の「カツレツ」の方を選ぶと思います。
こちらは「肉」よりも「魚」、特に「穴子」が大好きと言う人向けのメニューのような気がしました。





さて、最後に再びこちらの「絶品米」の美味しさについて、少しレポートしたいと思います。

あまりにもご飯が素晴らしく美味しいので、思わず店員さんに「米の銘柄と産地」を訪ねてみました。
答えは・・・・当然と言うか、やはりと言うか・・・・「新潟県産のコシヒカリです」とのお返事でした。


そして、ここで、ふと思った事は・・・・・こちらのお店の料理の価格帯とご飯の美味しさの「相関関係」についてです。
改めてメニューを見てみますと、料理とご飯セットを頼めば、最も安くても「3150円」以上になります。実はこの3000円を超す「最低価格」こそが、何よりこちらの「ご飯」の美味しさの秘密でしょう。
実際、「お米」は農作物の中では桁違いに流通量が多く、しかも銘柄や産地により毎年ほぼ同じ内容の米が生産されるため、その食味の美味しさに正確に比例する「市場価格」が厳然として形成され尽くしています。
つまり、「美味しい米ほど値段が高く」、「まずい米ほど値段が安い」と言う「一物一価の法則」がほぼ完璧に成り立っている農作物の代表です。逆に言えば市中で購入する限り、「低価格なのに美味しい米」は決して存在しないことになります。
おそらくこちらのお店のコシヒカリは、その無類の美味しさから判断すると、10キロ当たり8000円〜10000円前後の「最高価格帯」となるプレミアム米を使っているのは間違いないでしょう。

とんかつ屋さんでも、よくランチタイムなどに800円位の低価格メニューを設定する一方で、自慢の最高ランクのトンカツには3000円位の価格を付けているお店もあります。
それはそれで結構な事なのですが、しかしそういうお店では800円のトンカツも、3000円のトンカツも・・・・おそらく、豚肉の質と大きさが異なるだけで、「ご飯」についてはおそらくは同じ釜からよそっているのではないでしょうか。
そして出るメニューの比率で言えば、おそらく圧倒的に800円位のトンカツの方が多いでしょう。

こうなるとお店としては、どうしても「800円」の定食に合わせた米をすべての定食に使う事になるのではないでしょうか。
800円で出すトンカツ定食で赤字にならない米と言えば、廉価な業務用の米にならざるを得ないでしょう。実際、業販店などへ行くと古米などがブレンドされた10キロ1980円と言う安価な米も売られています。
こうなると・・・・「3000円」の高価なトンカツ定食を頼んでも、「3000円」のカツに見合う美味しいご飯は期待薄です。さらには香の物や赤だしも・・・・800円のトンカツを基準にした「質」になっている可能性があります。

つまり、もし、「絶品ご飯」を期待するのであれば・・・・3000円以下の定食メニューが存在しないトンカツ店を選ぶ・・・・と言うのも一つの方法なのかも知れません。



                      〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜



さて今回、本当に良い米はこれほどまでに「凄まじく美味しい」のかと、改めて感服させられました。
と、同時に・・・・・良い米さえ入手すれば、米を上手に炊く位なら自分でも出来るだろうと思い、後日、自宅でこの「究極のご飯」を再現してみることにしました。

大型スーパーや米屋さんを数軒回り、最上級の食味と言われている「新潟県魚沼産コシヒカリ」の平成17年産の米を買い求めました。10Kgで8000円ほどと、通常の米の2.5倍ほどの値段でしたが、これであの「超絶ご飯」が再現できるなら実に安いものです。

消毒液の臭いを防ぐため水道水は使わず、たっぷりの天然水で米を丁寧に良く研いで、磨いて、浸漬時間と水量をきっちりと計り、炊いてみました。
しかし、ワクワクしながら炊きあがったご飯を食べてみましたところ・・・・あの美味しさの「半分」程度しか再現できませんでした。
釜に備長炭を入れて炊くと、炭による「遠赤外線効果」や「浄水効果」で、ご飯が美味しくなると言うので、二度目のチャレンジ時は入れて炊いてみましたが、しかし・・・・確かに匂いがすっきりし、ミネラル分が増えて一回目より瑞々しいきれいな味わいになったものの、やはり遠く及ばない味でした。
あの米粒一つ一つが「プチプチプチ・・・と弾ける感じ」「旨味がギュギュ〜ッと凝縮した感じ」・・・・が全く出ないのです。

