01ch グルメ食べ歩き
泉新
(群馬県 桐生市)

店名 蒲焼 六代目 泉新(いずしん)
住所等 群馬県桐生市本町3-3-2 【地図表示】
禁煙 タバコ可(灰皿あり)
訪問日 2006年7月上旬 鰻重 2300円




〜いづ新〜



2006年7月上旬 鰻重 2300円

今回は、群馬県の「うなぎ屋さん」の中でも「トップクラスの美味しさ」と巷で評判の「泉新」(桐生市・桐生駅)さんを訪問してみました。

実際、群馬県で美味しい「鰻屋」さんと言えば、必ず名前が挙がるほどの有名老舗店のようで、インターネット上でも「さすが老舗という味」「ほわほわしてとろける鰻」などの高評価を受けているようです。




お店は、JR両毛線の「桐生駅」や、上毛電鉄の「西桐生駅」から、それぞれ徒歩12〜15分ほどの場所です。

大きな看板には、創業「天保元年」(1830年)と書かれています。
うーん、まさしく「老舗」そのものの佇まい、歴史と風格に満ちた素晴らしい店構えですね。
お店の右脇に数台分の駐車場があります。

インターネットで検索したところ、創業者のお名前が「和泉屋新蔵」氏と言う方だそうで、姓と名から一文字ずつ取って「泉新」という店名にしたそうです。
ノレンにも書かれている通り、現在はなんと既に「6代目」と言う老舗中の老舗店です。
「海なし県」でもある群馬県は・・・・古来から、「川魚」料理に対するニーズが多かったのか、何代も続く老舗の鰻屋さんが多いようです。




ノレンには「う」の一文字、昔の鰻の看板は「うなぎ」とか「鰻」とは書かず、単に「う」と書く事が多かったようです。
店名がひらがなで「六代目 いづ新」と書かれています。

創業以来すでに176年・・・・・鰻一筋で、蒲焼のタレも創業以来、作り足しながら使っている伝統の味だそうです。
一部のHPでは、桐生川産の「天然うなぎ」を使っていると言う情報も見受けられました。

大きなノレンをくぐって入店しますと、左手に厨房が広がっているのですが、「鰻の油」と「タレ」と「備長炭」の入り混じった、この三者の織り成す「芳ばしい香り」が物凄い密度で渦巻いていて、入店した客を「圧倒」します。
ここまで焼いた炭の匂いがする鰻屋さんは初めてで、少々びっくりしてしまいました。

これほどの香りは・・・・半年や一年では到底出ないでしょう。それこそ、建物を建てて以来、来る日も、来る日も・・・・毎日のように「炭で鰻を焼いて」こそ、天井にも、壁にも、柱にも・・・これほどの芳ばしい香りが染み付いているのだと確信します。




店内は、フローリングの通路と、畳の座敷スペースが広がり、カウンター席はないようです。
竹垣があったり、古めかしいタンスが置かれていたりと、レトロ風の一方で、天然木のオブジェがあったり、ネオン管の照明が置かれていたりして、お店のクラシックな外観からは想像が付かない、ちょっと不思議で幻想的なアート調の空間が広がっています。

こちらのお店ではかなりメニューが絞り込まれていて、特に鰻重についてはメニューは一種類(2300円)しかないと事前情報で伺っていました。
実際、着席してもメニュー類は見当たらず、 店員さんから「鰻重でよろしいですか?」と尋ねられ、そのまま「はい」と答えました。




無垢材を浮かし彫りにした「泉新」の看板、鋲がたくさん打たれた古めかしい「箪笥」(たんす)など、置かれている物の一つ一つが凄い存在感です。
左手前に見えるものは、どうやら古い「火鉢」のようですね。




フローリングの床は隅々まで徹底して清掃が行き届いています。
木や、竹や、い草、をふんだんに使っていて、そのせいか柔らかな照明とともに、とても癒される居心地です。まさに「木と畳」の持つ独特な「柔らかさ」「居心地の良さ」ですね。