同レベルの米を使ったにも関わらず、この大きな違いは・・・・恐らくは「釜」の違い、そして一度に炊く「量」の違いが原因でしょう。
美味しいご飯を炊くコツは、始めチョロチョロ・・・・中パッパッ・・・・と言われるように、最初にゆっくりと熱を通し、その後は猛烈な火力で「一気に炊き上げる」のが理想だと言われています。
その点、私の家の小さな「電気釜」では火力に限界があります。恐らく「ぽん多」では一気に猛烈な火力を出せる業務用の大きな「ガス釜」を使っているのでしょう。
また、よく言われる事ですが、ご飯は一度にある程度大量に炊かないと米の本当の旨さは出ないと言います。私は一度に三合しか炊きませんでしたので、恐らく味が乗らないのでしょう。
つまり、本当に美味しいご飯は、最上の米を手に入れるだけでなく、一度に何十人分もの量をガス釜で炊ける「店舗」でしか味わえない領域が厳然として存在することになります。

それにしても六月のこの時期でこれだけご飯が美味しいとなると・・・・「新米」の出回る「秋」に訪問したら・・・・一体、どれほどの想像を超える「超絶ご飯」が提供されるのか・・・・考えただけでも喉が鳴り、胸が高鳴ります。
また、言うまでもなくご飯は炊き立てが一番美味しい状態です。「ぽん多」では、ご飯を炊くのは一日に一度なのか、何回かに分けて炊いているのかは判りませんが、少なくとも「昼11時」の開店と同時に訪問すれば間違いなく炊き立てが食べられる事でしょう。


いずれにしても、こちらの「ご飯」の美味しさは、ほとんど「世界遺産」の領域です。
その奇跡とも思える「美味しさ」を知らずして・・・・・決して「美食」は語れないでしょう。
次回はぜひ秋の新米の季節を待って、昼11時に再訪問してみたいと思います。



(すべて完食。)




↓続きあり






〜上野 本家ぽん多 その2〜



2006年12月中旬 海老コロツケ 2625円 + カツレツ 2625円  + かきフライ 2625円 + ごはん・赤だし・おしんこ 525円

再び、東京を代表する老舗洋食店の一つ、「ぽん多本家」さんを訪問しました。
前回、こちらのお店の「ご飯」の比類のない美味しさに大感激してしまい、「秋の新米」の季節での再訪問を誓ったのですが、ついつい遅れてしまい、12月になってやっと再訪が叶いました。

今回は、三名で訪問し、それぞれの料理をシェアして食べています。




まだ、「営業中」の札がかかっていません。
実は、「カツレツ」の美味しさもさることながら、何よりも、こちらのお店の美味しい「ご飯」をベストコンディションで食べたかったですので、11時の開店前に訪問し、数分の待ち時間の後に一番目の客として入店しました。

なぜなら、ご飯は、何よりも「炊き立て」である事が、美味しさの最大の条件だと思います。
こちらのお店は、一日に何回ご飯を炊くのか判りませんが、少なくとも昼の部の「開店と同時」に訪問すれば、まず間違いなく「炊き立てご飯」に当たるはずです。




三名でしたので、今回もテーブル席の二階へ通して頂きました。

メニューを開きますと・・・・前回とは品揃えが微妙に変化しています。
「アワビ」がなくなり、代わりに「蛤」(はまぐり)や「牡蠣」(かき)が登場しています。

前回訪問した6月(夏)の頃はまさにアワビの旬でしたし、今回の12月(冬)頃は蛤や牡蠣の旬ですので、季節によってメニューを入れ替えているのでしょう。
三人で、それぞれ「海老コロツケ」、「かきフライ」、「カツレツ」の料理を注文し、併せて、ごはん・赤だし・おしんこをセットでお願いしました。

なお、今回の二階担当のスタッフは女性だったのですが、笑顔の素晴らしい、非常に感じの良い接客でした。





さて、注文をしてから20分ほどで、三つ揃って料理が登場しました。
こちらは私が注文をした「海老コロッケ」です。

「繭(まゆ)」のような形のコロッケが二つ乗って来ました。





見た目からして、「サクサク」と軽い口当たりに思える衣です。
最初に右側の一つを半分に割って、他の二名にシェアしました。お店も心得たもので、予め、取り分け用の小皿も用意してくれました。

さて・・・・コロッケの感想の前に、まず、こちらの類まれな「キャベツ」の美味しさについて、少々語りたいと思います。
前回もこちらのキャベツの出色の美味しさに気付いてはいたのですが、その印象が霞んでしまうほどに「ご飯」が異様に美味しかったため、あまり多くは語りませんでしたが・・・・今回、改めて「キャベツ」の美味しさに感心させられました。