少なくとも私は、コンクリート製の店舗で、プラスチック製や金属製の椅子に座っても、なかなかこういう「寛いだ」「癒される」気持ちにはなりません。
直接、肌に触れる下着や服なども「綿」や「絹」や「ウール」や「麻」などの天然繊維が、心地良く快適に感じられるのと「同じ現象」だと思います。
逆にナイロンやポリエステルなどの化学繊維の衣服は、どこかしら、着ていて落ち着けないです。




店名の入った箸袋にある「六代目」の文字が誇らしいですね。
さて、お茶を飲みながら、鰻が焼き上がるのを気長に待つことにします。

しかし、そう・・・・・思ったのも束の間・・・・・。





お茶を半分も飲まないうちに・・・・再び店員さんが、登場しました。
「ん?お茶のお替りでも持って来てくれたのかな?」と思ったのですが、何と手には「重箱」を携えています・・・・。

「お待たせいたしました〜」の明るい声と共に、鰻重が私の目の前に置かれました。
私が入店してから僅か5分ほどです・・・・・。

同じ群馬県の「やまだ」(館林市)と並び、過去、私が訪問した数々の鰻屋さんの中でも、破格の「最速」ぶりです。

おそらくは、予め、ほぼ調理を済ませて待機してあった鰻を、「ササッ・・・」と最後の仕上げの炙りを入れて焼き上げ、重箱に納めたのでしょう。
特に、こちらのお店のように鰻重のメニューを一種類に絞り込めば、ある程度見込みで調理を進めておいてもロスは出にくいですし、このようにスピーディーな提供も可能なのでしょう。

ちなみに・・・・活きているウナギを桶から出して包丁で割き、串を打つことから始めますと、鰻のサイズにもよりますが、どれほどのベテラン職人でも、料理の提供まで早くても30〜40分前後はかかります。大きな鰻になりますと「蒸らし」に時間がかかり、一時間以上かかることも珍しくありません。
ただ、そう言った事情を知らない客側が、まるでファーストフード店にでも入ったかのような感覚で、「スピード」を要求するのでしょうか・・・・極端に短い時間で鰻重を提供するシステムのお店も増えています。

万一、調理してからあまりにも時間が経ってしまったり、保存の状態が悪かったりすると、すぐに鰻の身が硬くなってしまい、限りなく「スーパーで売られている鰻」の食感に近くなってしまいますが、常に客足の安定しているお店であれば、ランチタイムや夕食時などのピーク時に向けて、「見込み」で調理を進めて置き、ある程度タイミング良く「出来立て」を出すことも可能なのでしょう。

また、こちらのお店は、副菜類がとても充実しているのは嬉しいですね。ただ・・・・デザートの「パンナコッタ」まで鰻重と一緒に登場しました。
触ってみるとヒンヤリと冷やされていて美味しそうなのですが、鰻を食べ終わる頃にはぬるくなってしまわないか少々心配です。





お重のフタを取りますと、炭の香り、焦げた風味が、何とも心地よく香ります。

まずは、鰻を少し箸で切って、鰻だけを一片食べてみました。
焼き上がりが「カラッ」としていて、特に表面が「パリッ」としていて、何とも言えない芳ばしさです。
こういう焼き上がりは、超高温の遠赤外線を放熱し、逆に一切の水蒸気を出さない「備長炭」でしか不可能な「世界」ですね。

「おせんべい」なども、最初から最後まで本物の備長炭で焼いた「焼き立て」おせんべいを一度でも食べてしまうと・・・・市販のビニール袋に入ったガス焼きのおせんべいは、とても食べる気になれません。
私も、都内の老舗の備長炭焼きのお煎餅屋さんへ出向き、焼き立てのアツアツの煎餅を食べた事がありますが、その想像を絶するあまりの美味しさに「驚愕」した覚えがあります。
それほどに、「火種」により生じる美味しさの違いは、時として「雲泥の差」となります。

ちなみに、純粋な「炭素」の塊りに極めて近い備長炭は燃焼の際にほとんど水蒸気を出しませんが、ガスは燃えると「二酸化炭素」と「水蒸気」に分解されます。
そのため、備長炭で鰻を焼くと表面は「こんがり」「カリッ」と乾いていて、中はふっくらジューシーなのですが、ガスで鰻を焼くと「水蒸気」の影響でどちらかと言えば「しっとり」とした感じに仕上がります。

ガス焼きでも、家庭のガス台にビルトインされた魚焼器のように、上側からガス火で炙ったり、耐熱ガラスを「仕切り」にして通して焼くことで、ガス特有の匂いや水蒸気が焼き物に付着することを防ぐ、工夫された「焼き台」もありますが、それでも「カラッ」「ふわっ」と焼き上げる遠赤外線効果はやはり備長炭には遠く及ばないでしょう。

備長炭といえばウバメガシを使った紀州備長炭が有名ですが、その実、日本の備長炭は全消費量の約90%が中国からの輸入物でした。
しかし、2003年8月に中国が森林保護を理由として備長炭の日本への輸出を制限し、続いて2004年10月には全面禁輸してしまいましたので、これからはますます「炭火焼」は少なくなって行くかも知れません。

ちなみに、スーパーや通販などで、「炭火焼」と書かれて売られている蒲焼や焼き鳥も少なくありませんが、実際には焼きの工程のほとんどをコストの安い「ガス」で焼き、仕上げにちょっとだけ「炭」で焼いただけで、パッケージには堂々と「炭火焼」を名乗ると言う・・・・商品もあるようです。





よくよく焼き目を見ますと、均等に「コンガリ・・・・」として、全く焼きムラがなく、素晴らしい焼きの技術を感じさせます。
僅かな焦げが均等に散在し、かつ、「黒」と「薄茶」の中間色である「こげ茶色」の面積がとても広いですね。

これが何を意味しているかと言いますと、つまりは徹底して「強火の遠火」でコンガリと焼き上げた理想の焼き色だと言うことです。
「強火の近火」ですと、いきなり焦げ始めるため、こういう「コンガリ」としたこげ茶色にならず、いきなり黒く焦げてしまいます。
かと言って、「弱火の近火」ですと、芯までなかなか火が通らず、決して「パリッ」とした焼き上がりになりません。

タレはサラッとした口当たりですが、味はやや濃い目で、少ししょっぱめに感じられますが、味が「熟成&凝縮」された非常に美味しいタレです。
その絶品のタレが鰻の旨味と組み合わさると、「くっきり」とした明確な味わいになります。
同時に炭焼き独特の「パリッ」とした、かなりメリハリのある食感と相まって、曖昧さの一切ない「はっきり」とした美味しさです。

鰻からもタレからも、「甘味」がほとんど感じられず、「辛口」と言うか・・・・むしろ、やや「しょっぱめ」の路線なのですが、意外なほど気にならず美味しく食べられます。
焼けた炭の芳醇な香りが、すべての些事を包み込んで「納得」させてしまうほどの魔法を感じます。
つまり、蒲焼はなんと言っても「芳ばしさこそが命」だと言うことが良く判ります。





セットで付いて来る副菜類がとても充実しています。

肝吸いは大きな生の椎茸が二片入り、肝自体には適度な苦味があり、三つ葉と椎茸の香りが漂います。
適度な薄味で口直しには良いですが、やや温度が控えめに感じられました。

漬物やサラダはヒンヤリと冷やされていて嬉しいのですが、サラダのドレッシングはまだしも、漬物に醤油が多めにかけられています。
そのため、醤油の味が濃い目で、「白飯」相手ならこれでも良いですが・・・・濃いタレのかかった鰻重の口直しとして考えますと、醤油はかけずにサッパリと漬物を頂きたいところです。
大根には水気がたっぷりですが、人工的な甘味がやや気になりました。茄子の糠漬けがしんなりとした口当たりで特に美味しかったです。

デザートの「パンナコッタ」は、鰻重を食べ終わった状態でも、ぬるくはならず、十分にヒンヤリとしていて安心しました。
イタリアのクリ-ミーなデザートですが、口当たりが滑らかで、美味しいですね。もし自家製だとしたら大した技術だと思います。
オレンジソースの香りが鰻重と良くマッチしていて、改めて、鰻重と柑橘系フルーツの相性の良さが判ります。