まず、箸で一つかみして頬張れば・・・・口の中で「フゥワァリ・・・」と優しくほぐれ、まるで「淡雪」のように繊細な口当たり・・・・その肌理の細かさ、その柔らかさ・・・・
「サクサク」と軽やかな歯切れが素晴らしい快感で、キャベツが、まったく「ゴワゴワ」「チクチク」せず、まるで「羽毛」のように・・・・非常に「フゥワリ・・・・」としています。

しかも、ヒンヤリと冷やされていて、口に入れると爽やかで、まるで噛まずとも、清々しい「高原の朝」のような香気が口いっぱいに広がります。
そしていざ、シャクシャクと噛み砕けば・・・・すべての切り口の断面から旨味と甘味にあふれたエキスがあふれ出て来て、得も言われぬ美味しさに、思わず身震いを覚えるほどです。

新鮮な野菜らしい旨味、甘味、香り・・・・その口中に「冴え渡る」美味しさが、口中の油を洗い流し、ものの見事に舌をリセットしてくれる感覚、その食味は・・・・素晴らしく瑞瑞しいのですが、水っぽさは絶無・・・・と言う、驚くべき秀逸さです。
そして、前回のキャベツに関する感想と、ほぼ全く同じ感想となり・・・・通年を通してこの高い品質を守り通している事にも驚きました。


ちなみに、美味しくないキャベツは、葉が硬すぎたり、しなびていたり・・・・味わいにも「エグさ」や「辛味」が舌に感じられてしまいます。
こちらのキャベツは、甘味のある良質なキャベツを選び抜いているのはもちろん、まさに、「朝摘み」の「もぎたてキャベツ」と言うイメージですね。
野菜やフルーツは「朝摘み」が最も美味しいと、よく言われます。
これは、夜の間に水分を実の中に蓄えて瑞々しくなっており、野菜をそのベストコンディションの状態で収穫&出荷できるからだそうです。
逆に昼過ぎや夕方に摘んだ野菜は、昼の太陽光で水分が蒸発するため、含水量が減ってしまう心配があるとの話です。

また、改めて良く見てみますと、淡い色合いの薄い葉しか使われておらず、緑色をしている外側の葉や、茎や芯の太くて硬い部分も一切混じっていない事が判ります。
つまり、贅沢にもキャベツの葉の、最も美味しい部分である「葉の柔らかな層」・・・・そのわずかな部分しか使っていないようです。
おそらくは、キャベツの葉のうち、ほんの「二割」程度の・・・・選び抜いた柔らかな部分のみを使って千切りにしているのは間違いないでしょう。





さて、こちらは「海老コロッケ」を箸で割ってみた断面です。

まずは、ソースをかけず、そのまま食べてみますと・・・・
ベシャメルソース(ホワイトソース)の味は、口当たりが極めて滑らかで、ほんのりとした甘みと素晴らしく濃厚なコクがあります。
ちなみにベシャメルソースは、バターと小麦粉と牛乳があれば、家庭でも極めて簡単に作れますが、ここまで濃厚な味わいを出すのは・・・・至難の業でしょう。
相当に高級なバターを使って、念入りにじっくりと火にかけて練り込んでいるのは間違いありません。

エビコロッケと言いますと、普段はスーパーの惣菜コーナーなどで売られている物や、冷凍食品になっている物を食べたりもしますが、それらはどこかしら「子供向け」の味付けと言うイメージがありますが、
こちらのお店のエビコロッケは、安っぽさや、オヤツっぽさが絶無で、いかにも本物の素材感にあふれる非常に「大人向けの味」に仕上がっています。
エビコロッケを大人向けに作るとこうなる・・・・と言う見本のような出来具合です。

実際、大量生産の業務用品っぽさや、ファーストフードのようなジャンクっぽさが絶無で、プロによる「手作り感」満点です。
ただ、下味にやや塩気が効き過ぎているような気がしたのと、途中から、ウスターソースをかけて食べてみましたところ・・・・味の輪郭がキリッとした辛口のウスターソースとは、あまり相性が良くないようにも感じられました。
また、海老の身は、さほど「プリプリ」と弾むような弾力はなく、「ボソッ・・・モソ・・・」としたフラットな口当たりです。ただし、調理後も妙に「プリプリ」とするエビは「食品添加物」が大量に使われている事による人工的な食感だそうですので、こちらの海老こそが「自然派」の食感なのだと思います。

ただ、海老がゴロゴロ入っているのは嬉しいのですが、トロ〜リと柔らかな「緩め」の食感であるベシャメルソースの中に、ゴロゴロと歯応えのある海老が散在していると、両者の食感が渾然一体とは感じられず、それぞれ別々に主張しているような気がします。

この点、クリームコロッケ路線であれば、「海老」よりも、むしろ、「蟹クリームコロッケ」にしてみたら、どうか・・・・と思ってしまいました。
繊細な甘味を持つ柔らかな身肉の「蟹」なら、ほぐして混ぜ込めますので、緩めのペシャメルソースとも食感が違和感なく融合しますし、タラバガニなどを素材とすれば高級感も美味しさも満点の品が出来上がることでしょう。

また、同価格帯に存在する「カツレツ」や「牡蠣フライ」に比較しますと、ボリューム的に、どうしても控えめに感じられてしまいます。
食感も、クリームコロッケに特有の柔らかさ一辺倒ですので、極めて上品な食感です。量、食感の両面において、がっつり食べると言う感じではないように感じられました。





さて、いよいよ・・・・無類の美味しさを誇る「ぽん多のご飯」です。
前回の「奇蹟の白米体験」以来・・・・ずっと、私の脳裏を支配して、片時も離れなかった「あの美味しさ」は、この秋に収穫し立ての「新米」となって、果たして、どれほどグレードアップした美味の世界を披露してくれるのか・・・・胸が高鳴り、心が逸(はや)ります。

しかし、今回のご飯は・・・・前回のような「ピンッ」と美しく立ち揃ったご飯粒ではなく、見た目からして、表面に「モニャ・・・」とする粘り気が見て取れます。
ご飯粒の表面が崩れていて、お互い同士が不規則にくっつき合っていて、前回の、ご飯の写真と比較しても、その「外観」の違いが一目瞭然です。

一口食べてみますと・・・・新米らしい、フレッシュな米の香りや甘味は抜群ですが、含水量が多いため、米粒の表面が微妙にベト付き、形が柔らかく崩れかかっています。
前回のような「プチプチ」と弾ける小気味良い「歯応え」、「ギュギュッ」と凝縮された「旨味」、いぶし銀のような「香り」・・・・がありません。
炊き方に、ムラと言うか・・・・ダマまでは行かないのですが、ご飯粒が密になってちょっと塊りっぽくなっているところも見受けられました。

美味しいご飯の決め手は、ズバリ、「外硬内軟」の炊き上がりである事です。
丸々と「プックリ」太って、ツヤツヤとした米粒の表面全体に「ピンッ」としたハリがあり、歯に当たると米の粒が「プチッ」「プチッ」弾けて、
素晴らしい歯応えとともに中から旨味と粘り気が「モッチリ」とあふれ出す「いぶし銀」のような米の旨味・・・・まさに、前回の「ぽん多」のご飯は、その通りの美味しさでした。

今回のご飯は、おそらくは含水率の高い「新米」ゆえ、どうしても柔らかな炊き上がりとなってしまったようです。
新しい米は、収穫後の「枯らし」の期間が短いため、米の中に「水分」が多く残っており、そのため釜の中の水を少なめにして炊くのが常識ですが、それだけでは、やはりどうしても「外硬内軟」の美味しいご飯に仕上げるのは難しいのでしょう。





漬物や赤だしは前回と同じ物でしたが、漬物にカツオ節が乗らなくなっていました。

赤出汁の「キリリッ」と引き締まった味が、非常に鮮烈です。しかし、決して塩気が強いとか、味が尖る事がなく、絶品のバランスです。
赤出汁の具は、前回と同じ「なめこ」でした。「プリプリ」と歯応えの良いナメコで、ヌメリも豊かでほど良く舌をなで回し、とても美味しいです。

漬物はひんやりと冷えていて、これまた、美味しいです。
沢庵はやや糠(ぬか)風味が強めで、箸休めとしてはもう少し薄味でも良いかと思います。
白菜とともに、キュウリにも濃い目の味が付いていました。