断面を見てみますと、鰻の身肉はさほど厚みがないこともあり、皮も薄めで、鰻の皮のゼラチンで「ネトッ」と粘る感じはありません。
そのせいか食感は「ふっくら」「トロトロ」とした感じと言うよりも、「バリッ」とする感じであり、水分が少なめの乾いた食感です。

味の輪郭が強めで、パンチがあり、食感にメリハリがあり、「こんがり」「パリッ」とした・・・・これぞ、本当に「炙られた」食べ物に特有の食感と美味しさ、まさに「炭火焼の醍醐味」ですね。
食べていて、単に「焼いた」と言うよりも・・・・・遠赤外線の超高熱線が、ウナギの全身を強烈に「貫いて行った」と言う感触があります。

ただ、それと同時に、身肉全体が微妙に硬直している感じもあります。やはり、最初の仕込みをしてから、ある程度の時間が経過している感じは否めないでしょう。
要は、箸で鰻の中央を持って、持ち上げたとしても、身肉があまり曲がらずに、そのままややしなる程度で持ち上げられてしまう感じです。

こちらのお店は、夜の部の営業は17:00〜19:30(ラストオーダー)だそうで、今回の私の入店は19時過ぎでしたが、昼の開店と同時、もしくは夜の部の始まる17:00と同時に入れば、「割き立て&焼き立て」の鰻が食べられるのかも知れません。
この卓越した「焼きの技術」と「絶品タレ」を考えますと、「焼き立て」はさぞかし美味しいと思います。

また、ご飯は、水気が多くて割と柔らかめに感じられ、モチモチと言うよりは、ネトネトとする粘り気を感じます。
たまたまかとは思いますが、一部にはご飯粒が「ダマ」になっている箇所もありました。





山椒は、「ピリリッ」とする強めの香りと味です。
かなり刺激の強い辛目の風味で、とても野趣にあふれる山椒です。




食べ終わってお店を出たところです。既にノレンが仕舞われています。
お店の前の道路は「桐生本町通り」だそうです。

食べ終わっての感想としては・・・・・
鰻重と言うと「鰻」の品質ばかりに話題が集中しがちですが、「タレの美味しさ」、「炭火の芳ばしい香り」・・・・この二つが、いかに重要か、今回、再認識する契機となりました。
昔から「鰻は煙を食わせるもの」などと言われています。焼けた炭と焦げたタレが混じり合って生まれる芳醇な香りは、すべてを包み込んで「納得」させてしまうほどの魔法を感じます。
まさしく、「炭火の持つ魔力」を感じますね。

また、鰻の身に、あまり「ふっくら」感が感じられず、トロトロに蕩けるようなタイプではありませんでした。
これは、仕込みから時間が経っていたためと言うよりも、おそらく調理の過程で「蒸らし」の時間がやや短めに仕上げられている感じの印象です。
老舗とは言え、舌先で優雅に「フワリ」とする気取ったお上品な味わいではなく、適度に「しっかり」とした歯応えを持たせた仕上がりですね。

ここで、ふと思ったことは・・・・・先日食べた「鰻重」(埼玉県越谷市)や、「やまだ」(群馬県館林市)と、良く似た路線の食感だということです。北関東の蒲焼は、こういう「歯応え」のあるタイプが多いのでしょうか。
蒲焼には、背開きにした鰻にこの蒸らしを入れる「関東風」と、腹開きにした鰻をそのまま焼く「関西風」があるのは周知の事実ですが、東京の多くの名店は、トロトロの純白な鰻の身が、舌先でフワリと蕩ける「繊細で上品」、「精緻でエレガント」であり、「蒸らし」により身をふっくら柔らかく仕上げるテクニックに特に重点を置いています。

今までは「うな重」は東京か名古屋で食べる事がほとんどでしたので、「東京の味=関東の味」だと考えてしまっていたのですが、「蒸らし」の有無だけでなく、「蒸らし」の時間やウェイト次第で、随分と蒲焼の印象が変わることを知りました。



(すべて完食)



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