こちらは同行者がメインで食べた「カツレツ」です。
箸を付ける前に、写真を撮らせて頂きました。

箸や茶碗と比較して頂くと、良く判るかと思いますが、なかなかのサイズを誇ります。
10等分に切られている事からも、かなりのボリュームを持つカツである事が判ります。





二切れほどシェアして頂き、食べてみましたが、前回のカツ以上に、上質な「ホクホク感」にあふれていて、とても美味しかったです。

ただ、何も付けずに食べても、予め下味の「塩」がかなり強めに効いていました。
前回は、それほどでもなかったのですが、カツに下味をつける時、目分量で塩を振っているのか・・・・今回はソースが要らない位に、下味の塩気が強めに効いていました。
ただ、コショウはさほど効かされておらず、香辛料が「ピリッ」と来る事はありませんでした。

途中からウスターソースを使ったところ、やはりこのカツにはウスターソースは良く合いますが、濃い目の塩気に、ソースの味まで加わりますと、肉本来の風味は・・・・どうしても埋もれてしまうような気もします。
ただ、「ご飯」を食べさせるための「オカズ」と考えますと、ベストパランスと言えるでしょう。
また、とんかつソースではなく、あくまでウスターソースのみを置いているあたりに、「ぽん多」は「とんかつ屋」さんではなく、あくまで「洋食屋」さんなのだと言う事実を再確認させてくれます。

ちなみに、このカツレツをメインで食べた同行者は、ソースをかけたカツを一口食べて、「あれ、このソース・・・・リー&ペリンなんだね?」と申しておりました。
聞けば、「LEA&PERRINS」(リー&ペリン)社のソースは、イギリス「ウスターシャー地方」発祥の元祖的ウスターソースで、日本の多くのウスターソースの源流であり、洋食用ソースのお手本モデルとなったソースだそうです。

後日、インターネットで「ぽん多」のソースについて調べてみますと、やはりリーペリン社のウスターソースだと書いている記述がいくつかありました。
それにしても、ソースのビンには、何らのラベルも貼ってありませんでしたが・・・・一口食べただけで、ソースメーカーを判別できるとは・・・・恐れ入ります。

この方は、インターネットには全く興味がないそうなので、サイトもブログも持っていないそうです。
しかし、本来であれば、一口食べただけでソースメーカーを瞬時に判別できる位の「正確な舌」と「豊かな知識」を持っている・・・・
こう言う「真に味の判る人」にこそ、是非、本当に美味しい物について、サイトやブログで「語って」欲しいものです。





カツを広げて、断面を見てみました。相変わらず「脂肪」がきれいに取り去ってあります。
左右の肉の色が暗く写っていますが、角度的にライトの影になってしまったためで、実際には他のカツと同じきれいな肌色です。

歯応えが極めて「ほっくり」「ふっくら」として、厚みがあり、噛み応えがとても「豊か」です。
この何とも言えない豊かな噛み応えがこちらのカツレツの魅力の一つになっていると思います。

まるで、フカフカの分厚い絨毯の上を歩いているような・・・・柔らかな革張り高級ソファに身をゆったりと沈めているような・・・・「ゴージャス感」のある口当たりです。
リッチな風味と噛み心地から、かなりグレードの高い肉と言う印象を受けますし、実に高級感満点の柔らかさ、肉が「硬い」のと、「弾力が豊か」なのとは、全くの別物だと言うことが良く判ります。

ただ、それも「熱々」のうちだけで、次第に肉が冷めて来ますと・・・・肉が締まって縮んでしまい、むしろパサ付く感じになって来てしまいます。
早めに食べ切るのが、何よりこちらのカツを美味しく食べるコツでしょう。

今回、改めて思いましたが、私は、こと「ロースカツ」に関しては、ジュワ・・・と脂があふれ、口の中でトロける肉質ではなく、こういう、「シックリ・・・」と歯が入り、噛むと「ホグホグ」「ハグハグ」とする肉質が好きなようです。
どちらかと言うと「チキンカツ」に近い食感、しかも、脂や皮の付いた「鶏のモモ肉」ではなく、肉の繊維がきれいに揃っていて極めて脂の少ない「鶏の胸肉」を使ったチキンカツ・・・・・タイプの肉質が好きなのです。





こちらはもう一人の同行者がメインで食べた「かきフライ」です。
箸を付ける前に、写真を撮らせて頂きました。

レモンが添えられて来ます。





大振りな牡蠣が六個も乗って来て、なかなかのボリュームです。
このうちの大振りな牡蠣を一つシェアして頂き、食べてみました。

見た目の印象どおり、衣がとてもサクサクとしていて食感が軽いです。
そのまま食べてみますと、牡蠣自体は風味がフレッシュで、旨味が濃厚でパンチがあり、海産物系のナマ臭みも絶無で、美味しいです。
ただ・・・・牡蠣と言うよりも、牡蠣に特有のミルキー感や磯臭さがなく、貝柱が大きくて身肉が厚いので、まるで「帆立」と間違えそうな味です。

そして、カツレツと同様に、カキフライもしっかりと下味の「塩」が効いていました。





かきフライを割って、断面を見た所です。
顔を覗かせる立派な「貝柱」が、まるでホタテフライのようで、とても食べ応えがあって美味しかったです。

ただ、途中から、少しレモンを搾りかけてみたのですが・・・・レモンの果汁が加わりますと、不思議な事に、なぜか牡蠣に少し生臭みが出てしまう感じを受けました。
また、ウスターソースも使ってみたのですが、牡蠣には「サラリ」として「キレ」のある辛口のウスターソースは、あまり合わないような気がしました。

もっとドロリとして、モッタリ・・・とした重い口当たりの中濃ソースか、甘口のタルタルソース等が合うのでしょう。
結局、塩味の下味もしっかりと付いていましたので、むしろ何も付けず、そのまま食べるのが一番美味しく感じられました。




さて、食べ終えての感想ですが・・・・・
どの料理も上質で、十分に美味しかったですが、すべて同一プライスと言う事を考えますと・・・・
私には、やはり高品質、かつ、ボリューム満点の「カツレツ」が、最も満足度が高く感じられました。やはり、「ぽん多」の看板料理だけある・・・・と言う気がします。

その点、「海老コロッケ」は女性等に大いに喜ばれそうですが、ボリューム的にやや控えめですし、柔らかな食味ゆえ、食べ応えと言うか、インパクトも大人しめに感じられます。
「かきフライ」も、美味しいのですが、このお店ならでは・・・・と言うポイントがもう少し感じられれば、と言う気がしました。

また、大いに期待していた「ご飯」ですが、必ずしも・・・・「新米」ばかりが「最高の美味」ではないと言う、「新たなる真実」を教えられた気分です。

例えれば、お寿司屋さんは、寿司を握るシャリには、原則として「新米」を使わないと言います。もし「新米」を使う場合も、適度に「古米」とブレンドして混ぜ合わせて使うそうです。
つまり、収穫後、間もない新米は米の中に水分が多く残っており、どれだけ上手に炊いても、粘り気が出がちで、特に寿司酢と合わせると「ベトベト」してしまい、口の中でパラパラとほぐれる「シャリ」の絶妙な硬さが出ないのだそうです。

繰り返しますが、美味しいご飯の決め手は、ズバリ、「外硬内軟」の炊き上がりです。
「新米」は、風味が瑞瑞しくフレッシュで良いものの、含まれる水分の多さゆえ、どうしても表面が「もにゃもにゃ」と粘り崩れ、歯応えは「ぐにゃっ」として柔らかくなってしまいます。

一方の「古米」のほうは、風味やフレッシュさは弱くなりますが、米の表面の「乾燥」がほど良く進む事で、炊き上げると、外側に「プッツリ」、「ホッコリ」とする絶妙な弾力やハリが生まれるのでしょう。
例えるなら、殻付きで茹でた「茹で玉子」の表面は「ツルン」「プルン」として小気味良いハリがありますが、殻から出して茹でた「ポーチドエッグ」は、玉子の表面が「ユルユル」「プヨプヨ」になって柔らかく茹で上がるような・・・・そんなイメージです。

ただし、私は、あくまで「前回」の美味しさが念頭にあり、かつ、今回は「新米」の季節と言うことで「前回以上」の美味しさを期待してしまったため、やや物足りなく感じてしまいましたが、
同行した二名は、今回のご飯を頂いて、「明らかに米が普通じゃない、もの凄く美味しいご飯だ」「他店とは全然レベルが違う、非常に高価な米を使っている」・・・・などと、しきりに「絶賛」し、盛んに「お替り」をしていました。


また、食べ終わってお店を後にし、暫らく経ってから改めて気付いた事は・・・・・油が全く「胃にもたれていない」と言うことです。
と言うよりも、「揚げ物」を食べた事さえ一切意識させないほどに・・・・・胃には一切の重さやクドさがなく、極めて「ナチュラル」な優しい腹心地なのには驚きました。
やはり、使われている「油」が非常に良質、かつ、極めて新鮮なのでしょう。

目に見えない所にこそ、「コスト」を惜しまずにかけているお店・・・・・と言う印象です。



(すべて完食)









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